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王宮を追い出されて  作者: まつ
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 僕はあわせて10体のゴーレムアバターを作った。

魔獣の森で意識がなくなる寸前まで激し戦いを繰り返した。部下100名もそれにつきあった。それは決して魔獣の駆除を目的にするものではなかった。その過程で多くの死傷者が出たが止めなかった。ゴーレムの自動修復能力を上回る戦いが毎日続いた。


 魔の森の管理者から定例会議で報告があった。どうやら魔の森の拡大が止まっているようだ。僕が魔獣の森で魔獣狩りの練習をしているのが原因かどうかまでわからない。もしそうならうれしい。まだ王国にも隣国にも人的被害が出ていない。この事は影丸を通じて王宮にも報告した。


 久しぶりの定例会議で、魔獣討伐隊を以前のように1000人にすれば、街道の復元も出来るのではないかと森の管理者から提案があった。今は死傷者も多くなかなか数が揃わない。ゴーレムを作っても現状維持がやっとだ。でも現状は楽しい。僕たちの力で魔獣の森がとまっている。


 今日もゴーレムを作る。前は作れば数が増えっていった。しかし今は違う。ゴーレムの消耗も激しい。この緊迫した空気が快い。街の防御壁の外側に重機型ゴーレムが二十四時間動き回っている。その周りを灰色狼の群れが護衛している。瞬時でも休めば森は樹木を茂らそうとする。ここでも昼夜を問はない戦いが展開されている。


 王宮でも魔獣の森、若しくは魔の森と言われる場所の状況は把握している。王国の軍隊を投入しても被害が多くなるだけで、森の進行は止まらいだろう。国が弱体化すれば他国にすぐ付け込まれる。魔の森の男爵の働きが有能な家臣より伝えられた。その家臣はすぐに姿をくらましたが、情報は事実だった。王が男爵に辺境伯の位と周辺の貴族に魔の森の対策に限り強権を振るえる権限を与えようとした。しかし男爵に連絡がとれなかった。王が男爵に与えた領地まで行く街道がすでに森に呑み込まれているのだ。


 男爵領の兵力を何とか150名までもどせた。このまま順調に兵力を回復すれば、街道を元の状態に戻せる。僕も忍者型ゴーレムを作ったあとで、アバターゴーレム10体と戦闘に出る。戦いは一進一退だが街の兵力が増えている。蜘蛛魔獣と戦うが、どうも勝手が違う。僕は砂魔法で砂塵を起こし、糸の粘液を砂でコーテングした。アバター10人と起こす砂塵は渦を巻き、森と一緒に蜘蛛を細かく磨り潰した。


 忍者型ゴーレム200人態勢となり、過酷な実戦のなかで一流の忍者に成長した。いよいよ街道を復元しようと思う。重機型ゴーレム20台を5台づつ並べて、街道を復元する。重機の前に20人の忍者隊、重機の周りに忍犬の群れ、重機の後ろに忍者隊、その後ろにまた重機、忍犬の群れといった態勢で壱の砦まで街道をつくる。


 「街道の付近の魔獣は駆逐する」僕の命令に忍者隊がすぐに街道の両側より森に100mまでの魔獣を切り殺す。


 僕は隊長に話しかける。「この街道は毎日魔獣を駆逐しないと使いものにならないね」「男爵様、私たちはペガサスがあるから、あまり通る事はないですね。弐の砦の警備兵を通行人に同行させるのが良いかもしれませんね」僕も何か割り切れないものを感じながら、近所の付き合いから草刈りをして、きれいにしているような感じを覚えた。森から突然魔獣が飛び出してきた。僕は無造作に切って捨てた。しかしこの魔獣の森に留まる限り王宮という近所付き合いも最低限必要なのかも知れない。


 街道の維持のため、重機型ゴーレム20台と灰色狼の群れを、常時展開することにした。あとは人間が尋ねて来るのは王宮関係しかいないので、街道沿いの砦の兵と街の街道担当の兵に、付き添ってもらう事しかない。


