表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、ハルミのカオスな日常へ!  作者: あじせ
家が手狭になりすぎた!!
PR
3/84

第3話 昼ごはんと、思い出と、幼なじみ爆弾

【超速報】記憶が昼ごはんで大爆発!?

― 大沢ハルミ、“ただのご近所ランチ”で幼少期を一気に思い出す衝撃展開! ―


平和なはずの田舎ライフ、まさかの急展開!!


清水家でのほのぼのランチ――

その一口が引き金だった。


「懐かしい味」→「日曜日の記憶」→「え、ここ昔来てた!?」

そしてついに――記憶、完全復旧!!


幼なじみ・いつきの存在も浮上。

さらには“近々帰ってくる”という爆弾情報まで投下!?


温かいご飯と一緒に蘇る過去。

笑いと混乱、そしてちょっとの動揺。


これはただのランチじゃない。

人生の伏線回収イベント発生!!

清水家の庭は。


醤油のCMみたいだった。


古い木の下。


低い木のテーブル。


妙に整いすぎている家庭菜園。


小さな池では、

鯉が優雅にぐるぐるしている。


のどか。


完璧に、

のどか。


 


治美は座るなり、深呼吸した。


 


「……スローライフ感が強すぎる」


 


泉はもう食べていた。


 


「罠でも、おいしいなら許す」


 


さくらが料理を並べていく。


炊きたてのご飯。


焼き魚。


畑の野菜。


湯気の立つ味噌汁。


 


治美は、最初のひと口を食べた。


 


――そして。


止まった。


 


大げさにではなく。


内側だけ。


 


味。


匂い。


縁側の木の感触。


池の水音。


 


全部。


妙に、

懐かしかった。


 


「どう?」


 


さくらが、優しく聞く。


 


「……なんか」


 


治美はゆっくり答えた。


 


「日曜日の味がする」


 


泉が顔を上げる。


 


さくらは、

少しだけ目を細めた。


 


「毎週来てたものねぇ」


 


沈黙。


 


泉の箸が止まる。


 


治美は瞬きをした。


 


「……私が?」


 


「春美ちゃんと、いつきちゃんと、みーんなでねぇ」


 


その瞬間。


 


泉が、ゆっくり箸を置いた。


 


「やっぱり」


 


治美が振り向く。


 


「何が?」


 


泉は庭を指差した。


 


「この家。

 この木。

 この池。


 なんか見覚えあった」


 


治美は、さくらを見る。


 


さくらは、

まるで「思い出してごらん」とでも言いたげな顔をしていた。


 


――その時。


 


記憶が。


 


全部じゃない。


でも。


断片的に。


 


ぱっと、

浮かんだ。


 


土の上を転がるボール。


誰かの笑い声。


「はるー!」と呼ぶ声。


池に落ちる自分。


怒ってるふりをして笑うさくら。


 


治美の目が、

大きく開いた。


 


瞬き。


 


もう一回、

瞬き。


 


次の瞬間。


 


ガタッ!!


 


勢いよく立ち上がる。


 


テーブルが揺れた。


 


泉が即座に押さえる。


 


味噌汁外交危機、

回避。


 


「さくらさん!?」


 


沈黙。


 


池で、

鯉がぽちゃんと跳ねた。


 


さくらが、

ゆっくり笑う。


 


「遅かったわねぇ、はるちゃん」


 


治美は頭を抱えた。


 


「なんで気づかなかったの私!?

 全然変わってないのに!!」


 


そのまま、

テーブルを回り込む。


 


ぎゅうっ。


 


さくらに抱きついた。


 


「ごめんなさい!!

 顔って、予想してない場所で会うと分かんなくて!!」


 


泉はまだテーブルを支えていた。


 


「私は五回くらい察してた」


 


治美は、

さくらの手を握ったまま笑う。


 


「家は忘れてたのに、

 空気は覚えてたんだ……」


 


さくらが、

優しく頷く。


 


「記憶ってねぇ。

 頭より先に、

 体が思い出すこともあるのよ」


 


泉はまた食べ始めた。


 


「いつき、

 昔ひろしさんのトマト盗んでたよね」


 


「違うよ!」


 


治美が即反応する。


 


「農業的レンタル!!」


 


「最低な言い換え」


 


さくらが笑った。


 


「ほんと、二人とも毎日騒がしかったわぁ」


 


その名前が。


 


ふわっと、

空気に浮かぶ。


 


――いつき。


 


治美は、

ゆっくり座り直した。


 


「……元気にしてる?」


 


さくらは、

少し困った顔をした。


 


「元気よぉ。

 なんか色々してる」


 


「色々?」


 


泉が聞き返す。


 


「勉強したり、

 働いたり、

 どこか行ったり、

 また勉強したり」


 


