第13話 異変の始動
旅立つ理由と目的
編集前をご存じの方へお知らせですmm
少し手が加わっています。
僕はこの街から離れる事にしました。
そう考える理由は二つある。
一つ目は気軽に散歩も出来ない事。
僕が歌を歌いながら森の中を散歩も出来ない危険な場所だからだ。気軽に行えば魔物の暴走が起こるからね。街の人から僕が危険人物扱いされそうな案件だからね。
歌を歌えば魔物の暴走って安心して暮らせないしね。
二つ目は異世界からの転移者や転生者の事について調べてみたいと思ったからだ。初代勇者は異世界人である可能性が高いし、他にも異世界人の形跡を探したい。特に食事事情を持ち込んでいてくれれば助かるからだ。
はっきり言えば、不味い食事には耐えられない。
中には美味しい食事もあるが基本は薄味だ。島での生活では食事に苦労しなかったのだが、移動中に食べる保存食が特に不味い。
マルチドでは、冒険者と街の住民の間で微妙な空気の隔たりがあるので、商人は商売柄仕方なく対応しているが、一般の人は冒険者を避けているように見える。まぁ、荒くれ者の多い冒険者を避けているんだけどね。
なので、飲食店の主人に大量の料理を注文しても断られる。
この街が辺境である事で限りがある食料を個人の都合ばかりで大量には優遇する事が出来ない。まぁ、常識の範囲内であればOKという事だ。
常識を疑われたよ。トホホ。
街を離れるにあたって関係各所へお挨拶は当然の事だ。
冒険者ギルドに行き、受付のお姉さんや買取のお姉さんにこの街を離れると報告をする。
女性受付:
ルークさんは冒険者だから仕方ないですね。
これから寂しくなりますね。
テンプレ?と疑いたくはない言葉だけに少し寂しく思う。
ギルマスにも挨拶だ。
ギルドマスターにも何度も会っていたので一々正式な名で呼ばなくなった。もう何度目か分からないがギルマスと愛称で呼んでいる。まぁ、他の人の真似だけどね(;^_^A
圭太:
ギルマス。
今度この街から離れる事にしました。お世話になりました。
ギルドマスター:
今度は何処の街へ行くんだい?
高ランク冒険者が行くから連絡しとかないとな。ニシシシ
何か思案顔で言うので「秘密です」とだけ答えておくことにした。
何か嫌な予感がするのだ。良からぬ事を企んでいそうだ。
例えば、森で歌えば魔物の暴走が起こるなんて事を他の町のギルマスに伝われば面倒な事になりそうだからね。
まだ、何処へ行くのか決めていないので受付のお姉さんたちとかに色々聞いてみようと思う。旅して来たこの街へ来たなんて冒険者にも聞いておこうかな。
話によると、候補は三つに絞られた。
①この国の首都である王都
王都は人が多く集まり、色んな食事や食材を楽しめる。武器や防具から始まり、魔道具なんて辺境に比べると不便はないらしい。竜の住まうダンジョンが王都にある。このダンジョンは竜種限定のダンジョンで竜鱗などが手に入る。
でも、竜種は強いので危険度だけを見たらこの国NO.1という噂だ。
②港街 ハエル
行っても何も生えないそうだが、海産物の宝庫らしい。エビやカニや貝などや焼き魚なんて食べる事が出来る。この辺の川魚よりは海の魚の方が美味しいはず。
まともな魚介類を最近食べていないので港街もありかな。
③勇者の子孫が集まる街 トーヨ
おそらく【東洋】の事と思うが、異世界に来てトーヨってないと思うな。転生者や転移者など勇者の子孫と名乗る人たちが異世界文化を利用して自分たちの手で開発した街だそうだ。こっちの世界の住人には変わった食事文化、馴染めない魔道具なんかがあるらしい。
食べ物については聞けなかったが、その街で売られている『ドール』という物は何でも人の言葉をしゃべるらしい。人の言葉というのは人と会話するという意味らしくドールの凄さが伝わってくる。
でもこれって、話掛けたら答えてくれる某AIを人形の魔道具にした物なんじゃないかな。
「ヘイ。〇〇」と言えば答えてくれそう(笑)
ただ、勇者の子孫が集まる街だけは場所が特定出来なかった。
どうやら街の存在は噂されているが、実際には具体的に何処にあるのかまでは分かっていないそうだ。
圭太:
ロイド君。この街は?