 また魔獣が波のように襲ってきた。以前はペガサスで上空退避したが、今回はみんなやる気だ。凜までが鎧姿で戦闘参加を表明した。僕はアバターを出陣させる。


 忍者隊も全員砂魔法が使えるので、魔獣はどんどん摩耗していく。力技でがっぷり四つで組み合うのは、はじめてだ。僕も燃えた。アバター10体と僕はシンクロして面白いほどバッタバッタと魔獣をたおす。戦線は僅かに押したり引いたりして拮抗している。すでに戦闘開始から4日目の朝、ゴーレムも魔獣も同じどろどろした魔素で動いている。疲れることも、眠る必要も無い。


 やがって熱気はさり、戦場で僕は凛の膝の上に頭を置き寝ている。兵たちも、てんでに疲れを癒している。あれほど濃かった魔素も薄れていく。


 これからも波のたびに、拮抗した戦いが続くだろう。おもしろい、今度は勝ってやる。


 各地の商会と魔の森の街との交流が盛んになる。ゴーレムにとって魔の森は心地よい故郷のようだ。来る必要がなくとも里帰りのように来る。街は1000人規模になった。砦のまわりにも村が出来た。


 人間社会にとってゴーレムの存在は知らない。外見上は人間と変わらないのだ。社会に協調性もあり、自分の街を支配している暴力団がゴーレムだとだれも思わない。自分が小遣いをためて、せっせと通う風俗店の美人がゴーレムだとだれも思わない。


 「おい、こんどの町内会の旅行は魔獣の森の街に決まったぞ」恐いもの見たさに一番人気の観光地になった。


 魔獣の森の中心地はいまだ探検されていない。これだけの戦いを繰りひろげたのに、いまだ僕が王宮から小さな屋敷をもらった時から、森の調査はたいして変わってはいない。森が拡大して、拡大が止まって、そして以前の水準に戻っただけだ。


 僕はおもう、魔獣の森も自分の身の丈を知っているのじゃないか。僕もゴーレムを作らなくなった。僕も自分の身の丈を知っているのだ。僕の辺境伯の話もいつのまにか、うやむやになってしまった。森もいつの間にか僕の着任当時に戻ってしまった。それでも暴力関係者と風俗関係者が頻繁に行き来している。それに乗っかるように観光客も引きも切らない。しかし一般人は知らない。なぜここが暴力団と風俗業のメッカなのか。


 僕は凛としばらく(やかた)に引きこもることにした。血の高ぶりはなかなか収まらない。僕は野獣のようになっている。そんな僕に凜は優しく微笑んでくれた。館のドアのカギを閉め凜を逃がさないようにする。凜は困ったように僕をみる。


 王と宰相は男爵の処遇に悩んでいる。宰相は勿論、男爵が王の子供であることを知っている。そして王子を王宮がいままでどのように遇してきたのかも知っている。王子が生まれたのは王の犯罪によるもの、王の最大の汚点である。


 王は生まれた子供に飾りだけの王位継承権を与えた。全員が知っている事実は隠せないと王は思った。子供が幼児から少年になったとき、王は少年に男爵位をあたえ、魔獣の森に領地を与えた。そこには昔は街があったが、魔の森の成長にともない破棄された。このままでは森に喰われる事が分かっていた。王は子供を殺すことにしたのだ。 


 しかしかの有能な家臣が来たとき、不思議なことにすべてを忘れていた。家臣は魔の森の現状を王と重役の心に刻み込んだのだ。忘れる事の出来ない恐怖、恐慌。ではどうすればよいか、その先を家臣は問うたのだ。王は答えを出した。それが少年に辺境伯の爵位を与える事、付近の貴族に強権を与える事だ。


 少年の影丸にくだした命令は、王宮の魔獣の森に対する方針を探れ、だった。

 影丸が来たとき王宮は魔獣の森の方針を考えてなかった。だから影丸は過去の経緯をすべて忘れさせて、王宮の方針を決定させたのだ。それを少年に伝えた。

 結果、影丸は少年に馬鹿垂れと言われた。わずかの齟齬があったが、問題ないはずだ。

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