第12話:トラウマと姉
俺はあいつを殺した事は後悔していない。
懺悔も謝罪もするつもりもないしな。
当たり前だ、連中は盗賊であの場で俺とスティアの命を脅かした。
俺の腹を蹴り飛ばして。俺の顔面を踏んずけたんだ。
自分とスティアの命を守るために殺した。
正当防衛を主張すれば、大陪審だって無罪を言い渡す。
一度刺しただけだ、あの場の俺は冷静だった。
秩序の無いこの世界で、必要最低限のルールを守ったんだ。
あいつを殺して悲しむ奴なんていない。
むしろ感謝されてもいいぐらいなんだ。
「なのに………なんでだよ………」
その問いに答える者は無し。
ーー
「ロキ……苦しいよ」
『あるじ!おきたおきた。』
最近の朝はいつもこうだ。
ロキは夜眠れない俺を気遣って、壁に張り付いたヤモリみたいな姿勢で、俺の顔面に張り付いてくる。
だから、魔力不足での寝落ちとロキによる呼吸困難での目覚め。
これがモーニングルーティンってやつになっている。
「おはようございます!ユークリスト様。」
「おはよう、スティア。」
扉を開けると、スティアがいつも通り待っていた。
「ユークリスト様、寝不足ですか?」
「ん?いや、大丈夫だよ。」
やっぱり、俺の顔色はかなり酷いモノらしいな。
スティアとはここ最近、ほぼ付きっ切りで手伝ってもらっている。
だから、尚更わかるんだろうな。
「………そうですか。」
「それよりも、今日の朝食は何かな?」
軽い雑談をしながら、スティアと共に食事室の方へ向かう。
最近のスティアはとてもよく働いている。
今日だって俺を起こしに来る前に、厨房で朝ごはんの手伝いもしてくれたんだろう。
ーー
部屋に入ると、既にルルティアが席について朝食をとっていた。
俺が、ルルティアの後に食事室に入る。
つまりそういう事だろう。
ここ最近の俺は、ルルティアよりも起きるのが遅い。
「ルル姉、おはよう。」
「おはよう、ユーリ!今日も地下室に行くの?」
ルルティアはあんまり変わっていない。
というのも中身の話だが。
外見は、元気いっぱい女の子から、貴族令嬢の雰囲気に落ち着いた。
最近では、お茶会などに参加しているためか身内以外の人と会うときは、令嬢モードに切り替えることもできると言っているが、正直怪しい。
「そうだよ、完成したらルル姉にも見せてあげるよ。」
実際あんまり見せたくない。
以前、何を隠しているのかと問い詰められてはぐらかした処。
グロリアに部屋の壁を破られて突入されたことがある。
「ホント!約束よ。」
「うん、やくそく。」
ルルティアとの約束を取り付け、俺の方も食事の為にスプーンを手に取る。
出来立ての朝食といえどもこうしてスープが飲めるのは、スティアのお陰だ。
忘れていると思うが、俺は猫舌だ。
北部生まれの猫舌。
最悪の条件でしかないが、スティアは朝食時に俺が問題なく飲めるように、ちょうどいいスープを作って屈れている。
前に夜食を作ってきてくれた時に、食べなかったら『まずかったんですか?』と言って泣かれた。
落ち着かせるために、熱いものが苦手と話したら、次の日からスープの温度を気遣ってくれた。
最初から完璧とはいかなかったが、少しずつ慣れていき、今では問題なく口に運べる温度を分かってくれている。
ちなみに、食事の温度が俺と同じのワグは『冷たい』と文句を言ったところ、次の日の食事を抜かれた。
「ねえ、ユーリ?」
「んっ、どうしたの?」
いつもは明るいルルティアが、何やら神妙な面持ちだ。
俺の関節を外した時以来だろうか。
「体は、大丈夫なの?」
神妙というよりも、少し悲しそうだ。
何て事だ!ルルティアにも嗅ぎつけられていたとは。
いや、ルルティアとは最近朝食の時にしか顔を合わせていない。
誰だ!誰かが俺の状態をルルティアに言ったんだ!
スティアか?それともワグか?
スティアは俺に従順だから裏切るなんてことは無いだろう。
となると消去法でワグか……いや、あいつが俺を気遣ってルルティアに告げ口をするか?
