木枯らしにゆれる風鈴
※『第7回なろうラジオ大賞』応募作品です。使用キーワードは『風鈴』『木枯らし』。
風鈴くんは今年生まれたばかり。
ホームセンターに並べられたその日のうちに、やさしそうなおばあさんに買ってもらったのです。
「ふふっ、かわいい」
おばあさんはそっと風鈴くんを箱から出して、ベランダにつるしてくれました。
「きれいな音ねぇ。やっぱりクーラーより自然の風の方が気持ちいいものね。
風鈴くん、夏のあいだ、よろしくね」
音をほめられた風鈴くんはうれしくなって、おばあさんのためにもっときれいな音を出したくなりました。
だんだん暑くなってくると、近所の他の家にも風鈴がつるされるようになりました。風の強い日には、みんながちりんちりんと鳴って、にぎやかにおしゃべりをします。
「なあ、知ってるかい? ぼくたちがおしゃべりできるのって、夏のあいだだけなんだぜ」
「へえ、そうなんだ。秋になったらしまわれちゃうのかな」
「じゃ、誰が長く残るか、勝負だな」
今年デビューした風鈴くんたちがそんなことを話していると、ちょっと古い風鈴さんがあきれたように話しかけてきます。
「わかってないわねぇ、あんたたち。早くしまわれるってのは、それだけ大事にされてるってことなのよ。
いつまでもつるされたままなのは、あまり大事にされてないか、持ち主がズボラだってことなの」
ふうん、それならぼくは大丈夫だな。おばあさんは、いつだってぼくの音をほめてくれるもの。
風鈴くんは、そんなふうに安心していました。
やがて夏が終わり、風鈴たちはひとつまたひとつとしまわれていきました。
でも、風鈴くんはまだつるされたままです。
おばあさん、どうしちゃったんだろう。
そういえばいちばん暑かったころ、一日中起きてこない日があったっけ。夕方に白い服の男の人たちが来て、おばあさんを台にのせてどこかへつれていったんだった。
どこに行っちゃったんだろう。
早く帰ってこないかな。そしたら、せいいっぱいきれいな音を出して、よろこばせてあげるのに。
風鈴くんは、少しでもいい音を出そうと毎日れんしゅうをがんばりました。
台風の日は強い風にとばされそうになったけど、何とかふんばりました。
そして、秋もそろそろ終わろうとしています。風は冷たいけど、その方が何だかすきとおった音が出る気がします。
ちりん。ちりんりん。
木枯らしにゆられながら、風鈴くんは今日もれんしゅうをつづけています。
いつか帰ってきたおばあさんに、また「いい音ね」とほめてもらうことを夢見て、ずっとれんしゅうをつづけているのです。




