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公爵家五男の異世界行脚  作者: ナカタクマ
第1章~暁の産声~
22/63

第19話:後の祭り

帰ってきたユークリスト!!


「本日の早朝訓練はこれで終了です。お疲れ様でした、ユークリスト様。」

「ふう、はあ、お疲れ、アルマン。」


 屋敷に帰って一週間が経った。

 俺は、日課にしようとしている朝訓練に来ている。

 朝訓練の相手は、アルマンに頼んでいる。

 

 理由は、 俺の近接戦闘能力の向上の為だ。

 これまで俺は、ワグを相手に訓練をしていた。

 ワグの戦法は、スピード重視で手数を増やして先手必勝、もしくは誘い込んでの反撃(カウンター)で敵を圧倒する。

 俺もそれに倣って色々工夫していたりしたけど、俺みたいに魔力総量が少ない奴は、そもそも基礎をしっかりやるべきだとワグに言われていた。

 しかし、魔術銃の製作に掛かり切りになって、その当たりが御座なりになっていた。

 今回の魔獣狩りの俺の反省点の一つが、戦闘方法が少ないって事だ。

 現在の俺の戦闘方法は、魔術銃による銃撃と、自爆ベストでの特攻だけだ。

 正直、異常だ。


 遠距離が通じなくなったら自爆って………


 剣術に関しては。

 この二年間でそれなりにやってきたつもりだけど、剣の道はまだまだ始まったばかりだ。

 登山に例えるなら、まだ麓にも差し掛かってない。

 やっと、登山靴を履いたばかりといった所だ。

 理解はしているが身体よりも頭が先といった感じになっている。

 ワグとの訓練のおかげで、近接防御に関するアレコレは出来ているのだが、自分から仕掛けるというのはいまいち出来ない。

 やっぱり前世の恐怖感なるものが残っているのかもしれないな。

 もしくは、長鼻盗賊某を殺したことが影響しているのか。

 分からないが、とにかく近接戦闘における決定打的なモノが俺には無いんだ。


 遠距離に関しては魔術銃(リボルバー)があるから、大丈夫だと思う。

 でも、仮に先日の怒大熊(グレイトベア)戦の様に弾切れを起こしてしまった時に、ロキが居なかったら大怪我を負っていたかもしれないと考えると、何かしないといけない衝動に駆られるな。


 まあ、それを無しにしても出来るだけ近接戦闘の憂いは無くしておいた方が良い、とワグに言われこうしてアルマンに朝訓練を頼んでいるということだ。


 アルマンは北武流の師範代だ。


 この大陸には、大きく四つの武術がある。

 その等級は、下級、中級、上級、豪級、霊級、竜級、神級に段階分けされる。

 この等級も大体、魔術と一緒だ。

 剣術は才能と修練が比例する分野であり、次代に継承されているからか、一世代に必ず一人は神級が存在する。

 その所為か、この世界は魔法上位の考え方よりも、剣術上位の考えを持つ者の数が多い。

 

 一つ目が北武流。

 大剣、槍、斧、大槌、大楯といった、大味の威力を持つ武器を扱うことに長けた武術であり。

 質実剛剣を旨とする正統派剣術の一つ。

 戦法は一撃必殺や武器破壊、長期戦闘等を得意とする。

 耐久力があり、小細工をせず真正面から敵を討つ。

 そんな王道剣術的な立ち位置だな。

 北武流で神級に達した者は、その開祖だった者が割ったとされる『アルトバルス山脈の氷瀑』に擬えて【氷神(ひょうじん)】と呼ばれている。

 ちなみに、氷神が何処に居るかは分からない。

 諸国漫遊の旅をしているとも言われているし、隠居しているとも言われている。

 将又、危険自然区域に居を構えているとも。

 その真偽は定かでは無いが、とにかく権威や束縛を嫌う人間だというのは分かるな。


 二つ目は東武流。

 これは、北武流に対抗する為に作られた武術と言っても過言じゃ無い。

 北武流の様に大味の武器とは違い、細剣、ナイフ等のリーチの短い武器の扱いを得意とする武術だ。

 相手の懐に入り、手数で圧倒して先手必勝或いは反撃を狙う剣術。

 ワグの出身のナベロ人が使う魔闘術は、ほとんどこれに該当する。

 まあ、彼等は短剣術よりも素手格闘(ステゴロ)の方が得意らしいが。

 その所為か、東武流を力無き者の剣術という者もいる。

 東武流で神級に達した者は、魔闘術に擬えて【闘神(とうしん)】と呼ばれている。

 闘神は、現在ヤヅナベロ平原に居を構えているらしい。

 闘神個人と言うよりも、歴代の闘神が住んでいる場所がヤヅナベロ平原にあるらしい。

 知る人ぞ知る場所にあるらしいが、その場所に足を踏み入れる人間は居ないらしい。

 嘗て、帝国に侵攻してきた部族に闘神が居たこともあり、その時は帝国内に多大は被害がもたらされたとか。

 また魔闘術は、反魔術(アンチマジック)を扱えることから闘神は確実に、大陸剣議席の一桁にランクインしているだろうな。


 三つ目は南武流。

 これはかなり特殊な武術で、普段見慣れない武器を扱う。

 ウルミや三節棍にトンファー、十手にソードブレイカー。

 兎に角、相手を殺すことが出来るならば何でもありという所だな。

 相手の知識外にある武器を扱うことで、相手に戸惑いを生じさせ優位性を奪う事を得意とする。

 一度の戦闘で数種類の武器を扱う為、それ相応の才能を必要とされている。

 物珍しい武器を使えば良いって訳でもないらしい。

 また、この武術の可笑しい所は『勝つ為なら何でもする主義』のくせに毒や罠等の外法を良しとしていない所だ。

 勝つ為なら、正々堂々ズルをするって事かな?

