第18話 獣人族の住む国
編集前をご存じの方へお知らせですmm
少し手が加わっています。
翌朝 馬車の集合時間に乗客は集まり、馬車は獣人国へと出発する。
この行路の馬車も王都までの馬車と外見に変化は無い。各国を繋ぐ定期便なので、もっと良い馬車に乗れるかもと期待していたのだが・・・。
圭太:
馬車ではこれ以上は快適に過ごせないのかな?
ロイド:
貴族や王族の乗るような馬車であれば、ルーク様は多少マシですが快適と思われるでしょうね。
元の世界の車などのように快適とはいきませんが・・・。
人族の国の国境の街を出発して、まずは獣人国の街 グラムへと馬車は向かう。国境の街からグラムまでは距離はあるが野営をする程に遠くはないようだ。
馬車が速度をゆっくりと落とし始めた。そろそろ馬の休憩時間のようだ。
馬車が停車すると護衛の冒険者が休憩を大きな声で呼びかけます。
護衛冒険者:
お~い。休憩するぞ~。
馬車を降りても遠くへは行くなよ~。
いつものような呼びかけも聞こえて来た。
乗客たちもゾロゾロと馬車から出て来て、それぞれがそれぞれの場所に座り休憩し始める。僕たちも馬車より外へ出て馬車の近くで休憩を始める。
圭太:
この辺の植物は 人族の国では見かけない物ばかりだね。
人族の国では見かけていた植物や木が獣人国では見かけない。見知らぬ植物や木が獣人国では見るようになる。人族の国では日本で見かけるような雑木林や針葉樹や広葉樹なのに対して、獣人国では見かける植物や木は、まるでサバンナのような植物や木なのだ。
僕はサバンナの植物などを実際には見たこともないが、日本の物とは異なる人族の国の物とも異なる植物などがサバンナと思わせるように獣人国にはあるのだ。
圭太:
象や獅子や縞馬はいるのかな?
ロイド:
この辺には動物はいませんよ。
ルーク様が言われた牙象や獅子は魔物です。
魔物にもよりますが、CランクやDランクの魔物でしょうね。
まるで動物園にでも来たように喜ぶ僕はロイド君に何かいきなり現実へと戻された気分になる。
護衛冒険者:
そろそろ。出発するぞ。馬車に乗れ~。
そろそろ休憩が終わりと思われる時間となって集合と出発の合図が聞こえて来て馬車が再び出発し始める。もう一度だけ馬の休憩に止まった後は獣人国 最初の街 グラムに馬車は到着したのだった。
圭太:
グラムに着いたね。どんな街か楽しみだ。
どんな所か分かるかな?
ロイド:
人族の国との国境と首都ガラハへと繋がる街道の中継の街です。
規模はそこそこ大きな街ですが、特に変わったような所はなさそうに感じますが・・・。
圭太:
それはロイド君から見て、変わった所だよね。
異世界人の僕にとって変わった所かもしれないよ。
それに獣人族なんて見たことないし、食事事情も人族の国がアレだったからね。
この国での食事も気になる所だよ。
街の様子を見ながら宿を取ろうか。
僕たちは街の様子を伺いながらグラムの街並みを歩く。
表通りは街道の街らしく、店先に旅人が好むような物ばかりが目立って売られている。お土産になるような物や保存の出来る飲食物などがメインだった。
武器や防具も表通りで売られてはいるが、獣人族には向かないのか強力な武器や防具には見えない物ばかりだった。人族などの武器を扱う者が予備に使うような多少雑な作りの武器や防具ばかりなのだ。
手入れがしっかりされている訳ではなさそうなので、一通り見ただけで通り過ぎて行く冒険者が多かった。ここにも冒険者がいるので、冒険者ギルドの目印となる大きな剣と盾を探すとギルドと思わしき建物の入り口の傍に大きな剣と盾があった。
定期便で到着した護衛だった冒険者たちがギルドの中へと入って行くのが見えた。この冒険者たちは、この街の近くにあるダンジョンが目的地だそうだ。この街で護衛を終える冒険者がギルドで護衛の終了を報告するのだ。
この街から護衛が入れ替わるそうだ。
定期便の護衛の仕組みはこうだ。
