第6話 歴史と書かれた本 ※
回想)勇者が召喚された場面
勇者の初期ステータスがあります。
編集前をご存じの方へお知らせですmm
少し手が加わっています。
訓練の息抜きに図書室へで面白そうな本がないか探してみた。
【歴史】と書かれた本が、以前見た【世界の理】【魔法】【スキル】【種族】【その他】の本と同じ背表紙で同じ作りだったが、薄く光輝いていた本とは異なり普通の本だ。
僕は本の内容が気になり、その【歴史】と書かれた本を読み始めた。
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はるか昔の初代勇者のお話
先代の神様が異世界から一人の人間を召喚した。
今の神様と先代の神様とは違うようで当時は神様の師匠が神様だったようだ。
名前 〇〇
年齢:18歳
性別:男性
レベル:1
スキル:異世界言語、剣技レベルMAX
称号:勇者
勇者:異世界から召喚された者。普通の範囲ではあり得ないことを起こす可能性を秘めている。
この世界の歴史上では初代勇者こと勇者〇〇は黒髪の勇者である。
古の契約の影響で〇〇と読めない字で書かれている。
初代勇者なだけに剣技レベルMAXが召喚直後ってことは元の世界では剣士や剣豪と呼ばれる人だったのかもしれない。勇者の称号も説明だけでは、あらゆる可能性を秘めた者と判断が出来るが、称号の持つ効果が一切分からない。
人の行う勇者召喚の儀式では異世界から生物を召喚する事は出来ない。
この儀式で召喚出来るのは、異世界から果実一個ぐらいしか召喚出来ない。
神様が行うと何のリスクもなく召喚することが出来る。
この世界に於いてのリスクはないが、神法に抵触するのでお咎めはあるようだ。
召喚の儀式では大量の魔力と生命力が魔法陣につぎ込まれる事で召喚の効果を表す。大量の魔力と生命力が世界から失われる事になるというのに、その成果が向こうの世界の果実一個では割に合わない。
大量の魔力と生命力が失われるとやがて世界は崩壊の危機を迎えるかもしれない。先代の神様は、人が行う勇者召喚の儀式を利用し、自らが勇者召喚を行い召喚された勇者にそのエネルギーを与え世界の崩壊の危機を防ぐことにしたのだ。
初代勇者が世界崩壊するほどエネルギーを保管する役目を負うのだ。
先代の神様の世界を守ろうとするこの行為は神法 第987条【危機回避の不可抗力の原則】に基づき違法にはならないらしい。
基本的に神様が管理する世界に介入する行為は神法にて禁止されている。
ただし、世界が崩壊する危機に遭遇した場合にはこの限りではないようだ。大量の魔力と生命力をつぎ込まれた初代勇者は、考えられない能力と力を手に入れたことになる。
それを使い熟せればの話だけど・・・。
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どうやら当時の様子が何故だかイメージとして僕の中に流れて来る。
勇者:
ここは?
声が上ずった感じの様子で黒髪の少年は呟いた。
人族の賢者:
ようこそ。勇者様。
勇者:
儂が勇者?
人族の賢者:
そうです。我々が勇者様を異世界へとお呼び致しました。
勇者:
ここは異世界だって?
人族の賢者:
勇者様が住んでいらした世界とは別の世界の事でございます。
どうかこの世界をお救い下さい。
勇者と呼ばれた少年は誰かと話をしているような感じだが・・・それが終わると口を開いた。
勇者:
儂には世界を救うって、そんなことが出来る力も知恵も何もないよ。
人族の賢者:
勇者様。そんな事ありません。
勇者:
どんな事が出来るというの?