 よくわからん。

 神級に達した者は、南武流の開祖が海賊だった事に擬えて【海神(かいじん)】と呼ばれている。

 海神は現在、ゴドラック帝国に仕えていると噂があり、そこの海軍を任されているとか。

 今も、着々とオルトウェラ侵攻の準備を進めているゴドラック帝国に、海神が居るのはかなり怖い。

 まあ、その時は逃げれば良いかな。

 帝国の公爵家に居る人間を逃がしてくれるだろうか?

 その時はその時だな。


 最後、四つ目の西部流。

 西部流は、暗殺や奇襲・ゲリラ戦を得意としている。

 南武流とは、また違うなんでもありの武術だ。

 毒や罠を使い、また直接戦闘の際には魔道具を使ったりしている。

 自分の要望に応じて魔道具を作る者もいるらしく、優秀な暗殺者は優秀な魔道具師らしい。

 狂人(マッド)と天才は紙一重って事かな。

 四つの武術とは毛色が違う西部流が生まれた背景には、西の危険自然区域(レッドエリア)【古の大森林】の存在がある。

 伝承では、古の大森林の中にはエルフの国があると言われて、ここで登場するのが彼の【猟奇帝】なんだけど。

 時の皇帝は、その知的探究心の焔に世界樹の枝を薪としてくべたのだ。

 その時、帝国軍の侵攻を食い止めたのが五人のエルフだった。

 彼等或いは彼女等は、大森林に足を踏み入れた帝国軍人を片っ端から殺していった。

 毒を使い、罠を仕掛け、奇襲で惑わし帝国軍に恐怖を植え付けたのだ。

 森の中でゲリラ戦をするなんて、ラ○ボーみたいで格好いいよな。

 しかし、その結果生まれたのが、この大陸で唯一の【国境】だ。

 この世界の国境は実に曖昧なモノだ。

 衛星写真があるわけじゃないし、入国管理局があるわけじゃ無い。

 移民防止用の巨大フェンスがあるわけでも、東西で隔てる壁があるわけでも無い。

 だからこそ、そのエルフは帝国軍を退けた後、あろう事か死体の首を撥ねて、帝国領と大森林の境に並べたんだ。

 締めて五十万人の首を。

 帝国への警告を死者への侮蔑と憤った帝国だが、結局どうすることも出来ず何世代たった今でもその国境は、戒めとして遺されているとか。

 まじで、猟奇帝いい加減にしろよ。

 それ以降の時代、帝国がエルフの国に手を出すことを止めた。

 今では、何世代か経っているからエルフが帝国にいることは珍しくは無い。

 しかし、帝国とエルフの国に国交が開かれることは無い。

 エルフの国に行く人間も居ない。 

 誰も場所を知らないからだ。

 恐らく、古代魔導具(アーティファクト)等を利用し、その存在を隠しているのでは無いのかと俺は考えてる。


 神級に達した者はエルフが信仰している精霊に擬えて【精神(せいじん)】と呼ばれている。

 今、何処に精神がいるかは分からない。

 その存在すらもな。

 というか、精神を見た人間は大陸の歴史上片手で数えられる程度だそうだ。

 まあ、暗殺王だからな。

 そうほいほいと、世間に出てきたらダメだろ。


 それぞれに一長一短があり、好みや用途によって千差万別だ。

 

 この四つの武術を統括して【四神流】と呼ばれている。


 因みに帝国式剣術は、これらのどれとも属さない攻防一体の剣術になっている。

 片手剣と盾、もしくは細剣を使い、防御からの突きや受け流しによるカウンター狙いの剣術になっている。

 これを考えた初代皇帝曰く。

 『この剣を修めし者、北の猛威を捌き、東の猛攻を防ぎ、南の不次に順応し、西の不可視を見抜く。さすれば、帝国の武威がそれらを貫くだろう』らしい。

 何処まで信憑性があるか分からないけど、攻防一体の剣術はこの大陸にはこれだけだ。


 さて、アルマンは北豪級の剣士でもう少しすれば北霊級までなれると話に聞いたことがある。

 それに、帝国式剣術もいくつか修めているとか。

 実際アルマンは至極優秀だ。

 ワグが居なければ、俺の専属騎士になっていた男だからな。

 というか、俺が至極真っ当な七歳児だったらアルマンが騎士になっていた。

 この数年で、筆頭騎士の称号も得たし。

 

