表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮を追い出されて  作者: まつ
6/6

6

 魔獣の森の探検は僕の日課になっている。僕はまだ森の奥深くまで行っていない。あれだけ戦って結局、(やかた)の周りの戦いに明け暮れていたのだ。アバター10体と僕自身も加わっての魔獣との戦いはやめられない。僕はだんだん戦闘狂になっている。


 最近影丸が僕の相手をしてくれる。影丸の精神魔法は恐ろしい。こいつなら余裕で一国を支配できると思う。僕でもどう戦えば良いのかわからない。いや、もしかしたら他にも僕を凌駕するゴーレムが身近にいるのかも知れない。魔獣の森から離れた商会のゴーレム達も何らかの能力があるかも知れない。ただここほど魔素の影響はないだろう。


 僕は自分だけ遅れるわけには行かない。忍者隊に忍術の基礎を徹底的に習う。それを魔獣の戦いですぐに使う。これは無謀を通り越している。練習中の技で魔獣相手に命を懸けるのだ。しかもアバター10体と自身の6根(ろっこん)を共有した状態で試そうというのだ。たとえば自分の感覚器官の目だけを共有しても22個の眼球で見ている訳だ。耳を共有しても22個の耳で魔獣の気配を読もうとしている。しかも共有してるのは意識を持たないアバターである。自分の意識を11に分割して戦うのと同じだ。練習しかしてない技でだ。


 戦いは凄惨を極めた。忍びの基礎の技で戦うのだ。伊賀の刀術、伊賀の体術、伊賀の鎖分銅、伊賀の走法、伊賀の隠形、伊賀の分身の術、伊賀の木の葉隠れ、エトセトラ。最後には伊賀の遁走術で逃げ出した。いちばん使った隠形(おんぎょう)遁走術(とんそうじゅつ)だけは、どうやらマスターした。


 影丸はどうやら伊賀の服部半蔵の技を受け継いでいるみたいです。


 凜が傷だらけの僕を見てびっくりした顔をしていた。「だんなさま、大丈夫なのですか?」「問題ない、傷の手当てを頼む」凜のかいがいしい手当のおかげで見る見る傷は治癒していく。僕はこれも濃い魔素のなす技なのかと不思議にみていた。


 傷がいえると同時に僕は忍者隊に手ほどきをうける。ひとつの技に何千回の攻撃と受けをおこなって、のちに勇んで魔獣の森に打って出る。

 今日は影ばしりの実践である。魔獣の陰に隠れて、ともに走る技、或いは攻撃するわざである。はた目には11人の忍び見習が魔獣の陰に隠れて、マラソンをしている。

 途中でさすがに魔獣もおかしいと思って、僕らに攻撃を仕掛けてくる。僕は攻撃を魔獣の陰から繰り出す。そして魔獣の陰に逃げる。執拗に繰り返すことによって、魔獣は自らの陰に怯えるようになる。僕は10日間掛て影走りをものにする。


 今日は忍者隊から殺気飛ばしを教わる。あらぬ方向から殺気を飛ばすのだ。忍者隊は僕に実践して見せる。正面から対峙しているのに、真後ろから殺気が飛んでくる。一瞬僕も反応する。これを極めたら分身の術のような効果もある。戦いで相手は複数かも知れない。後方の敵は姿を見せないかもしれない。これは使える。


 これからさっそく魔獣の森に入る。魔獣の前面に立つ。後方より殺気、だめだ、そのまま魔獣の陰に隠れて走る。右から殺気、まだ駄目だ。また魔獣の陰に隠れる。左から殺気、うまくいった。左に反応した。右の陰から貫く。どっと魔獣が倒れる。瞬間魔獣の陰から岩場の陰に隠れる。隠密。後方より殺気。次の瞬間魔獣が反応、魔獣の陰にはいる。


 アバター10体と何度も殺気飛ばし、影潜り、影走り、隠密、遁走、追跡を繰り返した。次に殺気で遊んでみた。魔獣同士が争っている場所で、殺気立って攻撃を仕掛ける瞬間、それにシンクロさせて一瞬強い殺気を投げつける。予想外の殺気に魔獣の体が硬直する。瞬間無防備に相手の魔獣の攻撃を受けて絶命する。