【首都から西の国境までの行きの便】
【西の国境から首都までの戻り便】
【東の国境から首都までの戻り便】
【首都から東の国境までの行きの便】
合計四本の定期便の行路がある。
【人獣の国境】から【獣人国の王都】までは六日間。
【獣人国の王都】から【獣エルフの国境】までも六日間。【獣人国】を通り抜けるのには十二日必要になる。
世界の国家は、【人族の国】→【獣人国】→【エルフ族の国】→【竜王国】→【ドワーフ族の国】→【妖精族の国】→【人族の国】の左周りで世界一周する。
【人族の国】と【獣人国】の国境の街は【人獣の国境】
【獣人国】と【エルフ族の国】の国境の街は【獣エルフの国境】
【エルフ族の国】と【竜王国】の国境の街は【エルフ竜の国境】
【竜王国】と【ドワーフ族の国】の国境の街は【竜ドワフの国境】
【ドワーフ族の国】と【妖精族の国】の国境の街は【ドワ妖の国境】
【妖精族の国】と【人族の国】の国境の街は【妖人の国境】
このようにそれぞれの国名を名付けた国境で呼ばれるそうだ。
ここは人獣の国境だから【人族の国】と【獣人国】の間の国境って事になる。
これは他の国でも同様のことなので一国に十二日必要となると世界一周するには六国あるので七十二日掛かる計算になる。馬車の稼働は一日十時間だから720時間で世界一周することが出来る。時速にすると五十五キロぐらいだから、外見は普通の馬車に見えるが元の世界の車と同じぐらいのスピードで移動している事になる。
護衛のメインとなる四組の冒険者と途中の街や町で乗り換えする四組の護衛する冒険者との組み合わせで行われている。護衛のメインとなる冒険者はこの内の首都から国境または国境から首都までを通して護衛する。この区間は六日ほどの日程があるので国境または首都へと到着すると他の護衛と入れ替えするのだ。
途中で乗り降りする冒険者の護衛は国境から首都または首都から国境までで護衛の人数が減らないように手配されるようだ。この街の近くにもダンジョンがあるそうで気にはなるが、まずは首都ガラハへと向かうことにする。
冒険者ギルドでお勧めの宿とお勧めの料理などを聞き、今夜はそこで夕食を食べ翌日に備える。この街での食事は肉料理がメインだった。例の黒パンや野菜の盛り合わせなどはあるが肉料理が殆どだった。
肉食系の動物の姿の獣人族なら肉料理は理解出来るが、元の世界で草食動物だった獣人族でさえも肉料理をたくさん食べるのには少々驚きを隠せないでいた。牛や山羊や羊といった獣人族が肉料理を食べるのだ。それも三十センチもあろうかという肉の塊に齧り付いて食べているのだ。
僕が呆気に取られていると
ロイド:
彼らも人ですよ。
人だから肉や野菜を食べるのは間違っていません。
ルーク様の住んでいた世界では肉を食べない動物もいたでしょうが、それはこの世界でも同じですよ。
圭太:
この世界で魚料理は殆ど見かけないけど・・・?
ロイド:
この世界は南北でしか食べられる魚は捕れません。
南部地方では川魚が北部では海魚が捕れます。
南部や北部から魚を持ち込もうとすれば約二十日ぐらいかけなければ商売することも食べることも出来ません。それも向こうへ依頼してからの日数が約二十日なのです。
こちらで依頼して往復しようものなら約一ヶ月以上も掛かっていまします。
魚は生のままでは日持ちしませんから長期保存が前提で加工済みの魚しか食べられない中央では、魚料理はかなり高価な食べ物ですよ。
圭太:
魚が高価だから肉料理が定期便の行路付近では多いんだね。
お腹がいっぱいになったので宿へ戻ることにした。
翌朝
いつものように馬車の集合場所に乗客たちは集まり、いつものように護衛の冒険者は声を掛ける。そんな光景はもはや日常の光景となった或る日の出来事だ。馬車はいつも通りに定期航路を走る。今回の護衛には獣人族の冒険者も加わっている。
圭太:
おい。【のじゃ幼女】。
何でお前がここにいるんだ?見つけたら斬ると言ったぞ!