思ったことはそのまま口にする男だぞ。
「………誰から聞いたの?」
「誰からも聞いてないよ。ただ、最近のユーリとっても疲れてるみたいだから。」
「別に問題は無いよ、心配ならスティアとかに聞いてみたらどうかな?」
笑いながら、後ろに控えているスティアの方に目を配る。
スティアは少し気まずそうな顔をしている。
犯人はスティアだろう。
心配しているが故の裏切りだ。
俺の為を思ってルルティアに言ったんだろう。
だが、それは俺の望むところではない。
こういう精神的な問題は、人に言ってどうこう出来る問題ではないんだ。
しかし、スティアは自分で考えて俺の為に行動した。
スティアが自分の意志でだ。
嬉しさと、裏切られたことによるショックが半々といった処だな。
「スティアに聞いたけど、何も教えてくれなかったわ。」
「わっ私は、何も言ってません!」
違うと言っているが、実際の所は分からない。
必死に弁明するスティアの姿が、暗に隠し事があると言っているようなものではあるが。
「最近、ユーリの顔色がとっても悪いの、お姉ちゃん気づいてるんだから。」
鏡を見て顔色を確認していたつもりだが、俺が思っているよりも俺の顔は酷いモノなのか?
自分の事は都合よく見えるらしいな。
「ルル姉に心配されるほどでもないよ。」
「あっ、ちょっとまだ話は………!」
『あるじ、ロキまだおわってない!』
「地下室に持って行って食べたらいいよ」
俺はそう言って、ルルティアの静止を聞かずに、食べ終わっていない朝食を置いて食事室を後にして、地下室の作業場に向かった。
俺と同様に、ロキも食事が終わっておらず少し不機嫌そうだ。
食事室を出た俺は、ロキとスティアと共に地下室の方へ向かう。
「スティア………」
「はい、何でしょうか?」
「明日から、朝食は地下室で食べることにするから、そこに運んでくれ。」
「えっ?いいのでしょうか?」
「このままじゃ、ルル姉に詮索されるだけだからね。自分の事は自分で解決するよ。だから、スティアも他の人に喋っちゃいけないよ。」
「……………はい。」
スティアの声のトーンが落ちる。
かなり、落ち込んでいるのだろうか。
それでも、彼女にできることは無いんだ。
ーー
そんな生活が一週間ほど続いた。
俺はほとんど地下室に篭り切ってしまった。
食事はスティアに運んでもらい、眠くなったら【錬金術】で作ったベッドで眠る。
例の夢は、毎度の如く見ることにもなった。
鏡を見ていないから、自分の顔色がどんなモノなっているのか全く想像できないが、かなり酷いモノなんだというのは分かる。
スティアの顔色が悪くなっているからだ、それも俺を見るたびにだ。
頑張って笑ってはみるが、それもさらに彼女の顔色を悪くする要因の一つだ。
銃弾政策の進み具合はというと、かなり好調だ。
俺の手が小さいせいか、細かい作業はお手の物だ。
銃弾の底にいくつかの刻印を施す事は出来たが、問題も残っている。
ミスリルは数が少ないのだ、
だから、実験に使えるミスリルの数を確保するために、フラムベリカとの交渉材料である【従魔術】のレポートに取り組んでいる。
内容はロキに芸を仕込むことだ。
カイサルに頼んだところ、ロキには二つも特異魔法に適性があることが判明した。
【鑑定術】と【変体術】だ。
さすが、危険度Sと云ったところだな。
【鑑定術】は言わずもがな、万物を鑑定できる魔法だ。
そして【変体術】、これは字面はあれだが簡単に説明すると。
万物に変身できる魔法だ。
これが、悪魔猿が恐れられる所以だ。
人間、魔獣、無機物、生物、昆虫。
あらゆるモノに変身して、紛れ、強襲する。
しかも、変身した事による身体機能の低下は無い。
単体での戦闘力もかなり高いうえに、狡猾で残虐である。
公爵家の騎士団が討伐した際は、カイサルの【鑑定術】があったおかげで、変身を看破することが出来た。
もしいなかったら、騎士団の全滅も有り得た話だったそうだ。
そんな魔獣の腹を掻っ捌くとは、我が姉恐るべしだな。
まさに、ロキの名前に恥じない魔法だな。
