第10話 トラブルと因縁
編集前をご存じの方へお知らせですmm
少し手が加わっています。
いつもの場所へと向かい魔の森の中へと足を踏み入れる。
探知系のスキルが働いているが何の気配も感じなかった。
圭太:
・・・。
ロイド:
ルーク様。どうかなさいましたか?
圭太:
何かいつもと違うような感じがするんだ。
ロイド:
では、原因を探ってみましょうか。
いつもとは違いロイド君が先導するように森の中を進んで行く。
どうやら僕達は森の奥地へと足を踏み入れたようだった。突然森の雰囲気がガラリと変わり濃密なモンスターの気配が立ち込めて来ると複数の人が複数のモンスターと戦っているような気配がする。
正体不明:
グギョォォォォォォォォォォ
聞きなれない雄叫びが聞こえて来たかと思うと戦闘の音が激しく聞こえて来た。
圭太:
見に行ってみようか?
ロイド:
邪魔すると悪いのでは?
好奇心に負けて、こっそりと覗きに行く事にした。
そこでは、三体のオーガと戦う一組の冒険者パーティーがいた。【氷の槍】と叫んだと思うと大きな氷の槍がオーガの顔面目掛けて飛んで行く。
一方では、大きな盾を構えた男が『フン』とオーガの攻撃を盾で受け流した。
攻撃を受け流されたオーガは踏鞴を踏むと、そこへ前衛の剣士の剣が撃ち込まれる。
男性冒険者:
このー!
オーガ:
グギョ
程なくしてオーガを倒した冒険者パーティはオーガの解体を始める。
オーガの素材はBランクの魔石と大きな牙だ。少し疲れているようだが問題なくオーガ三体を倒している様を見て、冒険者パーティーだとあんな風にモンスターを相手に戦うんだとパーティによる戦闘に感心した。
今まで連携を取ってモンスターを狩るなんて事がなかった僕には新鮮に感じた。
冒険者の先輩たちの戦いが見れたので挨拶もしないでそっとその場を離れる。
先輩冒険者パーティーの戦闘を勝手に見学した後 僕の探知がモンスターの存在を知らせて来る。
圭太:
ゲッ。
そこには、透明な糸を張って獲物を待ち構えている大きな蜘蛛がいた。
圭太:
あれで、存在を隠しているつもりなのか~(;^_^A
身を隠している蜘蛛は大きな身体を隠せてはいない。
獲物を待っていますよと言った具合で丸見えだ。大きな蜘蛛は体長が三メトルほどあり、それが空中い浮いているのだから違和感しかないのだ。
圭太&大きな蜘蛛:
・・・。
大きな蜘蛛と目が合った気がした。
大きな蜘蛛:
キャシャー
圭太:
【炎の槍】
大きな蜘蛛が威嚇してきたが炎の上級魔法で焼き払う。
大きな蜘蛛は焼き焦げ、その身体の殆どが炭化していた。魔石だけを取り、更に奥地へと向かう。森に来た時から感じている「いつもと違う感じ」の正体はまだ掴めていないのだ。
大きな蜘蛛でも先程のオーガでもないのだ。
少し開けた所に出ると『グロロロォォォォ!』と大きな叫び声のような声が聞こえた。
それと同時に先程まであった動物の気配が一斉に消え、周りがシーンと急に静かになった。キーンとする耳鳴りで耳が痛いが大きな気配の主を見る。
男性冒険者:
に、逃げろ~。
ど、地竜だぁ~!
叫びながら逃げて来る先程の冒険者パーティーではない別の冒険者パーティーが慌てた様子で逃げて来る。
圭太:
地竜?
この声の主が地竜と聞いて疑問が積もる。
僕は地竜と聞いて、島での訓練で倒したドラゴンを想像していたのだが、この冒険者パーティーが指す地竜はまるで元の世界でいう【恐竜】なのだ。外見はサイを大きくしたような感じで、固い鎧のような外皮に覆われている。
ドドドドドドドと大きな音と共に周りにある木をなぎ倒しながら爆走して来る。
バギバギバギバギと木がなぎ倒される音も聞こえてきた。このタイプのモンスターは突然襲って来るようなタイプではなく無意味に人や動物などを襲ったりはしないはずだ。
何か原因がないか知るためにも「何かしたの?」と聞いてみる。
男性冒険者:
し、知らない。
き、急に襲って来たんだ。
た、助けてくれ。
十分、怪しすぎるよね(;^_^A
冒険者パーティーは僕に【恐竜】を押し付けて逃げていく。
圭太:
はぁ~。仕方ないかぁ~。
彼らには【恐竜】は倒せなかったようだ。
おそらくだが、この【恐竜】の大きな角が目当てなのだろうと予想する。元の世界でもサイの角やゾウの牙の欲しさに密漁され、密漁されないためにサイやゾウは保護されているぐらいだ。サイに似ているのだから、その角を狙った冒険者がいてもおかしくはないのだ。
圭太:
【炎の槍】
極力、魔力を抑えた魔法を使う。
こちらに注意を向けるだけで良いのだ。
圭太:
こっちだよ。
人の言葉が分かるかどうか分からないけど挑発気味に声を掛ける。
【恐竜】は僕に気付き、こちらに向かって突進して来た。
圭太:
【光の矢の雨】
たくさんの光の矢が雨のように降る魔法を絨毯爆撃のように使う。
ドドドドド・・・
眩しい光ととともに激しい音も聞こえる。
【恐竜】は突然の出来事に驚く、軽く目を回してしまった。
意識がはっきりしないだけで朧気にキョロキョロと周りを見ている。
圭太:
ロイド君。僕にはモンスターの言葉が分からないので【住処にお戻り】って伝えて。
ロイド:
畏まりました。
ロイド君と【恐竜】が何やら話をしているように見えたが【恐竜】は元の住処のある方へとゆっくりと歩み出した。【恐竜】の姿が見えなくなった頃、先程の冒険者たちが戻って来て自分たちの獲物である事を主張してきたのだ。
男性冒険者:
おい。ヤツはどうした?あれは俺たちの獲物だぞ。
圭太:
あのモンスターから逃げていたら、気が付くとここにいただけです。
男性冒険者:
ウソを言うな!魔法を使った音がしていたぞ。
ヤツを倒したんなら角をよこせ!
