見えない糸。
まりあ。また逢えるかな。不思議な感じ。すごく引かれる物がある。気になる…。りょうは、まりあと別れた後も、ダンスサークルの合間など公園に通い続けた。今日も居ない。また、今日も居ない。逢いたい!!まりあに逢いたい。けれど月日が流れるたび、だんだんと公園に行く回数が減った。そして、二ヶ月がすぎ、結局、公園には行かなくなった。いつもの日々が始まる。サークルでダンスを終え、家に帰る。
「ただいま」
「おかえり、ご飯できてるわよ」
「いらない」
りょうは、親から引かれたレールに乗るのは嫌い。
大学受験で親ともめ、それからあまり一緒に食事しなくなった。
「たまには食べなさいよ」
「ううん」
仕方なくリビングの椅子にすわる。
目の前には、父が座る。そして父の隣に母。父から話しだした。
「お前就職どうする??」
いつもそれだ。勉強だの就職だの、一流企業だの。
「俺、ニューヨークに行く。」
「何しにいくんだ??」
「ダンスしに行く」
その言葉を聞いた瞬間、父の表情が変わった。
「変な夢はいい加減にしろ!!」
「変な夢なんかじゃない」
「ダンス!?そんな曖昧な夢は捨てて、ちゃんとした仕事に着け!父さんが就職先が見付からないなら面倒みる。」
「曖昧なんかぢゃない!!ちゃんとした夢!!」
頭に血がのぼった父を前にりょうはひれ伏す事なく叫んだ。
「そんな夢、とにかく早くあきらめろ」
その言葉にりょうは居ても立ってもいられなくなり、家を飛び出した。
俺は諦めない。
親の言いなりなんかならない。
絶対、かならず叶えて見せる。
どんな苦労があろうと、俺は夢をかなえてやる。
りょうは、走った。
ガムシャラに。
だれに邪魔されようとも、俺の夢。
俺の夢、叶えて見せる。
りょうは、走り続けた。
そして、気付いたら、まりあと出会った公園に辿り着いた。
そこにはだれもいない。
静かな公園。
まりあ…あの子は今、何してるんだろう??りょうは、まりあの事を考えると、自然と怒りが治まって、落ち着きをとりもどして行く。
不思議、まりあの事思うと、世の中すべてを忘れて、心が安らぐような気がする。
そして、がんばろうって気になる。
なぜかなんて分からない。
理由なんかない。
ただまりあに逢いたい。
だれも居ない公園。
本当に独りになれる場所。
でも、時間を越えて、そこにはりょうと、まりあが、居る。
二人の心の奥。
まだ、一度逢い、一言、言葉をかわしただけ。
なのに、感じる何かがある。それが何かは、まだ分からない。