人族の賢者:
・・・。
この場にいた人族の賢者とエルフ族の賢者も何も答える事が出来なかった。
勇者に何が出来るのかなんてこの世界の者は誰にも分からないからだ。初めて成功した勇者召喚で現れた勇者は過去の実績や成果なんてないのだから。
勇者を召喚したもののどんな事が出来るかなんて勇者本人以外は知らないのが普通だ。他人に君は〇〇が出来るからやってくれと言われても「出来ない」の一言で片付く。
例えば、料理が出来るから料理を作ってくれなんて場合には料理を作ることは出来る。だが、料理を作った結果どうであろう関係がないのと同じだ。作り終えた料理が美味かろうと不味かろうと料理が作れるって意味では同じだからだ。
本人ではなく他の人が『君は料理が作れる』と言われたら美味く作れると思うのが普通だ。作った料理が不味かったら料理が作れるとは言わない。作った料理が不味かったの不味いは結果を表現をするからね。
盗賊や魔物の討伐なんて場合に特に勇者じゃないと駄目な訳でもなく、ここにいる者達でも簡単に出来そうだ。なので、殺人依頼や魔物の討伐なんてことを勇者にも出来るからと言って召喚してまで依頼する必要もないのだ。
人族の賢者が言った『この世界を救う』という言葉がある。
勇者じゃないと出来ないことと言えば、邪神や魔王や強大な魔物の討伐や封印と言った内容を考えることが出来るが、世界を救う=邪神や魔王が関係することを人族の賢者が黙ったことにより否定されたことになる。邪神や魔王が関係するならあの場面で答えることが出来るからね。
そうこうしている内に、豪華なアクセサリーなどを持って来た騎士ような存在が目についた。何やらエルフ族の賢者や人族の賢者と話し込んでいるが・・・。
また、勇者が誰かと話しているような感じがする。
人族の賢者:
勇者様。これをお着けになって下さい。
この世界の秘宝で【身体能力】が数倍になり、眠りなどの状態の変化を防ぐ効果があるアクセサリーです。
見るとネックレスタイプの物とピアスタイプの物の二つある。
そのどちらにも同じ赤い宝石がついている。だが、その禍々しさを隠せない程でいかにもな感じの宝石だ。
これは『隷属の装飾』と呼ばれる類の物で、その物を身に着けると効果が出るようだ。隷属の装飾なので、呪印が結ばれていて身に着けた者は主の命令に従うように出来ており、身に着けた者自身が装飾を外す事は出来ない。
誰かに外してもらう必要があるが隷属を施した主の意思を無視して勝手に「隷属の装飾を外す」なんてことは禁じられている。隷属された者が逃げ出す口実に隷属の装飾を外そうとするのを防ぐ為だ。
この世界には奴隷制度がある。
一般奴隷は借金奴隷だ。
借金を返せば呪印や隷属の装飾を外してもらう事が出来る。元の世界の「異世界へ行けば奴隷ハーレムを築ける」なんて事が書いてある某漫画を鵜呑みにすると大変な事になりそうだった。
借金奴隷は犯罪者ではないので性奴隷や重労働に扱う事を禁じられている。
住処を用意する事と食事の負担を奴隷の主人が負担する必要がある。それを守れない者は奴隷を持つ事が許されない。
当然、罰もあるのだ。奴隷は他にも存在する。犯罪奴隷だ。
犯罪奴隷は軽い罪を犯した軽犯罪奴隷と殺人など重い罪を犯した重犯罪奴隷に分かれる。どちらも扱い方は基本的に同じで構わない。与える仕事がきついかそうでないの違いでしかないからだ。
例えば、女性の軽犯罪奴隷と重犯罪奴隷に風俗のような仕事が斡旋されたとする。男性客を相手に性行為に及ぶのは軽犯罪奴隷でも重犯罪奴隷でも同じだ。だけど、重犯罪奴隷には性嗜好が偏った者が優先して斡旋される。女性を虐待することを好むような男性とか。
重犯罪奴隷を殺す事を前提に殺しては駄目だがそれは建て前だ。
過酷な労働環境で働けば無理をして死亡するかもしれない状況で重犯罪奴隷が死亡しても罪には問われないからだ。きつい仕事になる程、重犯罪奴隷に優先して斡旋される。もちろん、奴隷に斡旋された仕事を拒否する権利は認められないようだ。
少し脱線したが、隷属の装飾を着ける訳にもいかないので断る事にしたようだ。
勇者が隷属の装飾をやんわりと断ると
護衛の男性:
きさま!何故断るのだ。
大きな怒号が聞こえてきた。
人族の賢者の傍にいた騎士のような護衛が言っているようだ。
勇者:
そんな豪華な物を受け取る謂れはありません。
それよりも僕は元の世界に戻れるのでしょうか?
