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第17話 — 朝6時の空港作戦


午前4時30分。

本来なら大人が静かに準備をする時間。

だがハルミは――寝ていた。

寝坊、パジャマ、ガソリン切れ、

そして伝説級の運転技術。

母を迎えに行くだけのはずが、

全員の命が試される早朝ミッションに変わる。

果たして彼らは、空港にたどり着けるのか!?



時計は4時30分を指していた。


責任ある大人なら、

コーヒーを飲み、ルートを確認し、

落ち着いて車を準備している時間だ。


――だがハルミは、

今まさに寝ようとしていた。


「ハルミ。起きて」


タケルは枕で、

的確かつ容赦ない一撃を顔に入れた。


「ぐふっ……やだ……ねむ……」


「4時半に起きるって言ったでしょ。

もう4時32分」


ハルミの目が見開かれた。

七日前に火にかけた鍋を思い出した人の顔だった。


「やばい!!空港!!

ママ!!イズミ!!車!!」


彼女は跳ね起き、

転び、

立ち上がり、

ドアへ走った。


タケルは無言で見守った。


子どもたちの準備(という名の戦争)


メイは眠そうに立ち尽くし、

ハルミは必死に身だしなみを整える。


「はいメイ!かわいい!

コートも完璧!天使!!」


「わたし、すき!」

メイはにこにこ。


次はタケル。


「タケル、これ着て――」

「嫌」

「似合うよ――」

「嫌」

「じゃあ髪――」

「嫌」


五分後。


ハルミは諦めた。


タケルは結局、

ハルミの提案を一切採用せず、

いつも通りの姿で現れた。


「……気づいてる?

パジャマだけど」


「え?」

「そう」

「……楽だからいいや!」


そのまま電車に乗り、

5時27分に父の家へ到着。


母の到着まで、あと32分。

道のりは理論上40分。


――詰んだ。


実家の前


ハルミはスリッパ姿、

目の下のクマが地球一周していた。


イズミも同じく、

魂が半分抜けた状態で立っていた。


「……パジャマ?」

「うん」

「……最高」

「何が?」

「今日、私だけダメじゃないってこと」


その後ろから父が現れた。


小柄で、ぽっちゃり、

頭は薄く、ウエストポーチ、

短パン、

なぜかプロ用カメラ。


「おはよう!!

ママ迎えに行く準備できてる!?」


二人は怪物を見る目をした。


「パパ、朝5時」

「だから?」

「真っ暗」

「最高!」


車問題


「乗って!早く!」


「前は無理」

イズミ即答。

「事故ったら死ぬ」


「僕も無理」

タケル。


「子どもです」

メイが手を上げる。


全員、父を見る。


「僕が行くよ」

誇らしげに。

「ずっと劇的に死にたかった」


「やめて!!

私の運転=死じゃないから!!」


沈黙。


「……冗談だよ。

まあ、半分」


エンジンをかける。


車は、

30年文句を言い続けた老人のような音を出した。


「これ正常?」

イズミ。


「痛みの音」

タケル。


「意思の音!」

ハルミ。


急発進。


「ひぃぃ!!

運転忘れた!?」


「違う!!

再適応中!!」


「それが一番怖い!!」


タケルは黙ってシートベルトを締めた。


「今日死ぬと思ってた」


十分後。


車が――咳した。


ガス欠。


「……ハルミ」

「言わないで」

「ガソリン入れてない?」

「言わないで!!」


1983年で時が止まったような

ガソリンスタンドに到着。


奇跡的に営業中。


「懐かしいなぁ!」

父は感動。

「若い頃からあった!」


「それ、良くない」


給油して、謝って、

再出発。


空港到着(生還)


疲労。

精神崩壊。

メイは立ったまま寝そう。

イズミはスリッパのハルミが恥ずかしい。


そして――


母が現れた。


背が高く、

美しく、

完璧に整えられた髪。

雑誌から出てきたような人。


「私の娘たち!!」


ハルミ、凍結。


タケルとメイは

芸能人を見たような顔。


イズミが呟く。


「……遺伝子、完全にハルミ飛ばしたね」


母のハグで

ハルミはほぼ倒れた。


父は誇らしげ。


ハルミの頭には一つだけ。


「絶対、大変になる」

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