「写真送ってくるんだけどねぇ」


 


「ビルだったり」


 


「パソコンだったり」


 


「空港だったり」


 


治美は真顔になった。


 


「……職業なに?」


 


さくらは両手を広げた。


 


「私もよく分かってないの」


 


泉が真剣に頷く。


 


「いつきっぽい」


 


治美は吹き出した。


 


「まだあの、

 “宇宙の真理考えてます”みたいな顔してる?」


 


「してるわねぇ」


 


「まだ泣き虫?」


 


「昔ほどじゃないわね」


 


二人は笑った。


 


懐かしくて。


 


少しだけ、

くすぐったい笑いだった。


 


治美は頬杖をつく。


 


「うわぁ……

 何年ぶりだろ」


 


さくらが、

さらっと言った。


 


「そのうち帰ってくるわよ」


 


沈黙。


 


治美が止まる。


 


「……へ?」


 


「夏休みだから」


 


「来るの!?」


 


「来るわよ?」


 


泉は、

火事を眺める顔をしていた。


 


治美は平静を装う。


 


失敗した。


 


「へぇー。

 そっかぁ。

 普通だねぇ。

 全然、

 池に落ちたところ見られた相手とかじゃないし」


 


さくらが笑う。


 


「押したの春美ちゃんだったけどねぇ」


 


「そこ重要じゃないから!!」


 


庭に笑い声が広がる。


 


風が気持ちよかった。


 


空気が、

柔らかかった。


 


――だから。


 


次の質問は。


 


少しだけ、

不意打ちだった。


 


「お母さんは元気?」


 


泉が、

そっと目を逸らす。


 


治美は一瞬だけ止まり。


でも、

すぐ笑った。


 


「元気だよ。

 いつも通り」


 


さくらが懐かしそうに笑う。


 


「変わってるものねぇ」


 


「めちゃくちゃ」


 


「まだ海外?」


 


「うん。

 でも、そろそろ戻ると思う」


 


さくらは、

どこか嬉しそうだった。


 


「会いたいわぁ。

 お父さんにも」


 


治美は頷いた。


 


ほんの少しだけ。


 


静かな顔をした。


 


でも。


 


すぐ戻る。


 


「帰ってきたら、

 絶対この家にも来るよ」


 


泉がぼそっと言う。


 


「三時間くらい掃除の話する」


 


「正論だから!!」


 


昼食のあと。


 


さくらは町を案内してくれた。


 


畑。


 


道。


 


昔、

遊んでいた場所。


 


治美は、

葉っぱに触れながら歩く。


 


「うわぁ……

 ここ走ってた気がする……」


 


「人参、勝手に抜いてたわよ」


 


「細かいことは!!」


 


泉が爆笑した。


 


遠くには、

花森湖が見える。


 


青空を映して、

きらきら光っていた。


 


八月。


 


なのに。


 


風が、

少し涼しい。


 


「なんか今日、

 涼しくない?」


 


治美が言う。


 


さくらは頷いた。


 


「今週、

 急に冷えるらしいわよ」


 


泉が眉をひそめる。


 


「八月なのに?」


 


「この町、

 たまに変なことするの」


 


嫌な予感みたいに。


 


その言葉だけが、

少し残った。


 


夕方。


 


二人は家へ戻った。


 


疲れていた。


 


満腹だった。


 


情報量も、

すごかった。


 


泉は、

そのまま畳へ倒れ込む。


 


「つまり、

 お姉ちゃんは幼少期を部分的に忘れてた」


 


治美は天井を見る。


 


「忘れてたっていうか」


 


胸に手を当てた。


 


「別の場所にしまってた感じ」


 


静かな沈黙。


 


心地いい沈黙。


 


そして。


 


「……いつき、帰ってくるんだ」


 


泉が寝返りを打つ。


 


「もう緊張してる?」


 


「してない」


 


間。


 


「……ちょっと」


 


さらに間。


 


「めちゃくちゃ会いたいんだけど!!!」


 


家が、

ぎしっと鳴った。


 


夕日が、

ゆっくり傾いていく。


 


泉がぼそっと聞く。


 


「連絡先とか知らないの?」


 


「知らない。

 引っ越した頃、

 まだ携帯持ってなかったし」


 


「あー」


 


泉が頷く。


 


「昔って、

 それで普通だったよね」


 


治美は、

静かに目を閉じた。


 


ここは。


 


知らない町じゃない。


 


帰ってきた場所だ。


 


そして。


 


何かが、

また動き始めようとしていた。


 


……まあ。


 


それは。


 


明日の治美が頑張る話である。



楽しんでいただけたら嬉しいです!

もしよければ、ポイントを入れていただけると、とても励みになります

また次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