無茶苦茶な主張をして来る。
そもそも、冒険者が倒したモンスターは倒した冒険者の手柄だ。モンスターを押し付けられた上に素材まで渡せと言う主張は本来なら認められない事なのだ。おそらく、彼らは高ランクの冒険者なので低ランクの僕の主張する事よりも彼らの主張の方が冒険者ギルドも信じる可能性が高い。
圭太:
一度、街へ戻って冒険者ギルドに立ち会ってもらいませんか?
僕は事実を言ったまででモンスターなんて倒していませんよ。
ギルドカードにはカードの持ち主がどんなモンスターを倒したのか自動で記録する仕組みになっている。どういう原理で記録出来るのか分からないが、モンスターを倒したなら記録が残るのだ。
こうして、彼らに僕が逃げないように周りを囲まれながら街へと戻るのだった。
例の冒険者と冒険者ギルドへと戻って来た。
受付のお姉さんに事情を説明しようとするが、
男性冒険者:
ギルドマスターを呼んでくれ。
コイツに獲物を横取りされたんだ。
そう主張する例の冒険者を見て、受付のお姉さんは奥に控えている他の職員にギルドマスターを呼びに行かせる。例の冒険者は、Bランク冒険者パーティー【銀の狐】だ。
Bランク冒険者パーティーが獲物を取られたと言っているのだから、周りにいた冒険者たちの注目を浴びる事となる。見たこともない十代と思われる少年がいっしょにいるのでコイツが獲物を取ったと周りの冒険者たちも思っているのだろう。何やら騒がしくなって来た。
ギルドマスターが二階から降りて来ると同時に例の冒険者は
男性冒険者:
コイツにホーンサウルスの角を横取りされた。
獲物を返せと言っても返さないのでこうして冒険者ギルドまで連れて来た。
ギルドマスターの権限でホーンサウルスの角を返すよう言って欲しい。
あの【恐竜】は、どうもホーンサウルスという名のモンスターのようだ。
ホーンサウルスは地竜の仲間でドラゴンと違い空を飛ぶ事は出来ない。怒らせると手に負えなくなるので脅威度は高くAランクに相当する。
普段は子供や家族を外敵から身を守る以外に攻撃する事がない温和なモンスターなのだ。その額に生える大きな角が貴族の間では高額な取引され高価な素材を持つモンスターとして有名なのだ。
ギルドマスター:
ほう。コイツがあのホーンサウルスを倒したというのか?
ギロっと僕を見つめて来るが、ギルドマスターの厳つい顔が更に怖く見える。
まるでヤ〇ザだと心の中で突っ込んでおくことにした。
ロイド:
・・・。
ロイド君。ジト目が痛いよ(;^_^A
ギルドマスター:
それなら、コイツはAランク冒険者になるのだが、その前に言っておく事がある。
コイツは数日前に冒険者登録したばかりの新人だ。
その新人にBランク冒険者が獲物を横取りされたって噂になってもいいのか?
男性冒険者:
え?コイツは数日前に登録したばかりの新人だと言うのか?
そんな事はあり得ないだろう。コイツは魔の森奥地にいたんだ。
あそこは新人が踏み込める領域じゃない。
ギルドマスター:
コイツが何故そんな所にいたのかは分からんが、お前たちは新人冒険者がホーンサウルスを倒せるとでも言うのか?
先程見たがコイツのギルドカードには討伐の記録もなかったぞ。
男性冒険者:
う、ウソだ。コイツがホーンサウルスと戦う所をみていたんだ。
間違いないコイツはホーンサウルスを倒したんだ。ギルドカードに細工して誤魔化しているに違いないはずなんだ。
ギルドカードに細工なんて出来るはずがない事ぐらい例の冒険者にも分かっている。ホーンサウルスが倒され、何処かへと消えてしまったと主張するしかないのだ。
ギルドマスター:
おい。コイツらの言っている事は正しいのか?
