第21話 — 庭戦争:ハルミ vs 野生のジャングル
速報!
本日午前、某地方都市の住宅街で異変発生。
一人の女性が――
雑草に挑み、
クワを振り上げ、
叫び、転び、
最終的に勝利(※一部)を収めた模様。
関係者によると、
「ただ庭を片付けようとしただけ」
とのことだが、
現場はほぼ戦場だったという。
これは事故か?
それとも自然災害か?
――いいえ。
これは、ハルミの休日である。
(別名:「どうして私の人生、こんなにシンプルじゃないの?」)
土曜日は、まだ始まったばかりだった。
太陽は気持ちよくて、
風も涼しくて――
ハルミは裏口のドアの前で、
軽めの人生崩壊を起こしていた。
なぜなら。
庭。
庭。
そこには――
広大で、
野生で、
制御不能で、
雑草のほとんどがハルミの身長を超えていた。
「……よし。」
ハルミは深呼吸し、両手でクワを握った。
「できる、ハル。
ちょっと草を刈って、
テーブル置いて、
……生き残るだけ。」
一方、そのころ家の中では――
キッチンは立入禁止区域と化していた。
母・レジーナが、はっきり高らかに宣言したのだ。
「ハルミ!この床に一歩でも入ったら、勘当するからね!」
そして近所の“最強おばあちゃん部隊”が、
レジーナを囲み、料理を手伝っていた。
「レジーナ、玉ねぎ足りる?」
「レジーナちゃん、これは私が切るわ!」
「ねえねえ、旅行どうだったの?」
「ハルミちゃんって……いつもああなの?」
「“ああ”って?運動音痴って意味?それとも野生動物って意味?」
――母は優しく答えた。
おばあちゃんたちは大爆笑。
母モード全開のレジーナを見て、幸せそうだった。
そのころ、外では――
ハルミが雑草の台風を睨んでいた。
まるで寝ている間に庭が成長したかのよう。
自然がこう言っている気がした。
「今日はお前に勝つ。」
ハルミはクワを、
聖剣のように掲げた。
「あなたたちのために。」
家の中を見て、
「料理してて、私の存在を禁止した皆さんのために……
私は、この庭に勝つ!!」
そして――
ジャングルへ突入。
第一の敵:レベル1雑草
小さな草を一つ刈った。
「ほら!簡単!
私、ほぼ農村戦士じゃん!!!」
――草、即復活。
ハルミ、目を見開く。
「ちょっと!!
それ反則でしょ!!フェアに戦って!!」
第二の敵:レベル50雑草 — 庭のボス
横を見ると。
不機嫌な思春期男子サイズの巨大雑草が、
風に揺れていた。
「……それ、怖くて震えてる?
それとも私を殺しにきてる?」
雑草、ゆらり。
「やっぱりね。」
ハルミ、突撃。
……しようとした。
ドサッ。
滑って、
尻もち。
尊厳、消失。
「普通の人生の回、作れませんかあああ!!」
叫びながら、
屈辱パワーで草を引き抜く。
その声は、おばあちゃんたちにも届いた。
「レジーナちゃん、娘さん生きてる?」
「残念ながら。」
第三の敵:スパイダーファミリー
草を引っ張った瞬間――
ワラワラワラ……
小さなクモの巣。
大量のクモ。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
叫び声は町中に響いた。
タケルが裏口に現れ、
信じられない顔で一言。
「……ハルミ、クモと戦ってる。」
メイはクマちゃんを抱きしめて、不安そう。
「ハルミ……クモになるの?」
イズミ:
「なりかねない。」
キッチンの中から母の声。
「放っときなさい!性格が鍛えられる!」
40分後。
ハルミは汗だく。
敗北寸前。
草まみれ。
髪はもはや本物の巣。
でも――
庭は、きれいだった。
……まあ。
半分くらい。
でも!
テーブル置くスペースは確保した!!
ハルミは両手を上げた。
「勝ったあああ!!
自然は私を支配できない!!
私が自然を支配するの!!」
その瞬間。
ヤモリが肩に落ちた。
「ぎゃあああ!!」
円を描いて走り回るハルミ。
イズミ、当然のように撮影。
タケル、ため息。
メイ、拍手。
キッチンのおばあちゃんたち:
「ハルミちゃんって……生き生きしてるわね。」
「元気すぎる。」
「でも、頑張り屋。」
「……それは認める。」
ハルミはテーブルを置き、
椅子を並べ、
花を飾った。
立ち止まり、自分の仕事を見る。
ボロボロで、
傷だらけで、
アクションアニメ三期分戦った顔。
でも――
幸せだった。
メイが走ってきて、脚に抱きつく。
「ハルミ!庭、すっごくきれい!!」
ハルミは目を潤ませて笑った。
「ふふ……だってね……」
「キッチンに入るなって言われたからだろ。」
タケルが淡々と続ける。
ハルミ、頬を膨らませる。
「それもある!!
でも大好きだよ!!」
そう言って飛びつき、
三人はそのまま地面に倒れ込んだ。
(……好き?
いつまでここにいられるんだろう。
彼女はいつか、諦めるんじゃ……)
タケルの胸に、
そんな不安がよぎる。
イズミがハルミの背中をポンポン。
「よくやったね、ハル。
今日はジャングルの負け。」
ハルミは深く息を吸った。
「うん……今日は勝った。
でも明日には、また全部伸びるんだよね。」
「明日っていつ?」
イズミが聞く。
「……知らない。
ドラマっぽく言いたかっただけ。」
こうして宴は始まった。
ハルミの勝利、
女神のようなおばあちゃんたちの料理、
将軍のような母の指揮、
そして庭には――
勝利の匂いと、殺虫剤の香りが漂っていた。