 今は、基礎的な素振りや歩法を只管反復で身体にたたき込んでいる。

 魔力による身体強化は無し。

 

「この一週間で、素振りも足運びも上達していますな。流石ユークリスト様です。」

「お世辞はありがたいけど、正直な感想を聞かせてよ。」


 この一週間で考えたことは、とにかく急ぐ必要があるって事だ。

 のんびりしている暇は無い。

 自分の死角から、自分には対応できないほどの力で襲われた時、周りの人間を守れるように。

 まだまだ、俺は力不足だって事だ。


「いえ、お世辞では無いのですが……分かりました。では、ユークリスト様には北部流は向かないと進言させていただきます。」

「お世辞は抜きだっていったけど、いきなり手厳しいね。理由を聞いて良いかな。」


 アルマンはこういう男だ。

 自分の保身よりも、主の意向を優先する。

 俺が言ってくれと言ったら、丁寧で腰は低いが、臆せず自分の意見を言う。

 

「はい。北武流の神髄は真っ向勝負にあります。大袈裟に言うのであれば、左腕を切り落とされても右手で相手を殴る精神力が必要です。しかし、ユークリスト様はその辺りの決心が出来ていない。そんな印象をお見受けします。」

「でも、最近はワグとの戦闘訓練を積んで近接戦闘に目が慣れてきたんだけど。」

「東武流の場合は、ヒット&アウェイが出来ます。しかし、北武流に引き足はありません。

『常に前進を』の教訓通りです。」


 胸の辺りをドンッと叩いて、決め顔を作るアルマン。

 背中に掛けている大剣がキラリと光る。


「なるほど、僕はその辺り意気地無しだからね。」

「いえ、そういうわけでは無く。」


 残念そうに少し肩を落として軽口を叩く。

 そんな俺の様子に、アルマンが少し慌てて訂正を入れる。


「その、ユークリスト様は非常に思考が柔軟です。私がこう言うのはなんですが、北武流は融通が利きません。私のように直情的な人間が、愚直に剣を振った先に辿り着いたのが北武流なのです。そして、それはユークリスト様の奇抜な発想力や、柔軟な思考と相性が合いません。」

「でも、帝国貴族の殆どが北部流もしくは帝国式剣術を習得してるんでしょ?トーラス兄は北豪だし、バレ兄は帝国式剣術を習ってるって言ってたよ。」

「そうですね。帝国人は帝国が気づいてきた文化や歴史に誇りを持っています。それに、各貴族家には御家秘蔵の剣術を使う者もいますから。」


 そう、この世界の人間には多かれ少なかれ魔力がある。

 それは、魔力が充満する環境に対応する為だって言われてるけど。

 とにかく、その魔力を使って戦闘を行うから、トーラスの様に魔法と剣術のハイブリッドマンが居たりするんだ。

 トーラスの場合はかなり、えげつないらしい。

 ゴリ押し戦法を得意とする北武流に【守護術】を掛け合わせて、相手を擂り潰すらしい。

 バレットの場合は氷属性魔術と帝国式剣術のハイブリッドだ。


 帝国が独自に気づいてきた文化や歴史に誇りも持つ者もいる。

 だから、貴族に生まれたからにはみたいに考えて北武流を習っているんだけどな。


 帝国内で、北武流を除いた他の四神流を習得しているのは、傭兵や冒険者が多い。

 もちろん、貴族家にも適性や好みに応じて習得している人間はいるが、各家の後継者や上級貴族となるとそうは行かないらしい。

 

「でも、僕にはそれが向かないんでしょ?」

「そういう事になりますね。」


 率直に物を言うアルマン。

 少しは俺を気遣って欲しいな。

 一応、俺は貴族だぞ。

 これでも頑張っているつもりなのだが、どうやら北武流は俺の肌に合わないらしい。

 

「でもそうは言っても、帝国には他武術を扱う人間が少ないし。どうすれば良いかな?」

「冒険者や傭兵、或いは総本山の者を呼んで家庭教師を頼むという手段もあります。」

「じゃあ、探そっかな。」

「それも良いでしょうが、まずは基礎を固めるのが先決であります。」


 蛇の道は蛇と言われるように、未知の道は習得している人間に倣うのが一番だ。

 しかい倣うとなったら、俺は公爵家だからまずは家庭教師の身元を調べたりなんなりと、色々手間が掛かる。

 習いたいと言っても、家庭教師捜しから身元調査まで最低一年はかかる。 


「それもそうだね。」

「では、帝都の学院に入られるまでは屋敷(ここ)で基礎的な体力作りに励みましょう。このアルマン、未来のユークリスト様が如何なる武術をも習得できる見事な土台を作って見せましょう。」

 

 白い歯を覗かせて、もの凄くいい顔で言うな。

 肌が黒かったら、完全にビ○ー隊長だな。

 

