第5話「君はどうなりたい?」
僕は謎の人に再びついて行こうと2、3歩 歩き始めた時のことだった。
「よし、良いこと思いついた!」
そう言うと、前方にいた謎の人は僕の後ろに来る。
何を考えているんだろうか?
「ちょっと、動かないでね、
えい!」
僕の目は、謎の人の手によって覆い隠されてしまった。
これじゃあ前が見えないじゃないか。
「急に何を...」
「ちょっと、“ストップ”って言うまで歩いてみて。」
「何で?」
「まぁ、着いたら分かるよ。」
これは嫌だと言っても、
やめてくれなさそうな気がする。
何なら無理やり歩かされそうな気がする。
仕方ない。
僕は、歩くことにした。
「まだ?」
「ちょっと早すぎだよ」
「まだ?」
「まだまだだよ。」
「もうちょっとだから、
あと、ここら辺危ないから転ばないようにね。」
そう言われてしまったからには足元が見たいけど、
目の前にある手のせいで見えない。
「それって、僕が普通に歩けば良いんじゃ...。」
「えー、そんなこと言わないで。」
そんな会話を何回か繰り返していた。
僕はもう一度「まだ?」と聞こうと思ったその時のことだった。
「ストップ!」
僕は止まった。
もしかして、着いたのだろうか?
そう思っていると、目の前を覆っていた手がなくなった気がした。
「よし、じゃ、目を開けてみて。」
さて、どんな景色が見られるのだろう?
僕はゆっくりと目を開いていく。
「わ、すごい...!」
目に前に広がっていた光景は、
想像していた物より格段に美しかった。
周りに明かりがなく、暗いことも相まって、
さっき眺めていた星空より、沢山の星を見ることができた。
流れ星も見える。
作り手の人と一緒に見た流星群は、数分に1回程度だったけど
ここは、それどころではない、10秒に2、3回だろうか。
多くの流れ星が、空を縦横無尽に飛び交ってる。
「ほら、目の前の景色が暗くてあたり一面木だけだったところから、
目を開けば満点の星空が目の前にあったら、
気分が上がるでしょ?」
僕は静かに頷いた。
この景色は、おそらく一生忘れないだろう。
目にしっかりと焼き付けたい、
今はこの景色をずっと見ていたい。
そう思った。
「空を見続けてもらってて良いから、話だけ聞いていてね。
君は、ここに来るまで、いろいろなことを知ったと思うんだ。
捨てられてしまったという現実、
でも、決して諦めることはなかったという事実、
作り手が君に込めた想い、
そんな感じで沢山あるよね。
それを君が知った上で聞くけど、
君はどうなりたい?
君は、どのような作品として完成したい?
完成するとしたら、1から考えて、全く別の姿になって完成したい?
それとも作り手の想いに寄り添って、今の姿のまま完成したい?」
そんなこと決まっているじゃないか。
答えは一つしかない。
「僕は、作り手の想いに寄り添いたい。
そして、その想いを知った上で、
僕自身の気持ちをこの曲に込めたいんだ。
あと、頑張っていた作り手の人を応援したい。」
「君の答えは、後者の“作り手に寄り添う”
何なら、追加で想いを込めたいということかな?」
「そういうこと。」
「いいね!」
謎の人は笑みを浮かべた。
「じゃあ早速始めようか、
一度途切れてしまった曲作りの再開を。」




