第29章 — 病院の大ゲンカ:ハルミ vs 日本一冷たい女
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ついに、家出したタケルを見つける寸前まで近づいたハルミ。
彼女は隣町の高峰にある病院へ向かった。
そこで、彼女は衝撃的な事実を知る。タケルは長年にわたり何度も病院に通っていたが、
母親を見つけることはできなかったのだ。
そして、ハルミは決意を固めた。
受付係に止められることもなく、
エレベーターも使わずに、
怒りに駆られ、全力で7階へと駆け上がった!
そこで彼女を待ち受けていたのは、おそらく日本で最も冷酷な母親、小林瑞希だった。
これはただの話し合いではない。
これは、ハルミと冷徹な母親との直接対決なのだ。
さあ、本題に入ろう!
電車はガタガタ揺れていた。
でもハルミはまったく気づいていなかった。
怒った牛みたいに息を荒くしながら、
自動ドアから入る冷たい風で、
薄すぎるコートがバタバタ揺れている。
隣の町――
ハルミの昔の町の駅に着いたとき、彼女はもう完全にボロボロだった。
息切れ。
前髪は額にベッタリ。
マラソンでも走ったみたいに汗だく。
なのに――
なぜか真冬レベルの寒さ。八月なのに。どういうこと?!
「うわあああ、もう!!」
ハルミは街を全力で走った。
人の視線なんて無視。
自分の足に何回もつまずきながら。
そして――
病院に到着。
震えている。
そして自動ドアの前で、
ドラマみたいに倒れかけた。
「だ、大丈夫ですか?」
警備員が慌てて聞いた。
「大丈夫じゃないです!!!」
ハルミは叫びながら、そのまま中へ突入。
受付カウンターに手をバンッ!とついた。
「すみません!!
この人を探してるんです!!」
医療書類を見せる。
受付の女性は名前を見た。
読んだ。
そしてすぐに、あの表情。
(あー…面倒なパターンだ…)
ハルミは最悪の予感。
「まだ…入院してますよね?」
受付はうなずいた。
「はい。ただし…」
「ただし?」
「面会は受け付けていません。」
ハルミ瞬き。
「どういう意味ですか?」
「誰とも会いません。
すべての面会を断っています。」
「全部?!」
「はい。何年も。」
ハルミの胃がぐるっと回った。
怒りで。
「じゃあ…タケルっていう男の子、知ってますか?
きっとここに来てるはずなんです。」
受付はモニターを見て、深いため息。
「…はい。よく知っています。」
紙を取り出した。
ハルミが見る。
そこには、長年の面会記録。
名前はすべて同じ。
タケル。
タケル。
タケル。
タケル。
ハルミは息をのんだ。
「…毎回来てたんですか?」
受付はロビーの椅子を指さした。
「毎月。
多い時は毎週。
ここに何時間も座って待っていました。」
ハルミの胸が締めつけられる。
「…一度でも会えましたか?」
受付は苦い顔をした。
「いいえ。
彼の面会も、すべて拒否されました。」
ハルミ、停止。
目、見開き。
沈黙――5秒。
そして。
「はああああああああああああああああああ?!?!?!」
受付が飛び上がった。
ハルミはカウンターに身を乗り出す。
母性の鬼。
「タケルを断った?!
あの子毎週ここに座ってたんですよ?!
それで追い返したんですか?!」
受付パニック。
「お、お客様落ち着いて――」
「落ち着けるかぁぁぁ!!
部屋どこですかその女ぁぁぁ!!!」
受付キョロキョロ。
「えっと…七階で――」
ハルミはもう走っていた。
怒りの階段:ハルミ vs 7階
エレベーター?
使わない。
階段。
全力。
一階。
二階。
三階。
四階。
「ぜぇ…ぜぇ…
待ってろぉぉぉ!!
魂なし女ぁぁぁ!!」
五階。
六階。
この頃には、
びしょ濡れの犬みたいな顔になっていた。
七階。
到着。
病室のドア。
開ける。
…開かない。
鍵。
ハルミ深呼吸。
「落ち着けハルミ。
あなたは大人。
理性的。
普通にノックしてお願いすれば――」
ドーン!!
蹴った。
ドアが壁にぶつかった。
部屋の中。
薬の匂い。
重い静けさ。
ベッドに座る女。
背中だけ見える。
名前:
小林ミズキ。
冷たい。
動かない。
窓の影で顔が見えない。
そして一言。
「帰りなさい。」
ハルミは汗だく。
帽子は曲がってる。
コートは開きっぱなし。
でも目は――
怒りで光っていた。
一歩前へ。
女は振り向いた。
青白い顔。
死んだような目。
そして言った。
「出て行って。」
ハルミは息を止めた。
それでも一歩。
言葉が出る。
「タケルとメ――」
女が叫んだ。
「その名前を言うな。」
冷たい声。
でもどこかに、
痛み。
ハルミは理解した。
これは単なる憎しみじゃない。
根の深い憎しみだ。
女は言った。
「あの子が私の人生を壊した。」
ハルミの心の中:
(今すぐ殴りたい。)
でも我慢。
女は続けた。
「薬も飲んだ。全部やった。
それでも生まれた。
健康もキャリアも全部壊された。」
ハルミの声が漏れた。
「子どもたちはあなたの子どもとして生まれたいなんて頼んでない!」
女が止まる。
振り向く。
ハルミ、引かない。
女は笑った。
「じゃあ連れていけば?
あなたが育てればいい。
どうでもいい。」
沈黙。
部屋の温度が下がる。
ハルミの姿勢が変わった。
目が――
氷。
声は静か。
「同情だと思ってるんだ。」
一歩。
「それはあなたが欲しいもの。」
また一歩。
「子どもはあなたのために生まれたんじゃない。」
そして言った。
「私はあなたに同情しない。」
ハルミは笑った。
鋭く。
「この甘ったれ。」
女の顔が白くなる。
ハルミは言った。
「私はあの子たちの物語を書き直す。
あなたなしで。」
振り向く。
そして最後に。
「自分で掘った空っぽと生きなさい。」
べーっ。
舌出し。
ドア。
バタン。
外。
静かな七階。
ハルミはドアに背中を預けた。
震えない。
泣かない。
ただ息を吐く。
戦争から帰ったみたいだった。
でも歩き出す。
頭を上げて。
なぜなら今、彼女は理解した。
見つけたのは子どもじゃない。
壊れた人生。
そしてそれは重荷じゃない。
約束。
守る。
愛する。
育てる。
誰の許可もいらない。