 しかし、既にかなりキツいんだけど。

 これ毎日するのかな……

 正直、億劫になる。

 結構キツいんだぜ。


「そうか、楽しみにしているよアルマン。」

「はっ!!」


 ちなみに、ロキとノートは昨日まで参加してた。

 今日は眠いってさ。

 明日はどうなるか分からない。

 でも、ロキは乗り気だったな。

 戦闘訓練が楽しいようだった。


「ユークリスト様ー。朝食の準備が出来ましたよー!」


 スティアが朝食の完成を告げに来た。

 スティアも最初は、ブートキャンプへの参加を志願したが彼女は朝支度などの仕事が多いため、参加できなかった。

 

「ありがとう、スティア。今日の朝食もいつも通り?」

「はい。今日もいつも通りです!」


 スティアの左胸には、レーメンで買ってあげた碧のブローチが光っている。

 甚く気に入ったようで、帰り道の時から付けてる。

 帰ってからも、俺に買って貰ったことを他の使用人仲間達に話している。

 使用人仲間にとって、スティアは娘か妹のような存在なので皆可愛がってくれてる。

 

「それじゃあ、ご苦労様アルマン。」

「はっ、ユークリスト様に良い一日を。」


 アルマンに軽い挨拶をして屋敷の方に向かう。

 この後は軽く汗を流して、着替える。

 スティアは着替えまで世話をしてくれる。

 と言っても、着替えの最終段階だけだ。

 服の襟を正すとか、髪を整えるとか、身嗜みのチェックをしてくれる。

 最初は風呂場まで行くと言ってた。

 かなり、心が揺れた。

 でも、既にルルティアとかエリーゼとか、その他使用人の裸で腹一杯なんだ。

 幼少期はホントに眼福だったな。

 でも、自我の芽生えが早い所為か出来るだけ早く一人で入るようにしたんだ。

 

 あれは、俺が四歳の時だった。

 とにかく、風呂の時間が楽しかった。

 公爵家の屋敷は馬鹿デカいから、歩いているだけで身体が引き締まってしまう。

 だから、屋敷の侍女達はだらしない身体では無く、ある程度健康的な体つきをしている。


 色んな形のおっぱいがあった。

 半球型は、バストの上下が均等でふっくらしていた。 

 お椀型は、丸みがあってよく揺れるんだ。

 皿型は、小ぶりだけど形が綺麗だった。

 三角型は、四歳児の俺の角度から見上げた時の下乳の良さと言ったらな。

 ロケット型の間には俺の可愛い頭がスッポリ嵌まるんだ、居心地が良かったな。

 釣鐘型はやっぱり男のロマンだよな、とにかくデカい。

 下垂型は熟女実があって唆られる、俺は三十代後半までアリだ。


 お尻に関しては出っ尻一択だな。

 鷲掴みしたくなる。

  

 ああ、こんな所に地上の楽園が‥‥‥‥‥

 有ったんだ!!楽園(ヴァルハラ)は此処にあったんだ!!

 此処が俺の理想郷(ユートピア)だあぁああ!!


 とにかく、興奮していた俺は勃起してしまったんだ。

 誰かに見られたわけでは無い、ルルティアにも『ユーリに付いてるのこれはなに!?』とは聞かれなかったし。

 ただ、このままではいけないと思った。

 ちょっとした矜持が傷ついた。


 それから、俺はルルティアと風呂に入るのを止めた。

 

 スティアが来てから、一人で入るようになった。

 ユークリストの独り勃ちってヤツだな


 ゴホンッ………



ーー



「おはようございます。叔父上。」

「やあ、おはようユークリスト。それにスティア。」

「おっおはようございます。ガレフ様。」


 食事室に行く途中の廊下で、叔父のガレフと鉢合わせした。

 オールバックにした髪型に、優しそうな顔つきと眼鏡。

 公爵代理モードだ。

 

「朝から訓練かい?精が出るね。」

「ええ、三ヶ月後に父上達が帰って来た時に上達したのを見て欲しいですから。」

「そうか、しっかり頑張りなさい。」

「はい。では、失礼します。」

「しっ失礼いたしましゅ。」


 スティアがちょっと噛んだのはご愛嬌だな。

 まだ、叔父相手には緊張している。


 軽い挨拶を済ませて食事室に向かう。

 正直、叔父はいい人なんだけど接しづらいというか、少し距離があるというか。

 善い人フェイスの向こう側が見えないって言うのかな。

 

 後、叔父の婚約者についての話も聞いた。

 ナベロ人の侵攻を受けて亡くなったとか。

 本当に痛ましい話だ。

 婚約者を無くすって、俺なら発狂して引き籠もってしまう。

 それだけで終わるなら良い方だ。

 最悪の未来しか見えない。

 なのに、叔父は毅然と領の運営に励んでいる。

 本当に凄い人だな。

 それぐらいの人なら、問題を心に一つや二つ抱えていても仕方が無い。


 しかし俺は、歴史問題を気にしない。

 この事実を聞いた所でワグを解任するという考えは無かった。

 それに専属騎士に選んだ後にカイサルから聞いた話だったからな。

 カイサルも止めろとは言わずに、気をつけてくれみたいなニュアンスで話してた。

 だから、配慮はする。

 出来るだけ、ワグと叔父が鉢合わせしないように考えている。


 だからワグが本宅で利用するのは、基本的に訓練場から屋敷への通路と、そこから俺の地下室に通じる階段だけだ。

 そこだけなら、公爵本邸と分家を繋ぐ渡り廊下から執務室への道で鉢合わせることは無い。

 申し訳ないとワグに話した時「わかった」と二つ返事で了承してくれた。

 