だが、俺が焦点を当てているのは【鑑定術】の方だ。
俺の【解析】よりも精度が高く、俺よりも魔力が多いから魔力の節約にも使える。
それに、戦いにおいて情報戦は何よりも重要だ
俺は魔力量が少ないのだから、出来るだけ自分の戦闘パターンに相手を引き込む必要がある。
搦め手裏手、何でも使って勝利を手繰り寄せるんだ。
だから、ロキが鑑定したことを俺に教えてもらうことが出来れば、相手の情報を吸い取ることが出来るのではないだろうか、という仮定を立てたところ。
ロキが文字を読めないことが判明した。
つまり鑑定は出来るが、鑑定で出た結果を読むことが出来ない。
そりゃそうだろ。
まだ二歳だぞ。
だが、出来ないのであれば、出来るまで教え込めば問題は無い。
つまり、ロキに読み書きを教える。
それが今回のレポートのテーマだ。
実際、良いところまで進んでいる。
日本語で言うところの五十音は覚えることができた。
1から100迄の数字も覚えた。
今の所、研究は順調に進んでいる、と。
『あるじ、みてこれ!』
「できたか、どれどれ。………うん、よくできてるぞ。ちゃんと自分の名前が書けたな。えらいえらい。」
『ふふんっ、ロキえらい?』
「ああ、えらいぞ。」
自分の名前を書けるようになったロキの頭を撫でる。
ロキは嬉しそうに俺の手に手を添える。
既に、文字を書けるようになったのだが、こうして定期的に自分の名前を書いて俺に褒めてもらいに来る。
まだ二歳だからな。
「おい、そろそろ訓練の時間だぞ。」
ワグが部屋に入ってきた。
ワグは、この地下室に缶詰めになっていない。
自分の訓練をしつつ、俺との稽古の時間になったら地下室にやってくる。
ワグが来たということは、今は昼下がりぐらいだろうか。
「ああ、もうそんな時間なんだね。それじゃ、ちょっと待ってて。」
「………………」
ワグがそこで待っている。
いつもなら、隣の訓練場の方に行っているのに。
「まだ何かあるの?」
「……………いや、何でもない。」
ワグは、少し考え込むような顔をした後に隣の訓練場の方に行ってしまった。
俺からは見えなかったが、スティアも不安そうな顔をしている。
何か言いたいことでもあったのだろうか?
作業をいったん中止にして、訓練場の方へ行く。
訓練場では既にワグの方が準備を済ませて待っていた。
「それじゃあ、始めようか。」
「始める前に、言いたいことがある。」
訓練前にこんな前置きをするなんて、ワグらしくは無いと思ったが、彼の方から何らかのアクションを起こすことは悪いことではない。
ワグとスティアの方で一瞬だが目が合う。
「いいよ、何?」
「俺は、お前の騎士だ。」
何を出だすのかと思えば当たり前のことを。
「そうだね。」
「お前が行く道に立ちはだかる者を排除する、それが俺の仕事だ。」
「…………」
「ならもし、その立ちはだかる者がお前自身なら?俺はどうすれば良い?」
「………言っている意味が分からないな。」
意味は分かる。
ワグも俺のおかしさに気づいたんだろう。
こいつなりに、色々考えたのかもしれない。
「…………それもそうだな。それじゃあ、訓練を始める。………恨むなよ。」
最後の呟きは聞こえなかった。
ワグは、言いたいことを引っ込めていつもの様子に戻った。
ワグは短剣を、俺はいつも通りの細身の剣を取り身構えた。
いつも通りの稽古が………今日は少し違った。
ワグは本気だった。
いつもなら、短剣だけを使っているが。
いまは、蹴りを交ぜて投剣を交ぜて、魔闘術を使う以外のすべてを使ってきた。
「っ!おい!これは訓練だろ!?」
「……………」
剣撃、蹴撃何でもあり。
ワグの戦闘は蹴りがメインだ、双剣はそれを補助するための飾りにすぎない。
カポエラのようにゆったり、上下左右に動き、俺の視線を誘導したうえで反対方向から攻撃が飛んでくる。
それが分かって対応出来るなら良いが、それができない。
フェイクかどうかが分からないからだ。
全ての攻撃に殺気を織り込んで攻撃が放たれる。
さっきから防戦一方だ。
どうにかしなければ!
