4話
位階の壁。
魔法は第一位階から第十位階まで存在する。そのうち、第一位階から第三位階までは、魔力を持つ者であれば誰でも習得が可能である。
しかし、第四位階より上位の位階の魔法については、自分の持つ属性の魔法しか習得できない。
これが現代の魔法の通説だ。
「でも、考えてみればおかしな話なのよね。例えば第一位階魔法のファイアボールは火の属性魔法でしょう? けれど、属性がなくても誰でも習得可能なのよ」
「初級魔法だから誰でも扱えるっていうのが、今のところの見解なんですよね……」
「そう。じゃあ、初級とそれ以上の魔法の差って何? どうして初級だとできてそれ以上だとできないの? 属性についての構成には、特殊な条件みたいなものは無いはずなのに」
シャルロットとリーゼロッテは放課後2人で勉強会を開いていたのだが、話が脱線し先日の魔法と構成の謎について話し合っていた。
鍛錬室での出会いから2人は一緒にいる時間が増えた。
学生寮のシャルロットの部屋は一人部屋のため、リーゼロッテがシャルロットの部屋を訪ねることが多かった。
「ここに私達が知らない秘密が隠されている気がするのよね……」
うんうん唸りながら考えるシャルロット。
貴族らしからぬ振る舞いだと自覚はあるが、リーゼロッテの前では気にせず自然体でいることができた。
リーゼロッテもまた、そんなシャルロットに親しみやすさを感じていた。
「シャルロットさんは、その秘密が神域魔法にも繋がっていると思っているんですか?」
だからだろうか、シャルロットのことも『様』ではなく『さん』付けで呼ぶようになっていた。
「私はそう思ってる」
リーゼロッテの言葉にシャルロットは真剣な表情で頷いた。
ーー神域魔法。
第十位階を超えた魔法とされている幻の魔法。
古代の魔法使い達の中に、その魔法を使用できた者がいたらしい。正確な資料などは残っておらず、今も研究が続けられている。
ーー『星降る夜』『女神の祝福』『魔法の花』
現在、文献などから分かったこの3つの魔法が神域魔法とされている。
この呼び名も正式なものではなく、魔法の効果などについても正確なことは不明である。
「まだまだ分からないことだらけで、先は長いけどね」
肩をすくめながらそう言って、シャルロットは紅茶を口にした。
リーゼロッテも、そうですねと同意して同じく紅茶に口をつけた。
「とりあえず、差し当たっての問題は次のーー」
カップを置いて真剣な顔でシャルロットは口にする。つられてリーゼロッテも真剣な表情になり、
「「課外授業」」
二人の声が重なった。
ついでにこの後の溜息も重なった。
文字通り、息ぴったりだった。