人族の賢者:
・・・。
またしても沈黙だ。
まぁ、勇者召喚事態が初めての行為だし、元の世界へと戻す方法なんて最初から考えていないはずだ。勇者を異世界から呼んで、隷属の装飾で奴隷のように扱って死んだら別の勇者を呼べば良いなんて考えていそうだから。
護衛の男性:
だったら、無理矢理にでもこの装飾を着けてやる。
先程の騎士のような護衛が速足で近づいて来る。
元々、剣術の心得があるのであっさりと避ける事が出来た。
護衛の男性:
なっ!何故?!
まさか、避けられると予想もしていなかった騎士のような護衛。
また、避ける事が出来た事にも驚きを隠せないようだった。ここからは某時代劇のような展開だった。
人族の賢者:
皆の者。であえ!であえ!
大声で叫び出す騎士のような護衛が言い始めると周りの騎士のような護衛達も一斉に言い始める。流石に曲者だなんて事はなかったので少し残念だ(;^_^A
周りに控えていた騎士達や護衛のような者達がどんどん集まって来る。
人数が多くなるに連れて居場所が・・・。
大きな扉からたくさんの人が入って来ている。
きっとそこから外へと出る事が可能なのかもと思い、大きな扉の方へと騎士達を交わしながら向かう勇者。大きな扉の元へと辿りつくと逃げられると思っていたのだが・・・。
そこには大きな剣を持つ大きな身体していて堂々としている騎士がいた。
男性騎士:
団長。そいつを捕まえて下さい。
そう呼ばれた者は目の前にいる大きな身体をした者だ。
騎士団長:
ほう。こいつが勇者か?
怪訝そうに勇者を見つめると大きな剣を構えた。
勇者は武器を持っていなかった。
武器があれば何とかこの部屋からは逃げる事が出来そうだが、逃げた後の事も考えると苦労しそうな気がする。目の前にいる人物は大きな剣を構えているが、その佇まいを伺うとかなりの強敵と思われる。手合わせしてみないと分からないが十中八九間違いないと思う。
勇者:
こいつを何とかしないとどうしようもないか。
溜息をつきつつ何か武器の代わりになりそうな物を探す様子の勇者。
男性騎士:
グハァ~。
近くにいた騎士から無理矢理剣を奪うと団長と呼ばれた男と向かい合う。
騎士団長:
ほぅ。結構な使い手か。勇者というのも強ち間違いではなさそうだな。
勇者:
ご期待に応えることが出来るとは思わないが、やるしかなさそうなので・・・。よっと。
剣を軽く振って感触を確かめているようだった。
勇者:
しょうがないか。
深い溜息をつき、身体の調子を伺う。
騎士団長:
やる気が出て来たか。殺るからには手は抜かないぞ。
やるが殺るになっているって(;^_^A
勇者は剣を団長と呼ばれた男に向けて構えた。勇者が先に攻勢に出たが、それを団長が身を捻るだけで交わした。
勇者:
やはり交わすか。
騎士団長:
これはどうだ。
大剣を横薙ぎに振るう。
まるで避けてみろかの如く挑戦的な攻撃だ。これを受ける事は出来ない。受ければ弾き飛ばされるだろう。
勇者:
おお。怖。
団長と呼ばれた男の大剣の横薙ぎをギリギリで勇者は避ける。
勇者:
う~ん。どうしようかな。
また、誰かと話しているような素振が見える。
勇者は剣を横薙ぎに振るう。団長と呼ばれた男がそれを受け止め対峙する。グッと力を込めた男は勇者を押し退ける。
勇者:
力任せに・・・。
何度か団長と呼ばれた男と剣を結び何かのタイミングを窺っている勇者がいる。
勇者:
これなら行けるな。
勇者が剣を横薙ぎに勢いよく振るう。
男がそれを受け止め、押し退けるタイミングに合わせたのだ。押し返される力を利用して大きく飛び退くように窓の方へと飛ぶ勇者。
勇者が窓にぶつかるとガシャーンっと大きな音と共に窓が壊れる。
一階の広間のようなところだったらしく勇者は無事に窓を突き破って脱出した。勇者が高い所から落ちなくて良かった(;^_^A
こうして勇者は召喚の儀式の場にいた連中から逃げ出した。
男性騎士:
勇者が逃げたぞ!
