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怪異奇譚  作者: 春夏秋冬
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とおりゃんせ

 ある日の夕暮れ時。1人の男が提灯を方手に、もう片手に子供を連れて道を歩いていた。人気のない道を少し早歩きで進んでいるとどこかの神社に続く道に門番が立って居るのを見つける。

 「もし、ここは何処への道だ?」

 「天神様への道だ。」

 丁度よい、と男は門番に通してくれるよう頼む。

 「駄目だ。用のないものは通せぬ。」

 「この子の七つのお祝いに札を納めに参りたい。」

 そう言うと門番は子供を見て1つ頷き通してくれる。

 「行きはよい。帰りは用心するように。」

 その言葉に軽く頭を下げて子供を連れて道を通って行く。

 門番が居た位置から数分程、階段を登ったり道を曲がったりしながら漸く着いた所で本坪鈴(ホンツボスズ)を鳴らし参拝をし札を本殿の前にある棚に納める。

 全て終えたのを確認し子供に頷き手を繋ぎ外に向かおうと本殿の鳥居を潜ると僅かに繋いだ手が強く握られるのを覚えながらも無言で歩く。

 行きはそこまで遠く感じなかった道が帰りは遠く感じながらも転ばぬように一歩一歩しっかりと早くなりすぎないように歩くが出口が見えた所でホッとしたのか子供が少し歩みを早めた。

 まずい、と思いながらも声を出すわけにはいかず自身の歩みも早めて子供が転ばぬように気を配る。

 しかし、気にかけたのも束の間。猫か犬か……何かが参道の側の林を通り、唸ったのを切っ掛けに子供が驚き足を縺れさせ転んでしまいその拍子に声を出してしまった。

 子供もやってしまったと思ったのか泣きそうな顔でこちらを見ようとするのを手で抑え、何とか立たせて走らせる。

 ──居た、居た。子供だ。

 ──旨そうな子供、食ろうてやる。

 ──あそこだ。待て、逃がさぬ。

 背後からの恐ろしい声を耳にしながらも懸命に足を動かし出口に向かうが追ってくるモノも早い。何とか子供を庇いはしたが足を掴まれ今度は自分が転んでしまう。声こそ出さなかったものの子供が足を止めて振り返えってしまった。

 「止まるな、走れ!」

 父親の一喝にビクッとしつつも再び走り出す。

 自分はもう助からぬだろうが子供だけでもと思った所で子供が転びかける。

 何とか踏みとどまったものの少し歩みを止めただけで恐ろしいモノが背後へと迫る。

 声を必死に出し子供を走らせようとするが自分が食われる直前に子供も捕まってしまったのが見えた。

 シンと静まりかえった参道に落ちている、壊れた提灯と子供用の草履が見つかったのは翌朝のことだった。

 1人帰りを待っていた妻は夫と子供の死に涙し、葬儀の後首を吊って死んでいる所を心配した村人に発見された。





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