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短編小説

木枯らしにゆれる風鈴

作者: 歌池 聡
掲載日:2025/12/18


※『第7回なろうラジオ大賞』応募作品です。使用キーワードは『風鈴』『木枯らし』。

※武頼庵(藤谷 K介)様主催『木枯らしの風景企画』参加作品です。


 風鈴くんは今年生まれたばかり。

 ホームセンターに並べられたその日のうちに、やさしそうなおばあさんに買ってもらったのです。


「ふふっ、かわいい」


 おばあさんはそっと風鈴くんを箱から出して、ベランダにつるしてくれました。


「きれいな音ねぇ。やっぱりクーラーより自然の風の方が気持ちいいものね。

 風鈴くん、夏のあいだ、よろしくね」


 音をほめられた風鈴くんはうれしくなって、おばあさんのためにもっときれいな音を出したくなりました。






 だんだん暑くなってくると、近所の他の家にも風鈴がつるされるようになりました。風の強い日には、みんながちりんちりんと鳴って、にぎやかにおしゃべりをします。


「なあ、知ってるかい? ぼくたちがおしゃべりできるのって、夏のあいだだけなんだぜ」

「へえ、そうなんだ。秋になったらしまわれちゃうのかな」

「じゃ、誰が長く残るか、勝負だな」


 今年デビューした風鈴くんたちがそんなことを話していると、ちょっと古い風鈴さんがあきれたように話しかけてきます。


「わかってないわねぇ、あんたたち。早くしまわれるってのは、それだけ大事にされてるってことなのよ。

 いつまでもつるされたままなのは、あまり大事にされてないか、持ち主がズボラだってことなの」


 ふうん、それならぼくは大丈夫だな。おばあさんは、いつだってぼくの音をほめてくれるもの。


 風鈴くんは、そんなふうに安心していました。






 やがて夏が終わり、風鈴たちはひとつまたひとつとしまわれていきました。

 でも、風鈴くんはまだつるされたままです。


 おばあさん、どうしちゃったんだろう。


 そういえばいちばん暑かったころ、一日中起きてこない日があったっけ。夕方に男の人たちが来て、おばあさんを台にのせて自動車でどこかへつれていったんだった。

 どこに行っちゃったんだろう。

 早く帰ってこないかな。そしたら、せいいっぱいきれいな音を出して、よろこばせてあげるのに。






 風鈴くんは、少しでもいい音を出そうと毎日れんしゅうをがんばりました。

 台風の日は強い風にとばされそうになったけど、何とかふんばりました。






 そして、秋もそろそろ終わろうとしています。風は冷たいけど、その方が何だかすきとおった音が出る気がします。


 ちりん。ちりんりん。


 木枯らしにゆられながら、風鈴くんは今日もれんしゅうをつづけています。

 いつか帰ってきたおばあさんに、また「いい音ね」とほめてもらうことを夢見て、ずっとれんしゅうをつづけているのです。




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― 新着の感想 ―
うわ~∑(OωO; ) おばあちゃんどうしちゃったんだろう。 長期入院か施設に入居したのか。 いや、部屋が片付けられていないなら施設入居や万が一はなかった、んだよな? なら帰ってくるのかなあ…………?…
これは実に切ないですね… 家主であるおばあさんが台にのせて自動車で運ばれていったというのが何とも気がかりです。 入院ならば帰宅してくれる可能性もまだありますので、そっちであって欲しいですね。
おばあさん……(´・ω・`) 台に乗せて……まだ担架だとしたら、戻ってきてくれる可能性もあるのではという希望的観測をつい持ってしまいます。 いつか帰ってきてくれますように。 健気に頑張る風鈴くんを応援…
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