ロイド:
【勇者の子孫が集まる街 トーヨ】は確かに存在します。
ですが、勇者の子孫が初代勇者の子孫かどうかは怪しいです。
今の住人に勇者の血が受け継がれているどうかさえも疑わしいです。
今の住人の殆どは転生者や転移者の子孫ですからね。
圭太:
転移者が勇者の子孫を名乗ったって事かな。
自分たちは黒髪だしって理由でならあり得るかもだし。
黒髪の怪物の黒髪はこの世界には存在しないから便乗したって事か。
初代勇者がいたのは結構前の話のようだし誰も違うとは言えないしね。
ロイド君は何処にあるのか知っているの?
ロイド:
はい。知っています。
ですが、禁止事項に含まれるので今は言えません。
圭太:
また禁止事項かぁ~。
住人や旅人は知っているのに禁止事項か。
ロイド:
禁止事項は古の契約に準する物や神様との約束なので、ルーク様の問いにはお答え出来ません。
ルーク様が禁止事項に触れる内容及び行為への手助けは神様及び古の契約によりルーク様へお伝えする事は禁止されています。
遠まわしな言い方だ。
何処かの行政が言いそうな言い回しだね。
圭太:
神様が僕を召喚した理由に繋がるって事かな。
ロイド:
・・・。
どうやら図星だったようだ(;^_^A
圭太:
ロイド君のお勧めは何処かな?
ロイド:
獣人国を経由してエルフ族の国です。
圭太:
突然、獣人族とかエルフ族とか言われても困るよ。
一体どうしてエルフ族の国なの?
ロイド:
ルーク様には精霊族や妖精族を除く他の種族の国を見てもらいたいのです。
それも出来るだけ多くの種族と出会っていただきたいのです。
今は詳しくは言えませんが、勇者が召喚される予兆があるそうでルーク様以外に勇者に対抗出来る手段が神様が言うにはないそうです。
ルーク様には各種族から戦闘技術を学んでいただく事と転移魔法を取得していただく事が各種族と出会う事の目的です。
転移魔法は移動が便利になりますからね。
あちらこちらへと行きたいルーク様には都合が良いかもしれませんね。
圭太:
勇者っていつ召喚されるの?
ロイド:
・・・。
少しの沈黙の後、決心したようにロイド君が語り出した。
ロイド:
神様が言うには【百年~三百年後】との事です。
圭太:
無理だよ。僕はそんなに生きて行けないよ。
人間は長くても百年ぐらいだよ。
この世界での栄養や医療などを考えると六十~七十歳ぐらいが妥当じゃないかな。
仮に百年後に勇者が召喚されても僕はお爺さんなはずだし戦闘なんて現役相手には無理だよ。
ロイド:
ルーク様は、おそらく現役ですよ。
圭太:
えっ?どういう事?
ロイド:
神様が約百年~三百年後ぐらい予想されて何の対策もしていないとは思えません。
私の予想ですがルーク様をその対抗策として召喚されたと思われます。
おそらくは、ルーク様が三十歳から四十五歳ぐらいまでには二度目の勇者召喚が行われると思われます。
それまでにルーク様が十分対抗出来る能力アップとスキルのレベルアップが出来ればと神様は試算されています。
簡単に言うと今のルーク様が三倍ほど強くなった状態を望まれています。
勇者〇〇様に近い数値となりますが、果たして対抗出来るかどうかは私には分かりません。
今のままのルーク様では今よりも三倍ぐらいも強くなった状態を超える事はおそらく出来ないでしょう。余裕を持って勇者を迎え撃つには今より四倍ぐらいの強さを目指していた方が私としては安心です。
次に、ダンジョン攻略で大幅な能力アップが期待出来ます。
攻略されたダンジョンは休眠期間に入り、休眠期間は約十年で再び活動期間へと移行します。
これを何度か繰り返して圧倒的な強さを身に付けて貰うしか方法はありません。
理想は竜種のダンジョンを何度か攻略されることですが、人族の国のダンジョンだとダンジョン攻略自体が目立つ上にダンジョンの恩恵を受けている人族の事も考えると攻略しない方が良いと考えます。
その点では他の種族のダンジョンでは休眠しても住民が人族ほど困るような事はありません。
何事にもやり過ぎという物もありますので、全てのダンジョンが休眠するような事にならないようには調節が必要です。
・・・。
最後はジト目で見て来た。
この眼は、まるで、お前ならやり過ぎそうだなんて言ってそうな目だ。
圭太:
だから、エルフ族の国なんだね。
何をしたらいいの?
ロイド:
まずは、獣人国で戦闘技術を学んでいただきます。
圭太:
どういう事なの?破〇流剣術では駄目って事?