 叔父は、律儀に分家の屋敷の方に住んでいる。

 本家の方に部屋が空いてるのに、『私は銀雹(スノウ)じゃないから』と言ってたな。

 本宅には基本的に俺とルルティア、後、その侍女をしているスティアとエリーズと数人の使用人達だけだ。

 それも、騎士の警護付きでだ。

 それでも広く感じる。

 

「そう言えば、騎士の子は元気かい?」


 振り向かずガレフから質問が飛ぶ。

 騎士の子って事はワグのことか?

 叔父から、ワグの話が上がる事はこの二年間一度も無かったのに、どうしたのか?

 

「ええ、元気ですよ。それに優秀です。」

「……そうか。」


 笑顔で快活に返すと、少し間を置いてガレフがそう答える。

 

 そのまま、言葉を返さずガレフは去って行った。

 どうしたのだろうか?

 まあ、人間を知るには理解が必要だというしな。

 ガレフなりにワグのことを理解しようとしてくれているのかもしれない。

 僥倖かもな。

 

「……行こうかスティア。折角の朝食が冷めちゃうよ。」

「はい!」



ーー



『なあ、ユークリスト。いつまで、これを、つづけるんじゃ……?』

「何時までって、限界まで?」

『もう、限界、なんじゃが……』

「知ってるかノート。限界ってのはそう思ってから少し先に行った所にあるんだよ。」

『うう、ワシャ、もうダメじゃ……』


 朝食を終えた俺は、例の如く地下室に来ている。

 ただ、ここ一週間は特異魔術の使用に使われる方に来ている。


 ノートとロキの訓練もいくつか兼ねてる。

 ノートの課題は、魔法の上達だ。

 【空間術】の【異空間収納】の許容量を増やすこと、これが課題だ。

 魔法というのは、同じ魔法でも優劣がある。

 込められる魔力の量に、鮮明なイメージ、使い込むことで洗練され必要魔力量が減っていったり。

 

 魔法ってのは見えない筋肉みたいだよな。

 

 とにかく、今はノートの異空間収納の中に、只管水をぶち込んでいる。

 フードファイイターも、胃袋をデカくする時に水を大量に飲む。

 それと同じ要領で出来るかもしれないと考え、こうしてノートを水攻めにしている。

 まあ、出来ないかもしれないし、出来るかもしれない。

 出来たらそれで良いし、出来なかったらそれで今回の落とし前としてやろう。

 あの苦しんでる顔を見るだけで、意味はある。


『あるじー、ロキあそびたいー』

「その問題解いたら、お菓子をあげるからね。」

『ほんと!!』

「ほんとほんと、それじゃあこの問題だ。七個ある果物を二個食べたら残りは何個?」

『ぜんぶロキの!!』

「いや、そうじゃなくて」

『あるじもほしい?』


 ロキには、簡単な計算をやらせている。

 ロキはハッピーはお馬鹿さんだから、少し頭が足りないが一生懸命に頑張る子だ。

 だから、簡単で必要最低限の知能だけは備えさせようとお勉強をさせている。

 

 ロキは俺の従魔として共闘する形が好ましいと思ってる。

 具体的に言うなら、斥候と前衛(タンク)を努めて貰いたい。

 俺の前でガンガン戦って、俺の指示で迅速に動いて、そういった前衛だ。

 その時に、少しでも指示の認識に齟齬があると致命傷になってしまう。

 だから、ある程度の知能は必要だ。

 戦闘中に『あるじそれなにー?』とか言われると、気が抜けてしまう。


 理想としてはロキを前衛に置いて、ワグを遊撃、俺が中衛、スティアとノートを後衛に置けば資格は消えるんじゃ無いかと思う。


 ワグとスティアは、此処には来ていない。

 この部屋の存在は知っているが、この部屋には歴代公爵家の情報が入っていたりするから、如何に俺の専属侍従だとはいえ、入室が出来ない。


 スティアは、ルルティアの所にお邪魔している。

 エリーゼに使用人教育をして貰ったり、グロリアから戦場の話を聞いたりしている。

 ルルティアのお茶の相手をして、俺のことを話したりが主らしい。

 今回の俺の魔獣狩りの話もしたらしく、次の日部屋に連行された。

 そりゃあ、もう怒られまくったね。

 弟が危険度(ランク)SSSの魔獣と対峙したことにも驚いたし、怒られた。

 自爆ベストのことは、スティアにも黙ってたから話は漏れていない。

 スティアには口止めしたんだけど、ルルティアには弱い。

 俺も弱いから、その辺は責められない。

 それに、俺の勇姿を誰かに話したかったんだろうな。

 いい顔をしていた。


 ワグは、この一週間の始めに『鍛錬をする』と言われてから姿を見ていない。

 何処に居るかは分からないが屋敷の敷地内にはいる。

 どうせ、個別訓練場に居るんだろうな。

 ワグにも引きこもりの兆候が見られる。

 あの一大事に騎士として立ち会うことが出来なかったのは、ワグとしても堪えたんだと思う。

 俺も悪いことをしたな。

 もっと、信頼すべきだったかもしれない。

 でも、自分の力を伸ばすべきとも思うんだ。

 それに、無謀な戦いで大切な人材を無駄死にさせたくない。

 