のじゃ幼女は何も聞こえないのか何も言わない。
青い髪の幼女:
・・・。
・・・ひ
圭太:
ひ?
青い髪の幼女:
人違いじゃないかの?妾はお主など知らぬn・・。
最後は、はっきり聞き取れなかったが【のじゃ】と言ったように聞こえた。
今は馬車の中だし、刀剣で優しく説得も出来そうにないし、どうしようかと迷っているとふと良い案を思いついた。
圭太:
あの。僕。ここで降ります。
馬車の移動中に降りることを提案し降ろしてもらうことにした。
そっとのじゃ幼女に魔法を掛けて、馬車の扉を開けて飛び降りた。
青い髪の幼女:
待つのじゃ。
幼女の叫ぶ声が聞こえたがストーカーに待てと言われても逃げるしかない。
それに待てと言われて待つような僕ではない。
圭太:
じゃぁね。のじゃ幼女。
大きく手を振って別れを告げた。
のじゃ幼女も同じように飛び出そうとするが自身が、この場から動けないことに気付く。
青い髪の幼女:
何なのじゃ?動けないのじゃ?
動こうと足掻いているが動けるはずがない。
【拘束魔法】の魔法でのじゃ幼女の足と席の足とを魔法で縛り付けたのだから。それも魔力を多めに込めて、席に縛り付ける効果が大きくなるように【拘束魔法】を使っているから質が悪い。
圭太:
【不可視】
のじゃ幼女に見つからないように姿を隠す。
のじゃ幼女も馬車の中で竜の姿になれる訳でもなく、竜の力を使ったとしてもルークの【拘束魔法】から脱出出来るとも思えなかった。そう、のじゃ幼女は諦めたのだ。
青い髪の幼女:
悔しいのじゃ~。
叫び声だけが馬車の中で響く。
ルークの方はというと【不可視】で姿を隠し、気配と魔力を極力放出しないようにする。すると、『【気配遮断】と【魔力遮断】のスキルを獲得しました。』というアナウンスが頭の中に流れ、スキルを覚えたことを自覚したのだった。
圭太:
ロイド君。
のじゃ幼女から逃げたのは良かったけど、これからどうしようか。
次の中継地点って遠いよね?
元に戻った方が近いかな?
ロイド:
次の中継地点の方が少しだけ近いですが、あの幼女を無視された方が良かったのでは?
圭太:
それは出来ないよ。
もし、偶然【のじゃ】が馬車に乗って来た所を見つけたなら無視するのも仕方ないと思うけど、【のじゃ】は空を飛べる訳だし馬車に乗る必要性を感じないよ。
別れ際の最後に『待て』と言った訳だしね。
それに、【のじゃ】【妾】【竜族】というキーワードから、おそらく竜族の王族のような気がするんだ。
今は王族と関わらない方が良さそうに思うんだ。
何かの拍子に異世界人とバレないとは限らないしね。
だから、僕は出来るだけ揶揄う程度に抑えて、必要以上に関わらないようにしようと思っているけど・・・。
ロイド:
それも必要だとは思いますが、【のじゃ幼女】が【のじゃ】となったり、揶揄うことが前提なのはどうしてでしょうか。
圭太:
・・・グハァ
両手を地面につけた。
ロイド:
・・・。
ロイド君の鋭い突っ込みに何も言えないよ(;^_^A
確かに、【のじゃ】と短縮するようになったし揶揄うのも面白いんだけどね。
そろそろ、馬車も見えなくなりそうだし【のじゃ】に掛けてある魔法を解除しないとね。多めに魔力を使ってあるから自然に解けるのを待っていたら1週間も拘束されるのは可哀そうだしね。
魔法を解除する意思を魔法に向けて念じる。
僕なら、見える範囲であれば魔法解除出来るから【拘束魔法】を解除した。馬車から飛び降りてからは、結局 街道を馬車と同じ進行方向へと歩いて進んで行くことにした。道中は何も起きなかったし、馬車とすれ違うこともなかった。
評価やブックマークをしていただけると励みになります。
ー投稿中の作品ー
赤の勇者 ~ちっちゃい聖女は伝説の勇者様?~
こちらの作品も宜しくお願いしますmm