大勢の騎士や護衛達はそれぞれが呆然としながら叫び。
騎士団長:
逃げた?
疑いの声を挙げたのは団長と呼ばれた男だった。
何だか物足りなさそうだし、悔しそうでもあった。
勇者召喚の儀式での本当の目的は、召喚された勇者を利用して、当時の竜王サロメ=J=ドラゴを倒すまたは封印する事が目的だった。竜族の頂点に立つ彼を退位させる事は民意を得たとしても不可能だ。
力こそが正義の竜族の間では今の王権を覆す事は出来ない。
ここ数年 サロメ=J=ドラゴの天下だったのだ。歴史上では竜王とは悪王の代名詞であったのだが、本当は人族が各国と協力を得て大きな連合国を作りその実権を人族が握ろうとしていたのだ。
連合国を作って人類が協力して平和な世の中を作り上げようが建て前の目的だ。
他国への侵略する事が叶わない人族の国の首脳陣は、他国の権力も集中する連合国を作り、その実権を握る事で全種族を支配する頂点へと立とう企んでいるがそれが真相だ。
それを感づいた竜王サロメ=J=ドラゴは連合国の樹立には反対していたのだ。
人族は成長が早いのが長所だが各種族の中で飛び抜けた力がなかった。
エルフ族には精霊魔法が伝わっており、魔法の実力も人族の方が劣る。
人族は魔力量がエルフ族よりも少なく、魔力の扱いも長い時を生きるエルフ族の方が有利になる。
エルフ族と精霊族とは同盟に近い形で協力関係にあるから互いに助力出来る。
優秀な武器や武具を作ったり、効果の高い魔道具を作るドワーフ族には戦闘技術は勝っているかもしれないが武器や武具の性能の差が時には戦争では有利に働く。
竜族は言うまでもなく人族に比べると巨大で固い竜鱗に覆われた身体を持つ竜族には叶わない。竜族が吐くブレスも強力で、竜族を倒すと人族の国では英雄扱いされるほどの強力な種族だ。
精霊族はエルフ族と同盟に近い協力関係にあるが、独力でも精霊力は馬鹿には出来ず上位魔法と同等の力を上級精霊でも持っているようだ。
人族の上位魔法と上級精霊の力が均衡を保つため上位精霊の力の強さが伺えるが、妖精族の強さについてはその国の戦力の強大さを人族には認識されていない。
エルフ族と同様に妖精族も精霊魔法を使う事が出来る。
精霊国とは同盟に近い協力関係にある。
これだけで人族のみ単独では他の種族には対抗出来ないのだ。
獣人族は力の強い獣人族、すばやい獣人族など様々にいるが、その一つ一つに人族には対抗出来ない。
実際に獣人族と戦争になった時に疲弊し(多分だが)負けるだろうと予想している。唯一反対するサロメ=J=ドラゴを亡き者とすれば連合国の成立に拍車が掛かる。勇者を召喚し、勇者による力で竜王を最悪でも封印出来たらと思っていたのだ。
この後の事だが、勇者は人族が黒幕であることを暴き、それを全世界へと暴露する。人族と勇者の間で戦争になるが、最後は人族は王城に籠城することとなるが王城には兵士しか存在せず一般人が王城にはいないと分かった勇者は荒業を使い王城を消滅させた。
後に勇者は国境の壁を作り各国家を分断することで戦争そのものが起きないようにする。
大規模な軍隊では国境の壁を飛び超えることは出来ないし、国境を抜ける出入り口は国境の街からしか行けないのでの大規模な軍隊が国家間を移動するのは無理があるのだ。
貿易などで国家の繁栄させるために定期便行路の設置に助力するなど内政チートも行っていた。国境の壁と国境の街が完成した頃、勇者は無理矢理にでも各国家の王族と古の契約を結んだようだ。所々で、歴史の真実が隠されているのは、後の人族への勇者なりの配慮と言った所だろうと僕は思った。
そうして僕は【歴史】と書かれた本を元の場所へと片付けた。
ー補足ー
ステータスの攻撃力:100みたいな表示は敢えて避けています。
ステータスを確認出来る者には実際の能力値が見えています。
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ー投稿中の作品ー
赤の勇者 ~ちっちゃい聖女は伝説の勇者様?~
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