 僕は今、伊賀流走法について学んでいる。縮地といわれる技術がある。一瞬で体を移動させる方法である。実際実戦で投入されたら、相手は何もない所から突然転移して攻撃を仕掛けたと思うだろう。これは身体に覚えさせるしかない。何週間も単調な練習を続ける。一人の練習から、対人戦の練習に入る。忍者隊11人に対し、僕は僕自身とアバター10体で戦った。勝負に関係なく48時間のぶっ通しの練習である。


 僕は縮地を使った。忍者は不完全の縮地を見破っている。僕の出現位置にあらかじめ剣を置いて僕の自滅をまった。僕は黒い布を使って剣の影が走ったと思わせた。相手は何の陰かわからないが、何かの影が走ったと認識した。瞬間僕は縮地を再度はなって、相手の陰にもぐった。僕が先手をとった。僕の勝だ。忍者が殺気を飛ばした。僕は振り向きもしない。しかし僕がとらえたと思った忍者は、影が崩れ空間に霧散した。同時に僕の後ろから剣が打ち下ろされる。何が虚で何が実なのかわからない。どう避けたのか僕にもわからない。ただ密度の高い戦いが延々と続く。


 今日は縮地の実践検証である。防御壁の外に出て、魔獣との戦いである。僕は黒い布を手品のように放射状に展開して影を走らせた。走る陰に潜って縮地を使う。突然空中に出現した僕に、魔獣は完全に虚を突かれた。どおっと倒れる。一瞬にしてアバターにより10体の魔獣が死んだ。


 魔獣の背中に突然人間が乗った。魔獣はびっくりした。自ら転んで人間を押しつぶそうとする。人間は遊ぶように魔獣の体にまだ立っている。二回転、三回転、まだ離れない。パニックになっている。殺気、気配、気殺、多くの技を延々と試す。魔獣の頭脳が現状を処理出来なくなったとき、僕は意識を乗っ取れるのではないかと思った。


 いま僕はゴーレムの五感を共用している。ゴーレムの指揮を行うとき、僕は並列思考で戦場を理解して指示をだす。同じことを魔獣におこなった。僕が魔獣のすべてを支配したのだ。魔獣を従えて魔獣を殺す。


 僕は魔獣の脳を支配することに夢中になった。だんだん要領もわかってきた。時間も短縮されていく。魔獣が僕を認識する瞬時の間に完全支配ができる。


 支配しなくとも幻想を見せることも出来る。自殺させることも出来る。全身を激痛でむしばむ事もできる。痛みは脳が痛みと認識するから痛みなのだ。


 僕は伊賀木の葉隠れが出来ると思った。魔獣に向かって僕はゆっくり歩いていく。あまりに自然なので魔獣は危機管理の判断に迷っている。唐突に魔獣は構える。目の前に僕がいる。魔獣が逃げるため振り向くと辺り一面木の葉が舞っていた。魔獣が眠りに就く。美しい魔獣だ。僕の力で魔獣を調教したら一緒に生活出来るかも知れない。


 僕は魔獣を隷属出来る力にだんだん恐怖を感じた。人間ならもっと簡単に隷属させることが出来るかもしれない。人に知られたらまずい能力かも知れない。研究開発はするが隠そう。


 僕が魔獣の森に入っていく目的もだんだん変わってきている。すぐにあの美しい魔獣がとんでくる。僕に甘えるようにすり寄ってくる。(やかた)で飼えるかな? 凜が許してくれるかな。


 王宮は僕を辺境伯にして、魔獣の森の拡大部分の土地をくれた。僕は嬉しくない。新たに森に喰われた土地は、今まで貴族の管理していた土地だ。引き続き管理を任せればいいじゃないか。


 僕は魔獣を隷属させて、魔獣の軍団を作ろうかとも思ったが、魔獣の誕生のメカニズムが分からなければ怖くて出来ない。何か不可思議な人を超えた者の意思を感じる。僕は今のままでいい。ここで十分にくらせる。森と街の力の拮抗した状態のまま、このたまらない緊張感があってよい。住めば都だ。もうなれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