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王宮を追い出されて  作者: まつ
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20220905

 戦いの日々が続いている。戦力はいくらあっても足りない。開拓など夢のまた夢、王宮から与えられたわずかの人間の住める街を守るのが精いっぱいだ。僕はまた考える。僕の作ったゴーレム達は魔素の濃い魔の森を好んでいる。僕は好まない。しかしゴーレムにとって僕は魔の森に、ともにいなければならない理由があるのかもしれない。このまま魔の森が拡大すれば、ここも人間の住めない魔素の濃度になるのか? そのとき僕はどうなるのか。


 僕の食事は凜が作ってくれる。凜は魔素だけで生存のためのエネルギーは充分に摂取出来ているが、僕のため、わずかながら一緒に食事をしてくれる。王宮で手配してくれた牛や豚、鶏も元気に育ってくれて数も増えている。街には川もあり、農業用のため池に食用となる魚も、数多くいる。面倒はゴーレムが見てくれている。

 衣類、日用品など小物は王都の商会より、飛行型ゴーレムによって取り寄せる。しかしここでも麻や綿、絹などは存在する。加工所で女性型ゴーレムによって布に加工される。勿論衣類を作ることも出来る。簡易ながら贅沢を言わなければ、大抵の物は作ることは出来る。

 ここでは金銭を直接消費することは無い。各商会より集めた資金は世界各国に商会を作ることに使われている。この魔の森より女性30人、男性50人が資金を持って、他国の王都や副都、それに準ずる都市に渡り、商会の不動産を購入して風俗店と暴力団を運営する。経営のトップにいる僕が労動に見合った恩恵に浴することは無いように思える。ただひとつ言える事はゴーレムもヘッドである僕が居ないと、生存する目的自体無くなってしまう。僕が生み出したゴーレムは、女王蟻を戴く兵隊蟻と同じだ。そしてその循環が正常に働く場所が魔素の多いこの場所である。


 「君たちに命令する。いままでこの魔の森の拠点を必死に守ってきてもらったが、余力のあるうちに、君たちには他の国に行って新たなる戦いの拠点を作ってもらいたい。君たちは選ばれたのだ、軍資金も十分にある、さあ行け、我々の輝かしい未来のために」僕は男女あわせて80名の戦士を隣の国に送り出した。


 100名の騎馬兵が彼らを安全地帯におくりだすまで同行する。その間にも魔獣が襲い掛かる。僕は魔獣の首を一刀両断にする。真っ赤な血吹雪が美しい。


 彼らが居なくなると、やけに空間が目立つ。また80日後には新たな拠点を求めて、次の軍団が出発する。彼らが安心して新たな拠点を作れるように男爵領を魔の森から守らねばならない。そして僕はゴーレム作りの日常に戻る。


 男爵領から出た男女あわせて80名の軍団は険しい山岳地帯を一路隣国へと向かう。時々出る魔獣もそれほど強くなく順調な旅を続ける。彼らはゴーレムであるため眠る必要も無く、食べる必要も無い。昼夜に渡る20日間の旅で彼らは国境を越えた。そのままさらに10日間、この国の王都に向かう。「隊長、あと少しで王都です」屈強な体を持つ人間型ゴーレム、彼らと人間では基礎体力が違いすぎる。しかし見た目も、もし誰かが彼らに語り掛けてみても人間そのもの。

 「隊長、王都が見えました」兵士の言葉に隊長は微笑みながら言う。「魔獣の森、男爵領を守る仲間のために、今日中に商会をたちあげるぞ」「おう!」彼らは力強く雄たけびをあげる。


 1日目 80名は王都に入るとすぐに建物の購入にはいる。また別の者は商会立ち上げの手続きをするため商業ギルドや各種役所を回る。警察には賄賂と接待を始める。彼らは男爵が所属する国の商会の立ち上げから今日までの運営の仕方まで経験と知識を共有しているのだ。彼らは人間ではないのだ、魔の森がある王国の男爵によって作られた人よりも人に似ているゴーレムなのだ。そしていかなる場合であっても即戦力なのだ。


