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18話

 逆さまに降る雨は、少しずつではあるが強くなっていた。


 ーーこのままだと、魔法が使えなくなる。


 相手の手の内は読めないが、リーゼロッテは覚悟を決めた。

 このまま雨が強くなり続ければ、こちらの魔法は封じられたも同然だ。

 リーゼロッテは障壁を何重にも展開する。

 相手の魔法である逆さまに降る雨に触れると、魔法は発動後であってもその効力が捻じ曲げられてまともな効果が望めない。

 雨がリーゼロッテの身体に触れても、特にダメージはない。

 しかし、魔法による身体強化の効果は捻じ曲げられていた。これではまともに動けそうにない。

 障壁で身体強化の魔法効果を保護。

 さらに障壁の重ね掛けにより、雨の到達をできうる限り遅らせる。


 ーー問題は、妖精さんをどうやって引き剝がすか。


 無理矢理剝がすことは難しい可能性がある。

 何とかして赤毛の魔女を無力化し、この魔法を止めた後に方法を探すしかない。


 方法は決まった。後はやるだけだ。と覚悟を決めて、リーゼロッテが踏み込んだ瞬間。



 (そら)から降ってきた光が、メリッサを貫いた。


「人間風情が、不遜である」


 その声は、赤い雨が降り注いでいた天上から下りてきた。

 天からの光は、魔女を打ち抜いていた。その衝撃で魔女と黒竜が引きはがされた瞬間、奇跡的にリーゼロッテは踏み込んだ勢いそのままに黒竜を抱きしめた。

 光自体はリーゼロッテには当たらなかったものの、その余波だけで吹き飛ばされて地面を転がった。


 転がった衝撃で身体のいたるところが痛むが我慢した。

 しかし、立ち上がろうとした瞬間、脚に違和感を感じた。上手く立ち上がれない。


 ーーまずい、脚をやられた。


 これでは逃げることができない。

 おそらく何らかの魔法だと思われるあの光は、幾重にも展開したこちらの障壁を難なく破った。

 防御は不可能だろう。


 ーーっ⁉



 空を見上げると、そこには巨大な島が浮かんでいた。

 中心に城があり、その周りを庭園が取り囲んでいる。

 それは、リーゼロッテが幼いころに教会で聞いたお伽話に登場するーー


「……妖精の国?」


 突如として現れた空中庭園は、よく見ると空の隙間からその姿が見えていた。

 空の景色と同じ迷彩の結界なのか、空の向こうの別の空間に存在するのか。

 リーゼロッテには原理は分からなかったが、本来見えないはずのものが見えている状態であることだけは分かった。

 空中庭園の端から、白い羽の妖精がこちらを見下ろしていた。

 白い妖精が右手を挙げると、先ほどと同じ光が天から降ってくる。

 リーゼロッテは全力で障壁を展開すると同時に、黒竜を庇って光に背を向けた。



「私の大切な友達に何するのよ」



 大好きな友達の声が聞こえたーー。


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