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怪異奇譚  作者: 春夏秋冬
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てるてる坊主

 梅雨の季節に入った積雨のとある日、2人の子どもが買い物袋を手にはしゃぎながら歩いていた。長靴を履きカッパを着ているからか少し大きめな水溜まりも気にせずに足を入れ、水飛沫にキャッキャッと笑っている。

 程なくして家に着いたのだろう、はしゃぐのを止めてドアノブに手を伸ばし中に入った。

 長靴とカッパを脱ぎ買い物袋から商品を取り出して一目散に部屋に入る子ども達。親はいないのか子ども達以外の声は聞こえない。

 部屋の天井を埋めつくし、それだけでは飽きたらずに至るところに吊るされているのはティッシュで作られたてるてる坊主だ。至るところに吊るされて隙間がほぼない部屋で2人の子供はまだてるてる坊主を作るのを止めない。

 再び買ってきたティッシュが無くなるまで作られたてるてる坊主は最早吊るされることもなく山となっている。


 「やまないね。」

 「やまないね。」

 「まだ必要かな?」

 「まだ必要だよ。」

 「でももう飾る所ないよ。」

 「そうだね、ここには飾れないね。」

 部屋の中には隙間が見えない程にてるてる坊主によって埋めつくされていた。2人の子供も最早部屋にはいることなく廊下の窓と部屋を交互に見ながら話している。

 「どうする?」

 「どうしよう。」

 「雨やまないもんね。」

 「そうだね、作ろっか。」

 「そうだね、作ろう。」

 「そうと決まったら準備しないと。」

 「必要な物は揃ってたかな?」

 無表情なままてるてる坊主で埋められのとは別にある2つの部屋の内の1つの部屋に入る。



 積雨のために時間帯は分かりにくいが暗さから夕方辺りだろう。2人の子供は家から離れた橋の有るところで静かに行き交う人達を眺めている。

 人気が無くなってきた所でバイクが止まり子供に近づく人が1人。ヘルメットを外したその人物は袈裟を着た坊主だった。

 「君達、こんな時間帯に何をしているんだい?早く帰らないと親御さんが心配するよ?」

 そう優しく話しかけるお坊さんに2人は橋の下に大切な物を落として困っていると話す。人の良いお坊さんはそれを聞き少し困った顔をしたが危ないからここに居るようにと言い橋の下にそれを取りに向かう。

 「おや?子供達に聞いたのはここのはずなんだが…………周りにもそれらしい物はないなぁ。」

 困ったと思いつつ1度確認をしようと橋の上を向いて声をかけようとして物音に気付き振り返ろうとした。


 「できた。」

 「できたね。」

 「ちゃんとキレイに作れたね。」

 「これなら明日は晴れてくれるよね。」

 「さあ帰ろう。」

 「うん、帰ろう。」

 赤い模様の入ったカッパを着た2人の子供はキャッキャと笑いながら走る。水飛沫も気にせずに。


 「やんだ、やんだ。」

 「やうやく雨がやんだ。」

 「昨日のてるてる坊主のおかげだね。」

 「そうだね、やっぱりてるてる坊主は凄いね。」

 廊下の窓から晴天の空を見て無邪気に笑う2人。


 『──次のニュースです。昨夜、○○市の△△橋の下で遺体が発見されました。遺体は頭と胴体が別れており、頭はて白い布が首に巻かれた状態で橋の上から吊るされていた様です。警察は事件として捜査していますが目撃者が見つからないず困難を極めているようです。』

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