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怪異奇譚  作者: 春夏秋冬
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ハロウィン

10月31日の夜は秋の終わりであり冬の始まりともされており、死者が家族に会いに来るとされている。そしてそれと同時期に有害な精霊や魔女が訪ねてくることもあるため身を守るためにお面をかぶり魔除けの焚き火を焚いていた。それを元にして生まれたのが現在のハロウィンである。


さて、ここは大都市から離れた小さな村。1人の少女が地面を見ながら歩いていた。

「あーあ。つまんないの。折角もうハロウィンなのに何でこんな田舎に来なきゃ駄目なのよ!」

数日前に祖父が怪我した上に父親も出張が重なったがために家に残ることを許されず仕方なく母と共に来たものの友達もいなければ遊ぶような所もないしゲームもない。

「もー、本当につまんない!何か楽しいことないかしら。」

「……それなら僕と一緒に遊ばない?」

急にかけられた声にビックリしながら見るとフードをかぶった少年が気の側に立っていた。

「僕も最近こっちに来たんだけど何もなくてつまらないんだ。」

そう言って近づいてきた少年に連れられて歩く。

目的もなく歩きながらこの木の実は食べれるとかこのキノコはお腹を壊すとか話しているとわりと離れた所まできてしまったのか道が分からなくなってしまった。

慌てると少年が道を指して歩いた所は踏まれてるから直ぐに分かるよと言ってくれて安心するが日が暮れ始めてることで今度は帰らなくちゃと焦る。

「そうだ。明後日は暇かな?僕のいる村でハロウィンするんだ、皆仮装してお菓子配ったりしてるから君も来ない?」

村がそろそろ見えるという所で少年に言われ喜んで返事する。

また明後日にここで会おうと約束して家に走って帰る。


昼過ぎに適当に家にあったマントを身につけて鞄を持ち少年と約束した場所に向かう。

この間は元々会った時間が遅かったし寄り道しながら歩いていたことによって遅くなったが寄り道さえしなければ問題ないと待ち合わせ場所に着くと少ししてガサガサ、と草むらが揺れて蛇かと身構える。

「ばあっ!!」

勢いよく飛び出してきたカボチャ頭に驚き悲鳴をあげながら転んでしまった。

「わっ、ごめんね。そこまで驚くと思わなかったんだ。」

焦ったように言う声は待ち合わせしていた少年の声だ。

再度謝った少年を許して早速村に向かう。

楽しくお喋りしながら歩いているといつの間にか村に着いており少しビックリするものの可愛いらしく装飾された村に喜びが勝る。

「凄い凄い!町でもこんなに賑やかにやらないよ。」

「喜んでもらえて良かった。さあ、お菓子を貰いに行こう!!」

「うん!」

そこからは近くにあった家から順番に巡っていく。

飴にクッキーにチョコレート、マフィンにマカロンにパイにと様々なお菓子を受け取りながら村を1周すると鞄から溢れそうになっていた。

どうにか溢れないように持ち直し村の入り口に戻ると日が少し傾き始めていてそろそろ帰らなければならない。

少年にお礼を言って帰ろうとすると袖を掴まれ引き留められる。

「なあに?そろそろ帰らないと遅くなって怒られちゃうわ。」

「…………。」

「黙ってないで何か言ってよ。」

無言の少年に少しいらっとし、無理矢理手を振りほどき村を出ようとしたところで夕陽が後ろから差してきた。走らなければ陽が沈むと思い駆け出そうとして少年の影が異様に大きいことに気付く。

何故だろうと思わず振り向くと少年の目が怪しげに光っていた。

「…………トリック・オア・トリート。」

いきなり言われた言葉に驚くも早く帰らないとという思いから鞄から咄嗟に取ったお菓子を渡そうとすると首を振られる。

「それじゃダメだよ。君が用意したお菓子じゃなきゃ。」

「そんなの……用意してないわ。明日でいいでしょ。」

「ううん、ダメ。お菓子くれないとイタズラするよ。」

「……持ってないもの。悪戯ってどんな?」

「それはもちろん、キミを家に帰さないことだよ。なかったらここで用意すればいいよ。」

でしょう。と無邪気に言われるが頭が理解を拒む。

「でも、帰らないと、怒られちゃう。」

「アハハッ。大丈夫。ここは村の住人から呼ばれた人しか来れないから。」

少年が言う間にも陽は沈み家々の明かりが灯る。

「キミもつまらなかったんでしょう?でも大丈夫、ここは一年中ハロウィンだから!つまらなくなることなんでないよ。」

ゆるゆると力なく首を振り後ずさって行く。

「どこ行くの?村から出るなんてできないよ?」

その言葉にとうとう怖くなり一気に村の外へと駆け出す。

しかし、外に出たはずがいつの間にか村の中へ駆け込むように走っていた。

何度か繰り返しても外に出られず力なく地面に座りこむ。

ふと周りが暗くなり顔を上げると少年だけでなくお菓子をくれた村の住人達が仮装した姿のまま取り囲み見下ろしていた。







数年後。

ハロウィンの時期にも関わらず田舎にくることになった子供が少し外れたところで石を投げて怒っていた。

「何で折角のハロウィンにこんな田舎にくるのさ!」

そんな子供に近づき声をかける姿が1つ。

「それなら私と一緒に村に遊びにこない?」

「君の村に?」

「そ!ハロウィンは盛大にやるの、だから君もどう?」

少女の誘いにのり子供は共に村へと向かう。

そうして日暮れに近づき帰ろうとする子供をマントを被った少女は引き留めあのコトバを言う。

「トリック・オア・トリート。」

お菓子を用意してないと言う子供に残念そうな顔をして告げる。

「それじゃあイタズラしないとね。」

「悪戯って、どんな?」

「キミを家に帰さないことだよ。」

子供の周りをいつの間にか少女以外の村人達が取り囲んでいた。




子供が決まった日に行方不明になる事件は未だ解決されていない。

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