 この辺りは、まだ答えが出てない。

 まあ、それでも自己鍛錬はお互い欠かさない。

 

 次はワグも連れて行く。

 死ぬことになっても。


 でも、そうなったらスティアも連れて行かないといけない。

 スティアにも自己防衛の手段を身に付けて貰うべきだが、それには時間が掛かる。

 実際魔法の腕は伸びているが、戦闘となるといまいち発揮されない。

 特異魔術の【付与術】もまだ発動の段階には来てない。

 こればっかりは気長に待とう。

 もしくは、何かしらの自作自演による強制治療が必要か。

 時が来ればなんていう人も居るかもしれない。

 しかし、その時ってのは大抵最悪の一歩手前の状況なんだよな。

 色々考えても、何が最良なのか分からない。

 まあ、そんなもんだよな。

 結局、俺が考えられること何てそんなモノだ。



 今、俺は地下室にたくさんの資料を並べている。

 古い歴史書から、最近の物まで。

 その多くは帝国皇室に関する物だ。

 普通なら、こんな代物集めるだけで国家転覆を疑われかねない。

 しかし以外と、公爵家の本宅の中にあったんだよな。

 流石、帝国筆頭公爵家(ペンタゴン)だよ。


 本や文献も集めた。

 古くは帝国建国の御伽噺から帝国筆頭公爵家(ペンタゴン)が創設された経緯について書かれている。

 後は、初代皇帝を賛辞する内容の広辞苑。

 色々なことが書かれてあった。


 初代皇帝は、神の使いで帝国建国を神託で降ろされたとか。

 魔術の等級は神級で、自領を脅かす敵を全て薙ぎ倒したとか。

 現代の帝国式剣術の基礎を造り上げ、その腕前も神級に達していたとか。

 輝かしい脚色がされてるかと思ったら、その出自は農民であり、成り上がりで現在の帝国を築いたと、少しドラマチックにもなっている。

 

 後は、彼に仕えた五人の騎士の話だ。 

 これは、現在の帝国筆頭公爵家の基になっている話だな。


 一人目は、初代皇帝の幼なじみ。

 初代皇帝の初陣から帝国建国まで、全てを彼の横で見てきた男。

 後に王鎧(イリオス)の名を貰う男。

 常に皇帝の近くで戦い、その身を挺して守り幾つもの死線を潜り抜けてきた。

 

 二人目は、初代皇帝を襲った盗賊。

 盗賊の身で、その武を皇帝に認めさせ皇帝自身から軍門に降って欲しいと懇願された男。

 後に銀雹(スノウ)の名を貰う男。

 戦場では常に先陣を切り、数々の武功を挙げ帝国の武をその身で体現してきた。


 三人目は、初代皇帝を騙した詐欺師。

 酒場で賭け事のペテンに掛けて、初代皇帝の金を全て巻き上げた男。

 後に嶽嵐(ストム)の名を貰う男。

 戦場に立つことは無いが、外部との交渉事や策謀に長けていた。


 四人目は、初代皇帝に救われた男。

 奴隷として売り出されていた所、その商才を買われて側近の一人となった男。

 後に光焔(レイン)の名を貰う男。

 その商才で金を生み出し、皇帝の生命線と言われた。


 五人目は、初代皇帝の影に居た男。

 皇帝が生まれた国の王族に生まれ、その座を奪われた男。

 後に麗雲(クレイド)の名を貰う男。

 皇帝の影で裏切り者を処刑し、敵の要人を暗殺した。


 これを読んだ率直な感想は、ここでこそ脚色が必要だって事だな。

 だって、農民一人に犯罪者一人に貧民一人に奴隷一人に亡国の王族一人だぜ。

 こうゆう時でこそ、貴族お得意の日常を彩る素晴らしき脚色が必要だろ。

 それにしても、個性豊かな面々を集めたな。

 初代皇帝は、それほど人財に困ってたのか?

 まあそうだよな、農民出身に付いて行く馬鹿なんていなかっただろうしな。

 魔法と剣術の腕前があっても、結局は成り上がりだし。


 でも、ちょっとロマンがあるよな。

 配役も適切だし。

 やっぱり、成り上がりは男のロマンだよな。

 物語が進む度に仲間が増えていく感じ、堪らねえよな。

 まあ物語だったら、幼馴染みが死ぬんだけどさ。

 『つくるんだろ、みん、なが、しあわせに、なれるくにを……』

 最後の台詞はこれで決まりだ。


 あと少年漫画ファンタジー宜しく、行く先々でヒロインを増やすんだ。

 結局全員と結婚して、目出度く子供がたくさん出来る。

 リア充、爆散しろ。

 成り上がり戦記の合間に、ちゃっかりラブコメやってんだから世話ねえよな。

 帝国建国の後、歴代ヒロインとの間に生まれた子供と帝国筆頭公爵家の後継者の縁を結ばせたそうだ。

 

 さて、確かに俺は歴史が好きだ。

 その土地独自のに発展した文化や、人が大切にしている伝統。

 どうして好きか?