圭太:
僕は例の冒険者にホーンサウルスを擦り付けられました。
僕には倒せそうにないので派手な音と光でモンスターの注意を逸らしている間に逃げて来た所に例の冒険者が戻って来て獲物を返せと言っています。
現に僕の持ち物には角はありません。
自分のバッグから大きな蜘蛛の魔石を出す。
バッグの中も自由に見てよという具合にギルドマスターにバッグも手渡す。
ギルドマスター:
それに、コイツがどんな戦い方をするのかわからねぇが職員の報告ではスキルは異常な程優秀だが、本当に数日前に冒険者登録を行った新人だ。仮にもAランクのモンスターがコイツに倒せるんなら、今頃はホーンサウルスの角なんて価格が暴落しちまうぞ。それぐらいコイツは弱い。
う~ん。何だかなぁ~(;^_^A
正直に弱いって言われたよ。トホホ。
ギルドマスター:
まだ、納得しないならアレを使うぞ。
アレを使えばどちらが本当の事を言っているのか分かるんだが良いのか?
男性冒険者:
おい。いくぞ。
例の冒険者はギルドマスターの強気な態度に負けて冒険者ギルドから出て行った。
ギルドマスター:
おい。魔の森奥地にいたそうだが、なんでそんな所にいたんだ?
今回は運良く助かったが一歩間違えば死んでいたかもしれないんだぞ。
お前には無理の領域だ無理はするな。
こんなお小言を頂いたがそれ以上は何も言われなかった。
ギルドマスターは二階の自室へと戻って行き、僕は受付のお姉さんの所へ行くと大きな蜘蛛の討伐の報告とその魔石を買い取ってもらった。
例の冒険者との騒動から数日が経った。
スキルのレベルを調節しようか迷っている。モンスターの討伐履歴をギルドに把握されている以上、意識してスキルのレベルを調節していかないといずれバレるだろうね(;^_^A
例の冒険者との騒動を起こした日に僕が魔の森奥地にいた事についてギルドから呼び出しがあった。大きな蜘蛛の討伐や魔石の買取のみで他の魔石やモンスターの討伐の記録がなかったから迷って奥地にいたのではなく自ら望んで奥地へと行ったのではないかと疑われたからだ。
Eランク冒険者は近層までしか行ってはならないのだ。
近層、中層、深層を超えなければ奥地までは行けないのだが、近層にいる者は森の雰囲気が急に変化する中層にまで辿り着けば引き返すのだ。
近層は緑色の植物が多く生息している。
中層は黄色の植物が多く生息している。
これだけでも中層へと踏み込んでしまった事が分かるはずだが、モンスターに追われてなんて事も考えると更に奥の深層までは足を踏み入れてしまったとまでは考える余地はある。
深層は赤色の植物が多く生息しており深層へ踏み入れただけで直ぐに分かり、低ランクの冒険者では帰って来れない危険な場所だ。
その深層を超えた奥地は今までよりも強いモンスターの住処となっており低ランクの冒険者では出会っただけで命がないと思えとまで言われるのだ。
そんな奥地でホーンサウルス(Aランク)と出くわし逃げ切れた。
特殊なスキルを持っているとか能力がズバ抜けていて評価と実力が一致しない者ならあり得ない話ではない。
だが、ルークは新人では考えられないスキルを持っているが、高ランクの冒険者ぐらいが持っていても不思議ではないスキルを持っているだけなのだ。
数日前に冒険者登録したばかりの新人が奥地へ赴き、Aランクのモンスターから逃げ切れるなんて事は普通ではあり得ない。
ギルドマスターに呼ばれて優しくお話された。怖い顔が更に怖い(;^_^A
ギルドマスター:
何も言うつもりがないんだな。
では、身体に聞くしかないようだな。
訓練場へ行くぞ。
訓練場でギルドマスターに僕は木剣を手渡される。
お互い木剣を構えて対峙する。
ギルドマスター:
では、いくぞ。
合図と共にギルドマスターの攻撃を受ける。
一合手合わせしただけだがギルドマスターに有無を言わさずギルドマスターの部屋へと拉致された。
ギルドマスター:
てめぇ。一体どうやっているのか一つも分からねぇが実力を隠していやがるな。
俺は、元冒険者で恥ずかしい話だが【英雄】と呼ばれた事もあるぐらいだ。
そんな俺の一撃を躱す事なく受け止めやがった。
数日前に登録したばかりの新人には受け止められない一撃をだ。
たった一合受け止めただけで、これだけの事が判出来るのだから【英雄】の名は伊達ではないようだ。
圭太:
・・・。
ギルドマスター:
今回の件も、擦り付けに腹が立って獲物をワザと逃がしやがったな。
まぁ、俺にはどうでもいいけどな。
どうでも良いなら呼び出さないでよ(;^_^A
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