ロイド:
そういう訳ではありません。
破〇流剣術は対人戦には向いていないように感じます。
獣人特有の戦闘技術をルーク様に応用してもらう為です。
私の予定では破〇流剣術に幅が広がります。
武器を失い素手になった時にも困らなくなりますからね。
エルフ族の国では転移魔法を覚えてもらう予定ですが、エルフ族が素直に教えてくれるかは分かりません。
エルフ族と勇者は因縁がありますから、おそらくは無理でしょう。
ルーク様なら何とかなりそうな気もします。
圭太:
どうして急にこんな事になったの?
勇者に関してや神様が僕を召喚した理由とかは守秘義務があったんじゃないの?
ロイド:
時間が足りなくなったそうです。
神様の計算では間に合う算段でした。
ですが、予定外の事が起こり時間が足りなくなったそうです。
私も予定の範囲内と思っていたのですが・・・。
圭太:
予定を変更しなければならない事態が起こったって事か。
ロイド:
そのようですね。私も詳しくは知りませんが・・・。
圭太
明日からは本格的な旅の準備をして獣人国へ向かおう。
僕たちは獣人国へ向かう旅準備をする。
獣人国へ行くには結局王都を経由するしかないので立ち寄って行く事にした。マルチドから王都までは馬車で六日程掛かる。道中で補給や宿泊して二つの村へと寄るルートで行くようだ。
元の世界のように街道は整備されていないし馬車もサスペンションが効いている訳でもないので大変そうだな。比較的安全なルートのようなので盗賊や魔物も出会う比率は少ない。
人や荷物を運ぶ交通に便利に開発された定期便なので盗賊が襲ってもあまりお金にならないので比較的少ないようだ。金持ちは定期便のような馬車を使わないからね。
刀剣は珍しいから相変わらず鉄の剣だ。防具の方は無人の鎧を使っている。見た目は普通の鉄の鎧にしか見えないからね。皮鎧の方が動きやすそうと言われたが、この鎧の方が実は動きやすいから使っている。
それにこの防具に慣れておかないと後々に厳しい事にもなりそうだしね。
破〇流剣術以外の対人向けの戦い方をマスターしないと厳しい戦いが待っているかもしれない。剣術を使って対人向けにある程度はどうにか出来ないときっと話にならないとも思う。
対人向けの秘技を覚えること。
今まで以上に強力な秘技も必要となって来るかもしれない。現在の秘技の練度や威力アップを図るしかないかな。
食料の方も飲食店の店主に頼み込んで毎日二食だけ余分に都合して貰えるようになった。二食分を魔法のバッグに入れて、移動時に食べるように保存している。移動時の食事さえ乗り切れば街での食事は何とかなりそうだし。
素人にでも出来る面白料理なんて物を教えるのが礼儀かと思うが、そんな方法は知らないのでダンジョンや魔の森で見つけた高級食材を提供して、どうにか都合して貰えるようになったんだ。
まぁ、僕が異世界人なんて事は知らないから普通の人が情報提供したぐらいで店のメニューに加えたりはしないしね。この街を攻め落とすなら兵糧攻めでいいと思うな。
攻め落とさないけどね(笑)
旅の小物系の準備は前に準備した時のままだし、食料や装備系の準備だけでいいはずだし、他に必要そうな物も用意しているし、宿の主人に出発に日を伝えて終わりかな。
翌日の朝に宿の主人に挨拶をして旅立つ。
圭太:
長い間、お世話になりましたmm
男性店主:
王都に行くんだってな。気を付けて行けよ。
挨拶を済ませ、馬車の待合所へと向かい馬車へと乗り込む。
男性御者:
王都に向かうヤツはいるかぁ~?もう出るぞ~。
大声で叫び他の乗客がいないか声を掛ける。
マルチドからの定期便とは言え、護衛の冒険者はいる。馬車の周りを護衛が歩き馬車が出発する。ゴトゴトゴトと出足は遅く、ゴロゴロとだんだん走る音が変わって行き馬車の速度はドンドン早くなっていくのだ。冒険者が走って着いて行くなんて事はなく、人が歩く速度よりは少し早い程度の速度で王都まで向かうらしい。
予定では
【一日目】 夜は野営して食事を各自で取る。
【二日目】 村で宿泊と村では食料などを補充出来るらしい。
【三日目】 一日目と同じ野営。
【四日目】 二日目と同じで村で宿泊と食料などの補充。
【五日目】 一日目や三日目と同じ野営。
【六日目】 昼ごろには王都に到着するらしい。
途中で休憩があるそうだが、休憩はカウントしていない。
道中に魔物や盗賊などが出れば規模次第では遅くなるし、トラブルやアクシデントでも起これば予定よりも遅くはなることもあるだろうしね。
評価やブックマークをしていただけると励みになります。
ー投稿中の作品ー
赤の勇者 ~ちっちゃい聖女は伝説の勇者様?~
こちらの作品も宜しくお願いしますmm