 それは、歴史が物語だからだ。

 ありきたりな日常を彩る非日常。

 もしくは、目の前のガラクタに金の魔力を与える付加価値。

 目には見えない物語が詰まっているから歴史は好きだ。

 

 だとしても、今はそんなことをしている暇は無い。

 だって、今の俺には足りないモノがたくさんありすぎるからな。

 今の自分が、どんな状況に置かれているかは分からない。

 このまま平静に人生を過ごして、孫達に囲まれて息を引き取るかもしれない。

 それか大きな厄災が自分に降り注いで、これまで築き上げた物を全て取り上げられるかもしれない。

 どちらにせよ、準備をしておくのは大切だ。

 先が読めない人生で、準備をするのは当たり前だ。

 これは言わば、前世の勉強だ。

 勉強すれば自分の可能性は広がるように、俺は自分の力を上げる。


 ならなぜ、こんな事をしているのか?

 それは、俺のある仮説を確かめる為だ。


 先日の獄妖狼(ゲヘナヴォルグ)との会話での一件。

 最後に遺された言葉。

 それを統括して、一つの仮説を立てた。






 初代皇帝、ゴルベギウス・キング・オルトウェラは転生者だ。






 何時の時代からどうやって来た誰かは分からないが、恐らく俺と同じ境遇に遭った人間だ。

 転生者の男が農民から、大陸随一を誇る巨大な帝国の基礎を築いた。

 どっかで読んだことあるような話だな。

 主人公チート満載だろ。

 きっと馬鹿デカい魔力に無詠唱魔術、神様の加護があったかもしれない。

 羨ましいな。

 

 獄妖狼(ゲヘナヴォルグ)が言ったことを思い出した。

 獄妖狼は初代皇帝と面識があった。

 そして、あいつは初代皇帝にはもう一つの名前があると言ってた。

 最初は冒険者名か何かだと思ってたけど、恐らく前世での本名だ。

 あくまで、推測に過ぎないけどな。


 仮説が立った経緯はなんとなくだ。

 自分に起きたことが、他の人に起きないとは限らないからな。

 そこで真っ先に頭に浮かんだのが初代皇帝だ。


 もちろん、他にも候補はあった。

 例えば、ハルハット・トゥフォン。

 『大陸に住む人々』や『大陸に棲む魔獣』の著者で知られる有名人だ。

 隣の国の王様の名前を知らない平民でも、この人の名前を知っているというのが通例だ。

 彼もしくは彼女の情報は、出版された本のみという少なさだったが、そこに冒険心という物を感じる。

 あと転生者なら、なにかしら生きた痕跡を残してるだろうと思ったからだ。

 でも、彼の本は意外と少ない。

 メジャーなのは上記の二冊で、それ以外は殆ど分からない。

 何時の時代を生きた人なのかも分かっていない。


 あとは、歴代皇帝にいないかと考えたけど、分からなかったていうのが本音だな。

 いくら帝国筆頭公爵家とはいえ、皇族のことを調べるのは無理がある。

 

