表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未詠の声:異世界の詩  作者: 雪沢 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/17

間章|語律録音抄:U-V01に関する記録要約

[詩が独りで話し出した時、制度は崩れる。]

[When a poem speaks on its own, systems collapse.]




【備考:以下は帝国語律管理局・第七機密層級記録より抜粋。執行官ヴェイン・サイクスによる口述、および現地音声と内部報告草案を元にした記録。閲覧は上級審議部門に限定される。】


 ——


 私は、何を見たのか確信が持てない。

 語律規定において、未登録語体が詩化傾向を示す場合、それは不安定な命詩源として即時封印・分類される。


 しかし、U-V01は命名を拒絶し、その詩化過程すら、既知の詠唱律動に従っていなかった。


 彼は「命詩を使っている」のではない。


 命詩が、彼を使っている。

 技術的に言えば、彼の存在は語律構造の残響そのものである。


 初回接触時、語標識別装置は連続的にエラーを返した。

 文構欠落 音律の折り返し 語源追跡結果:「未創出」

 まるで、一度も書かれたことのない詩句のように。

 我々には、こう推測する理由がある:


 U-V01は単なる命詩契者ではない。

 ——残詩の器である可能性がある。


 古記録には、命詩が完結せぬまま詩契者が命を落とすと、その声律は「語場」に残響として漂い、断片となって特殊な音体に宿ることがあると記されている。


 U-V01は、そのような残響の凝縮体ではないか。

 彼は個体ではなく、**「詩に成った人型」**だ。

 問題は、彼がいかなる命名機構にも属さないことだ。

 フォーマット不可能。

 最終句式の予測不可能。

 もし、彼の中の詩が自己完結を目指して動き出すとすれば——【沈黙】——


 我々が直面しているのは、詩契者ではない。

 詩そのものが、語りはじめている。

 失制御の際、私は語律構造が自動再構築されるのを目撃せり。


 空間に現れたのは「反詩輪印」——

 これは古代語律災害に記録された兆候だ。

 詩文が逆回転し、周囲の語場を飲み込む。

 それは、禁忌記録にのみ存在する光景だった。


 そして、あの竜——ラクリマ——

 彼女は、いかなる語律協定にも従っていない。

 彼女の行動は、U-V01と完璧に共鳴していたにもかかわらず、主従契約の痕跡は確認できなかった。

 彼女もまた、残響由来の存在であり、あの災厄と何らかの関係を持つ可能性がある。

 彼らは互いに「聴こえ合っている」。

 それによって——存在している。

 これは、最も制御不能な音声構造だ。

 危険だからではない。

 語律の許可を必要とせずに「聴かれる」からだ。


【結論と提案】

 私は、U-V01を以下のように再分類することを提案する:

「語律外因体」 ——語体秩序の外部に存在する詩性実体

 命名および兵器化の試行を全面禁止すること。

 反詩反応が語律システム全体の崩壊を引き起こす恐れがある。


 また、U-V01とラクリマは現在、残響高原へと移動中との報告がある。

 そこには、未完詩句の源泉が存在する可能性がある。

 即時の追跡調査を要請する。


 ——ヴェイン・サイクス


【間章 完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