俺は剣を盾代わりに、ワグの蹴りを受けるとその威力に流されるように、その方向へ蹴りだし、彼との距離を取る。
詠唱はいらない。
壁を背にしワグに対して空いている手を向けて魔法を放つ。
【火弾
ワグは放たれた【火弾】を蹴撃で搔き消す。
魔闘術は、あるレベルまで達すると魔法を掻き消すことが出来る。
反魔法の効果がある。
これも、帝国民から、東部の人間が恐れられている理由の一つだろう。
「くそっ!」
そのまま、ワグがこちらの方に詰め寄る。
だが俺もこれで終わらせない!
背にしている壁に手を当てる。
【変形】
壁から突起を出し、俺の方に向かってくるワグの方へぶつける。
しかし、寸での処で避けられた。
それからは覚えていない。
魔力切れで倒れたわけではない。
恐らくワグの蹴りが、俺に入ったのだろう。
気絶してしまった俺は、そのまま床に倒れた。
「……これで良いのか?」
「………うん。ごめんなさい、ユークリスト様。」
「謝るぐらいなら、最初からしなければいい。」
「で、でも。ワグも見てて分かるでしょ?最近のユークリスト様、とっても様子がおかしいの。」
「確かにな、それについては反対しない。」
「ユークリスト様、私たちの事嫌いになるかな?」
「……かもな。」
「どうしよう……」
「泣くな。こいつの事だ、悪いようにはしないだろ。」
「そうかな?………それじゃあ、呼んでくるね。」
「ああ。後、猿のエサも持ってこい。」
そんな従者たちの会話を聞くことはできなかった。
ただ糸の切れた人形のように、その場に倒れこむことしかできなかった。
ただ、皮肉なことにあの夢を見ることがなかった。
こんなことは久しぶりだった。
ーー
目覚めたときには、俺はベッドの中に居た。
「…………あの野郎、後で文句言ってやる。あれ……?」
いつもと違う光景、ここ一週間見なかったモノがそこにはあった。
高そうな家具と、窓が取り付けてあった。
つまりここは地下室ではなく、屋敷の中にある俺の私室だ。
なんでこんなところに移動してんだ?
足元を確認すると、腹を見せて寝転がっているロキが居た。
従魔と主人は感情を共有しているらしいが、俺が倒れた時ロキはどうしていたのだろうか。
地下室のモノぶっ壊してなきゃいいけど。
「起きたのね、ユーリ。」
声のした方向を見る。
部屋の中は暗くてあまりはっきりとは見えなかったが、この声は聞き覚えがある。
この七年間何度も聞いた声だ。
俺を一番近くで見てくれて一緒に育った人。
「ルル姉……」
直ぐに理解した。
この人だ。
この人が俺をここまで連れてきたんだ。
そりゃそうだ、この人に頼まれたら俺でも逆らえない。
ルルティアは部屋の隅にある椅子から立ち上がると、ゆっくりと俺の方に向かって歩いてきた。
「ルル姉、顔を出さなかったのは謝るよ。けどこれは、ちょっと反則なんじゃないかな?僕の従者たちを買収するなんぐふっ。」
俺との距離がなくなり、ルルティアは俺を強く抱きしめた。
幼いころ俺の肋骨を何度も軋ませたベアーハグは、とっくにホエールプレスに進化している。
「ルル姉、くる、しいよ。はなしーー」
「お父様なら、きっと大丈夫だよって言う。」
俺の話を聞かずルルティアは続けた。
「お母さまなら、こうすれば良いと解決してくれるわ。フラムベリカお姉様なら、息抜きだって言って色んな所に連れて行ってくれる。トーラスお兄様は、きっといい話をしてくれて、バレットお兄様なら励ましてくれるわ。」
家族の名前を一人一人挙げる度に拘束が緩やかになっていく。
「でも、私は何もできない。……ユーリのお姉ちゃんなのに。」
「…………」
「ユーリが困っている時に何もしてあげられない。」
声が震えている。
きっと泣いているのだろう。
傍目から見れば、『それを困っている本人に言うか』とも思うが、これしかできなかったのだろう。
ルルティアも苦しんだのだ。