 と言うことで、ターゲットを初代皇帝に絞って調べることにした。

 初代皇帝の逸話は簡単に集まった。

 まあ、帝国建国の話はギリシャ神話は古事記みたいな扱いだからな。


 そして、仮説が立ったら初代皇帝の痕跡を辿った。

 皇帝自身の痕跡じゃ無くて、転生者の痕跡だ。


 いくつか、理由付け込みで見つかった物もある。


 一つ目は帝国筆頭公爵家(ペンタゴン)制度の設立だ。

 よくよく考えてみれば、この制度は君主制の中に三権分立的な物をぶち込んだ制度だ。

 本来、国が取り仕切る軍務や政務への実権を五つに分けて、権力の一局集中状態を無くした。

 強い帝国を維持する為、後継者争いや領地戦を推奨している変わりに、皇室に継ぐ権限を持つ公爵家の政戦への参加を禁じた。

 封建社会が当たり前の社会の中で民主主義とは行かずとも、共和制に似た制度を作りたかったのかもしれない。

 現代社会を生きている人間にとって、封建社会が如何に脆弱な制度か歴史が語ってくれる。

 そして、その崩壊にどれだけ血が流れるのかも。

 代表的なのはフランス革命だよな。

 ギロチンを象徴として、多くの人の血が流れた。

 例に漏れず、帝国建国にも多くの血が流れた。

 だから、初代皇帝は危惧したんだ。

 世界線は違えど、歴史は必ず繰り返される。

 そこに人がいる限りな。


 二つ目は、上下水道だ。

 初代皇帝は建築関係の知識があったのかどうか分からないが、上下水道の設備が完璧だった。

 上下水設備の不備による、疫病の発生の記録も無かった。

 つまり、ウィーンのようなことは起きなかったんだ。

 それに極めつけは、疑似水洗トイレだ。

 この世界に来た時はなんとなく使っていたけど、よくよく考えてみれば可笑しいよな。

 中世以下の技術レベルしか発展していないこの世界で、水洗トイレがあることは明らかな違和感だ。

 ウォシュレットとまでは行かなかった、それに俺はウォシュレットをあまり利用しないからな。


 三つ目は、成人した国民の識字率の高さだ。

 この国は教育制度が整っている。

 平民の子供には字が読めない者も多いが、その殆どが各街に設置されている国運営の学習塾的な場所で簡単な読み書きと算術を習う。

 完璧な教育とは行かなくても、全員が基礎的なことは学習できるって訳だ。


 他にも色々な制度があったのかもしれない。

 でも現代まで残っているのは、これぐらいだ。

 重要なのは封建社会の中で何世代にも渡って、これだけの制度が維持されてきたって事だ。

 伝承や継続というのはとても難しい。

 AさんとB君は喧嘩をしないと誓っても、その息子のA'さんとB'君は殺し合いに発展する喧嘩をするかもしれない。

 つまり、伝承なんてその時を生きる人間の都合で簡単に塗り替えられてしまうって事だ。

 恩恵を受けることと優越感を得ることに勤しんでる貴族連中にとって、不都合や理不尽なルールはあったかもしれない。

 それでも、これだけの制度が維持されてきた。

 だから、この帝国が維持されてきた。

 口に出来ないほどの蛮行を犯した糞皇帝だっていたはずだ。

 メジャーな所で言うと【猟奇帝】だな。

 

 とにかく、初代皇帝の転生者説は俺の中で濃厚だ。

 あくまでこじつけた俺の主観だし、実は現代まで残っているけど俺の知識が足りない所為で、見つけられていないだけなのかもしれない。

 ていうか、そっちの可能性の方が高いな。


 俺は、そこまで頭が良いわけでは無い。

 だから、現代知識で技術革新をもたらして……みたいなことは出来ない。

 そのくせ、銃なんて代物を作ってるんだから世話無いよな。

 知識に偏りがありすぎるんだよな。

 まじで、殺人狂かよ。


 だからこそ、この話の重要な点は初代皇帝の功績にある。

 彼は農民の生まれでありながら、皇帝にまで上り詰めた。

 仲間と死線を潜り、時には失い、時には出会い、それを繰り返した。

 莫大な力を授かり、それを使って自身の道を切り開いてきた。

 この帝国の頂点に君臨したんだ。

 

 つまり俺にも、そういう役回りが来るかも知れないって事だ。

 初代皇帝と同様かそれ以上の。


 俺は神様の存在は信じない。

 神は人に恩恵を与える変わりに、人から信仰を得る。

 俺はその恩恵を受けてない。

 この転生が恩恵?

 それは違う。

 俺は、なんの前触れも無くこの世界に来た。

 完結を迎えてない漫画がたくさんあったのに、この世界に連れてこられた。

 もう七年経ってる。

 殆ど完結したかな。

 ワン○ースは結局なんだったのか。

 船は暗黒大陸に到着したのか。

 最初に二年間は、こればっかり考えてた。

 やり終わってないゲームもあったな。

 とにかく、俺は人生を生きる為に楽しみにしていた娯楽を取り上げられたのだ。

 だから、この転生を神からの恩恵だとは思ってない。


 ただ、運命は信じてる。

 人生には、何かしら大きな力が作用しているかも知れないって事だ。

 これは、俺が転生者だからかもな。

 突然こうなってしまったからには、何かしらの理由があるはずだ。

 だから、修練を積む。

 俺の本質は自堕落的な人間だ。

 基本的に自分の興味関心の向かない物には、一向に気力が湧かないインドア人間だ。

 だからこうして、何かしらの理由が欲しい。 

 

 初代皇帝の痕跡を探しているのも、それが理由だ。 

 彼等が、自分たちと同じ転生者に宛てた何かがあるかもしれないから。

 

 結果、何も無かった。

 帝都にある帝城に置いてあるかも知れないけど、それを見るのは四年以上先の話だ。

 今は、朝訓練でアルマンが言ってくれたように基礎訓練期間なのかもしれない。


「よし、やることは決まったな。」

『おわったー!あるじーロキとあそぼー。』

「どれどれ………」

 

 ロキが勢いよく俺に飛びつく。

 やっぱり、勉強がストレスになるのは生物共通のことなのかも知れない。


「うん、全部間違えてるよ。」

『ええ~も~べんきょ~いやぁ~』


 涙目で訴えるロキ、クリックリの目玉一杯に涙を溜め込む。

 

「わかったよ。それじゃ、いつもの部屋で訓練しようか。」

『くんれん!やったぁ~!』

『ユークリスト、ワシは……?』

「ノートも終わって良いよ。」


 ノートは二日酔いみたいに黒ずんだ表情をしている。

 少し気持ちが悪そうだ。

 この調子でこれを一週間続けよう。

 其れを以て汝の贖罪は終わりを迎えるのだ。 

 まあ、胃袋訓練の効果次第だけどな。

 


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