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3話

 

 リーゼロッテが鍛錬室に来た理由も、シャルロットと同じような理由だった。

 庶民でありながら魔力を持つ存在。

 周りからは負の感情を向けられるばかりで、馴染むどころか心休まる時間すら無い。

 そんな周りの視線の届かないところを探していたのだ。


 貴族の教育と魔法の修行。

 リーゼロッテにとっては、どちらも今までの生活とは程遠いものばかりで、ついていくために必死にだった。

 誰も見ていないところで、置いていかれないようにと勉強する毎日だった。


「先ほどの魔法すごいですね! どうやったらあんな風にできるんですか?」


 暗い話を振り払うように、努めて明るい声でリーゼロッテが問いかける。


「……これ?」


 シャルロットが先ほどの魔法を再現してみせる。


「……すごい。構成は普通のファイアボールと全く同じなのに、どうしてそんな動きが……」


 ーーこの子、私の魔法の構成を正確に読み取った。


 魔法の構成は設計図のようなもの。

 魔法が発動すれば消えてしまうため、編み上げる速度が早ければ早いほど読み取ることは困難になる。

 ましてや、シャルロットの構成を編み上げる速度は相当早い。並の術者であれば、まず読み取れられない自信がある。

 幼い頃から祖父に習い、魔法の構成の緻密さ、完成速度は、世界でもトップクラスと言っても過言では無いレベルに達している。


 あの一瞬で正確に構成を読み取ることができたのは、リーゼロッテがそれだけ構成について深く学んでいる証拠だった。


「色々と試しているうちにできるようになったのよ。構成は全く関係ないの。

 ……気合い?」


 自分でも不思議なのよね、と首を傾げながら答える。


「……気合い」


 キョトンとした顔でシャルロットの言葉を繰り返したリーゼロッテは、しばらく間を置いてから笑い始めた。

 シャルロットの答えが笑いのツボに入ったのか、リーゼロッテは出会ってから初めて屈託なく笑った。


「でも不思議ですね、構成(設計図)に無い動きをするなんて。じゃあ、構成に加えれば、誰でも同じことができるんでしょうか?」


 ーー⁉︎


「そう! そうなのよ! 魔法には構成だけでは説明できない謎がまだまだあるの。

 それを解明することができれば、位階の壁を超えることも、神域魔法に辿り着くこともきっと出来るわ!」


 シャルロットは、思わずリーゼロッテの手を取りながら興奮した様子で話す。


 それはシャルロットがずっと考えていたことだった。

 誰もが、属性が無いシャルロットのことを諦めた。


 ーーけれど、私は私を諦めない。


 現代の誰も辿り着くことが出来ずにいる高みへと、いつか必ずたどり着いてみせる。

 誰にも話したことのない想いを、このつい先ほど出会ったばかりの少女に語ってしまったのはなぜなのか。


 勝手に感じたシンパシーのためなのか。それとも何か別の感情なのか。

 しかし、不思議と嫌ではない自分がいた。


 ーーリーゼロッテ(この子)はどう思っているのだろう?


 シャルロットの様子に驚きながらも、どこか嬉しそうに微笑むリーゼロッテを見ながらそんなことを思った。



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