第18話 — 六人と、1998年製の車
朝の空港。
久しぶりの再会。
……そして問題発生。
人数は6人。
車は1998年製。
トランクは限界突破。
母は激怒。
父は圧死寸前。
ハルミはスリッパで運転。
これはもう「移動」ではない。
家族フルコンボ地獄イベント発生。
果たして全員、無事に帰れるのか――?
そして、ハルミは母に“あの子たち”の正体を説明できるのか!?
▶ 混雑・混乱・混沌100%の第18話、開幕です!
ハルミの母は、まだ娘をぎゅっと抱きしめていた。
そのまま、ハルミの肩越しに――二人の子どもが立っているのが目に入る。
メイは緊張で固まり。
タケルは心の中でこう思っていた。
「……なんで俺、ここにいるんだ?」
母は、ぱちりと瞬きをした。
「……ハルミ」
「なに、ママ?」
「この……子どもたちは……?」
彼女は夫のほうを見て、片眉をつり上げる。
「……あなた側の親戚?」
父は、魚が跳ねたみたいな勢いで飛び上がった。
「えっ!? ちがうちがう!!」
「え~? だって怪しいじゃない」
母はすでに不機嫌だ。
「私、半年ブラジルにいたのよ? その間に何かあってもおかしくないでしょ、マコト?」
ハルミは慌てて自分の胸を叩いた。
「ママ! ママ待って!!
この子たち、パパの子じゃない!!」
「……あ、そう」
母は一瞬だけ安心した。ほんの一瞬。
「じゃあ……誰の子?」
ハルミ、フリーズ。
メイは小さく手を振り、
タケルは全力で視線を逸らした。
(俺、知らない人です、の顔)
「えっとね……ママ……車の中で説明――」
「いいわ!」
母は即答した。
「で? 車どこ?」
ハルミは、指をさした。
母はその方向を見る。
一回、瞬き。
二回、瞬き。
三回――脳が再起動する音がした。
「……ハルミ」
「なに?」
「……これ、車?」
「うん!」
「これ、私が22歳のときに乗ってた車よ?」
「うん!」
「日本に来たときに買ったやつよ?」
「うん!!」
「……で、あなたのお父さんの家の裏に置いたまま、壊れてたやつよ?」
ハルミは自分を指さし、誇らしげに言った。
「だ・か・ら!! 生き返らせた!!」
「ハルミ!! 車はポケモンじゃない!!」
父が必死にフォローする。
「い、一応……動くよ……?」
「マコト、この車、寿命20年オーバーよ!
今生きてるの、奇跡だから!」
「坂道で咳してましたけどね……」
と、イズミが小声で追撃した。
ここで全員、重大な事実に気づく
母、腕を組む。
「で。スーツケースは?」
ハルミ、フリーズ。
イズミ、フリーズ。
父、フリーズ。
タケル、トランクを見る。
「……ハルミ」
「ママ……」
「迎えに来たの、何人?」
ハルミは指を立て――
止まり――
数え直した。
「……5人」
「帰りは?」
「……6人」
母、深呼吸。
「ハルミ」
「なに?」
「私のスーツケース、どこに置くの?」
ハルミは
車を見る。
空を見る。
地面を見る。
鳩を見る。(答えを求めて)
「ママ……」
「言わないで」
「たぶん……こう……」
「子どもの膝の上は却下!」
「じゃあ屋根! ロープある!」
「もっと却下!!」
父が弱々しく言った。
「……スーツケース、1個だよね?」
「2個よ、マコト」
「……あ……」
ハルミが荷物を詰めている間、
母はまたメイとタケルを指差した。
「……ハルミ。まだ説明を聞いてない」
「ママ……」
「この子たち、どこから? 誰? どういう関係?」
「複雑なの! あとで説明するから!」
「ハルミ……」
「だ、だから!
今は車に集中しよ!? ハハハ……」
母は胸を押さえ、首をぐるっと回した。
「……マコト」
「はい……」
「あなた、知ってたの?」
「いや……聞かなかった……」
「マコト!!!」
10分後:空間魔法の結果
結論。
「スーツケースはマコトの膝の上」
「俺!?」
「パパ、強そうだし! お腹もふわふわ!」
「それ褒めてないよね……」
「ママは前! 私と一緒!」
「あなたと!?」
母、目を見開く。
「ハルミ、あなたの運転、腎臓のない犬みたいよ!」
「ママ!?」
「愛情表現!」
「それ愛情!?」
「ポルトガル語ではね!」
完成した地獄配置
【前】
・スリッパで運転するハルミ
・サングラス装備の母(まだ暗い)
【後ろ】
・スーツケース2個に圧される父
・父に圧されるイズミ
・イズミに圧されるメイ
・ドアに挟まるタケル(心が死んでいる)
エンジン始動。
車:
「キェェェェェェェ……」
母:
「イエス! マリア! ジョゼ!
私をブラジルに戻して!!」
父:
「落ち着いて、ハニー……」
「落ち着けるか!!」
メイ:
「おばさん、やさしそう!」
「ありがとう……でも私たち死ぬわ」
タケル:
「……なんで俺ここにいるんだ」
ハルミ:
「みんな!! 私なりに頑張ってる!!」
母:
「その“頑張り”が危険なの!!」
イズミ:
「同意。」
車は動き出した。
揺れる。
咳する。
泣く。
――でも、進む。
母(ポルトガル語):
「マコト! なんでこの車で娘に運転させてるの!?」
父(日本語):
「自立したいって……」
母(ポルトガル語):
「命からの自立ね!!」
ハルミ(日本語):
「ママ!! 私、ポルトガル語わかるから!!」
母:
「わかってるから言ってるの!!」
メイ:
「この言葉、きれい……」
タケル:
「何もわからない……」
イズミ:
「ようこそ。」




