攻撃担当要員 もう死んでもいいからやめさせてくれ
王都ドリトルの外縁、接続戦の最前線にいた“攻撃担当要員”は、もはや軍人というより消耗職に近かった。
彼らの仕事は単純だった。
・水源への介入
・流通網の攪乱
・土地権利への揺さぶり
・出資構造への浸透
そして結果は、いつも同じだった。
「無効化」
「再帰」
「構造復元」
最初の数年は分析だった。
十年目には苛立ちになった。
二十年目には作業になった。
三十年目には、意味が消えた。
そして四十五年目。
それは“仕事”ではなく、“反射運動”になっていた。
ある攻撃担当要員が、任務日誌にこう残す。
> 毎日毎日、攻撃が無効になる
> 何をしても戻る
> 何をしても変わらない
> 「勝てない」じゃない
> 「届かない」でもない
> “意味がない”が積み重なる
別の者はもっと短く書いた。
> もうやめたい
> でもやめ方がわからない
そしてついに、ある日。
現場指揮官の一人が会議で言ってしまう。
「もういいだろ」
沈黙。
「……もう、“止めさせろ”」
その声には戦略はなかった。
理屈もなかった。
ただ単純な限界だった。
「もう(自分が)死んでもいいから止めさせろ」
その言葉が出た瞬間、
会議室の空気は変わる。
誰も反論しない。
誰も賛成もしない。
ただ、“理解だけ”が共有される。
王都ドリトルの報告を受けた側近は、
それを王に伝える。
王クラーク・デ・トーマスは長く黙ったあと、短く言う。
「止めても、変わらない」
側近が問う。
「では継続しますか」
王は首を振る。
「いや」
「彼らの“攻撃構造”はすでに成立していない」
「意味が残らない作業になっている」
それは勝敗ではなかった。
構造の問題だった。
ドリトル側では、
資源管理ロボが静かに動き続けている。
出来ません
売りません
守ります
その三語の中には、
“敵意への応答”すら含まれていない。
ただ状態を維持するだけ。
攻撃はそこに届かない。
届かないことが積み重なり、
やがて“意味の疲労”になる。
優利恵はその報告を聞いて、しばらく黙る。
ロイが小さく言う。
「これ、戦争じゃないですね」
優利恵は静かに答える。
「うん」
「消耗の片側固定だね」
夜。
攻撃担当要員の一人は、宿舎のベッドに座っている。
辞表は出せない。
任務も終わらない。
ただ一つだけ確かなことがある。
「何をしても、終わらない」
彼は呟く。
「止めるって、なんだよ」
答えはない。
王都ドリトルは今日も変わらない。
資源は流れ、土地は維持され、契約は更新される。
その中心には、いつも同じ機械が立っている。
出来ません
売りません
守ります
それは防御ではない。
外側の“消耗”とは無関係に存在し続ける、
構造そのものだった。




