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1999年からの警告:「謎を解かない系探偵」原アイラは蹴っ飛ばす!  作者: 井越歩夢


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19/21

終章:2026年7月26日日曜日・G県N市新町交差点「Barアムリタ」②

=2=


時は遡り、7月22日水曜日の寄合館。時間は10時2分52秒。


「梅雨明け宣言は19日か?」という天気予報以降、 梅雨明け宣言が出ないまま晴天が続く――ここ数年の“なあなあ”な流れのとおり、 今年も梅雨明け宣言は曖昧なまま、四日連続で晴れの日が続いている。


晴れの日が続けば当然のことだが、一言で言えば「暑い」。


例年、梅雨入り前も気温は上がり暑い日はあるものの、 梅雨前と梅雨後の暑さには明らかな湿度の差がある。 梅雨明け後の湿度の高い暑さは、梅雨入り前と比べればまったくの別物だ。


しかし、エアコンの効いた寄合館の中―― テーブル席を囲む原アイラ、黄泉野カレン、真城ナミの三人にとって、 それは“今は”関係ない。


少し遅い朝食とコーヒー。 この時間が終われば、カレンとナミはカウンセリング室での仕事へ。 アイラは、いつも世話になっているタイヤショップへ 破損した車のタイヤ交換に行く予定だった。


◇◆◇


「え? ナミちゃん、それって本当?」


ナミの言葉に、アイラは目を丸くし、 カレンは何かを察したかのようにそう言った。 そして話を切り出したナミは、ド真剣な眼差しでコクリと頷く。


『最近、滅亡系動画? が一斉に削除されたみたいです。』


アイラが目を丸くしたのは単純な驚き―― 「このタイミングで? 出来過ぎてないか?」という思いからだった。


だが、何かを察していたカレンの思考は冷静だ。 この出来過ぎたタイミングでの一斉削除。 裏で手を回しただろう人物のイメージが、彼女にはすでに浮かんでいた。


確かにこれは、偶然と言うには妙に出来過ぎている。 G県N市で起きた「刃物使用によるN市駅前大量器物損壊事件」から約一週間。 身近で起きた事件とそれに巻き込まれた2人の仲間。そんなときの、まさにこのタイミングなのだ。


テーブルを囲み、ナミのスマートフォンで以前見た「滅亡予言動画」を選択すると、 そこに表示されたのは黒背景に 「この動画はコミュニティガイドライン違反により削除されました」 という文字だけ。


“滅亡予言を強く意識させる動画”が削除される場合、 動画運営会社の削除条件で最も当てはまりやすいのは 「スパム・詐欺・欺瞞行為(ミスリード)」と「有害な誤情報」。 そして同ジャンルの動画が一斉に削除されること自体は、珍しいわけではない。


――だが、やはり“タイミング”だ。


これまで特にこうした動きがなかった中、 唐突に起こった感の強い出来事。 何故今なのか。


「レイア…多分やったね、あの子。」


「は? レイアさんが!? マジで?」


「多分だけどね。何となくそんな気がするのよ。 ほら、この前あの子、お酒に酔うこともなくずっと黙っていたじゃない。」


「あ……確かに。」


アイラは、カレンの「レイアが黙っていた」という言葉で、事を瞬時に理解した。


天野レイアが無口になるとき。それはいつも、アイラがどうやっても太刀打ちできる気がしていない アオイ、シンジュ、カレンの三人以上に、心しておかねばならない“ヤバい何か”が起こる前兆であることがほとんどだ。


以前、ナミが通り魔に刺され瀕死の重傷を負ったときも―― 取り乱すカレン、彼女を守れなかったことを悔やむアイラをよそに、 レイアは氷の闇笑を浮かべるほど冷静で、 そしてナミを刺した犯人を“わけのわからない事故死”へと追いやった。


レイアが無口で無慈悲な“怒レイア”になるのは、仲間の不幸が起因となることが常だ。


今回の事件では、アイラとカレンという二人の被害者が出た。 さらに、様々なコミュニティに関わるレイアの友人たちも 一部この事件に巻き込まれている。


実行したのは瀬川ユウマという犯人だが、 その元を辿ればネットで流れている滅亡予言動画。 シンジュが以前言っていた 「レイアちゃんにドーンと」 が、どうやら現実になったのかもしれない。


本人に聞くまでは確定ではないのだが――


「今度、26日のアムリタでわかると思う。 レイアがいつも通りの服装で、いつも通りの調子だったら何もしていない。 カジュアルな服装で上機嫌だったら……やってるわね。」


そう言うカレンの口角は僅かに上がり、 平静を装おうとしていながらも抑えきれず、どこかニヤリと笑ってしまう様子に、 アイラは思わず【オイオーイ】と苦笑いを浮かべた。


「あの、カレンさん。 カレンさんとアイラさんがとっても強いことは私、知っていますけど…… レイアさんって、そんなに強い人なんですか?」


「当然!」「そりゃもう当然!」


ナミの問いに、その間0秒で二人は同じ答えを同時に返した。間も答えも同時の二人に、ナミは思わずキョトンとするも、(ほんっとにカレンさんとアイラさんって仲いいなぁ~。 アイラさんの気持ち的には仲いいだけじゃなさそうだけど♪)と思いながらニッコリと微笑む。


そして、ここでカレンはナミにとても大事なことを伝えるのだった。


「レイアは、56億7000万年後、みんなを救ってくれる偉い人なんだから。」



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