俺が何に悩んでいるかも知らずに、どうすればいいか分からなかったのだ。
「ユーリ、ユーリ、大好きよ。これからもずっとお姉ちゃんがいるわ。だから、ここにいて。いなくならないで。一緒に朝ご飯を食べましょう。一緒にお勉強をしましょう。新しいお茶があるの一緒に飲みましょう。ねえ?だからぁ。」
言葉にならない声が俺の中に入って行く。
俺は、あの時誰がルルティアに告げ口をしたのか疑ったが。
そんな事は無かったんだ。
彼女は気づいていたんだ。
考えてみれば当たり前の事だった。
この屋敷の中で、いや俺の人生の中で一番長い時間を共に過ごしたのが彼女なんだ。
俺が生まれた時から一緒に居た。
初めて言葉をしゃべった言葉は『ルル』だった。
周りに誰もいなかったから選んだだけだが、自分の名前を呼ばれは彼女の喜びようは、今でも鮮明に覚えている。
初めて立った時に一緒に居たのも彼女だ。
『ユーリが、ユーリが立った。』その喜びはアルプス山脈を軽々と超えた。
初めて勉強した時も。
初めて魔法を使った時も。
初めて剣術を習った時も。
初めて本を読んだ時も。
初めてフラムベリカのお土産をもらった時も。
初めて屋敷の外に出た時も。
全ての瞬間にルルティアはいた。
気づかないわけがない。
きっと、俺が思っているよりも早く気付いたんだろう。
俺が思っている以上に悩んでくれたんだ。
そして、その矢先に俺が引きこもってしまった。
どれだけ、ルルティアは傷ついたんだろうか。
「ルル姉。」
「うん。」
「誘拐されたときね。」
「うん。」
「人を殺したんだ。」
「うん。」
「自分とスティアを守るためだった。」
「うん。」
「でも、殺しちゃった。」
「うん。」
「怖かったんだ。」
「うん。」
「一人っきりで、不安だった。」
「うん。」
「人を殺した僕を見て、ルル姉たちはどんな顔をするんだろうって。」
「うん。」
「嫌われるんじゃないかって、怖かったんだ。」
「嫌わないわ、ユーリは私の事嫌い?」
「ううん、大好きだよ。」
「私もよ。」
「………他にも色々あるんだ。」
「うん。」
「最近、ロキに文字を教えてるんだ。」
「うん。」
「あと、作っている武器がもう少しでできそうなんだ。」
「うん。」
「出来たら、真っ先にルル姉に見せるよ。」
「ふふっ、楽しみにしてるわ。」
「ルル姉と一緒に魔獣狩りにも行きたいな。」
「一緒いきましょう、何かあったらグロリアが守ってくれるわ。」
「新しいお茶があるんだよね。」
「ええ、ユーリもきっと気に入るわ。」
「楽しみにしてるよ。」
それからも、俺たちはいろいろなことを話した。
と言っても、大体話したのは俺の方だ。
いつもとは立ち位置が違い、ルルティアは聞き役に回った。
その日は、そのまま姉弟二人ベッドで眠った。
悪夢を見ることは無かった。
その日から、悪夢は止んだ。
俺は、大丈夫だと言って欲しかったんだ。
家族に大丈夫だ、傍にいると。
そう言って欲しかったんだろう。
あの日、人を殺すことに躊躇った理由は、家族にどう見られるか怖かったからだ。
緊急事態に人を殺したとはいえ、それはずっと俺の中で燻り続けていたのだろう。
それの火種をいち早く見つけたのがルルティアだ。
その日から、俺は地下室生活を抜け出した、わけではない。
作業室は地下にあるから、必然的に地下に居るしかなくなる。
しかし、ちゃんと朝食は食事室でとり、一日一回は必ずルルティアの所でお茶会をしている。
お茶会の主導権は完全にルルティアにある。
話の主導権を握れたのは、あの夜が最後だ。
あれから一か月が経った。
現在俺は、ロキとワグとスティアを連れて屋敷の外にある【ブレーメンの森】に来ている。
今回の魔獣狩りで、新兵器の試験運用を行う為だ!
お読みいただきありがとうございました。
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