 彼らはすぐに風俗業と暴力団を営業した。そこで起こるのは、この場所を縄張りとしていた暴力団との抗争だ。夜になった。街のいたる所で殴り合いの抗争がおこった。魔の森で魔獣と命のやり取りをしていたゴーレムにとって地元の暴力団などわけがない。一夜にして王都の暴力団の勢力図は書き換えられた。


 最強の暴力団に守られた風俗店が、30人の美人によって新規店ながらも最大の売り上げをあげたのも当然なことだ。なにせ男爵によって女神にまがう美人に作られた女性型ゴーレムだから。あらゆるサービスを売り物にしている。疲れも知らない。ここには恥ずかしいからこれ以上書けない。


 2日目 昨日の後始末がいっぱい残っている。今日中に抗争はすべて終わりにしたい。人さらい、人殺し、なんでもやる。既存の暴力団全員を裸にひん剥いて山賊として檻に入れて警察に売る。警察署長にはわいろをたっぷり渡しているので捏造した証拠を証拠として裁判なしで鉱山送りにする。とにかくゴーレム達は有能です。


 とうとう男爵領の人の住める場所は杭の内側を除いて森に呑み込まれた。まだ王都に続く街道は維持している。街道上にある一の砦は50人のゴーレム兵が詰めている。砦は円形になっていて馬車や馬を休ませることが出来る広場がある。彼らの任務は街道の維持である。男爵領の街と魔獣との戦いは熾烈を極め、多くのゴーレムが犠牲になった。


 それでも僕は4カ月毎に80人の男女を隣国に送っている。しかしいつまで続くかわからない。魔獣の攻撃のたびに兵も消耗していく。もう脱出を考える時期なのかも知れない。ここに留まりたいという彼らの願いは綻び始めている。僕は彼らを生み出した者として最後まで付き合ってやりたい。


 久しぶりに凛とゆっくり出来た。凜はやはり美しかった。僕は凛が欲しかった。その白い肢体をなぶりぬきたかった。毎日の戦いが僕の血を沸騰させているのだろう。そして同時に穢したくなかった。凜には女神のように美しいままでいて欲しい。悶々とした気持ちの中で凜は僕をそっと抱きしめてくれた。


 定例会議が行われた。会議の議長が無念そうに語る。脱出するなら今です。魔獣の出現には波があります。いまなら被害なく全員が逃げられます。他の幹部ゴーレム達も泣きそうであった。僕は「撤退する」と一言いうと全員が立ち上がり僕にふかぶかと頭を下げた。「この場所の位置情報は記録している。状況がよくなればまたここに集まって街を作ろう」みなふかくうなずいた。


 すべての馬車に荷物を山積みして、僕はアバターゴーレム5体を操って街道を一路二の砦に向かった。一の砦の部隊はしんがりを務めてくれた。総勢約1000人。一部隊80名ごとにわかれて、あらかじめ用意した都市に向かってここで別れる。もちろん各部隊は各地で商会を立ち上げる。


 僕はしばらく40人の兵とともに二の砦に落ち着いた。ここは森の外周部だ。ここから先は他領になる。僕はここで40体のゴーレムの作成に入った。すべて女性忍者型である。これで男女の比率は同じになった。僕のアバターゴーレムも忍者型である。これが魔素の強い砂で作った最後のゴーレム達である。この土地を離れたら、これだけの魔素の濃度に会う事は無い。


 僕はこの地を離れるとなると、かえって迷い始めた。暴力団の親分など僕には向いていない。風俗店の裏の支配人も嫌だ。それなら魔の森につかず離れずにいて、砂魔法の研究、ゴーレムの研究をしてみるのも良い。商会の仕事をしているみんなは、それなり自立している。凜を含む何人かは僕の研究の手助けをしてもらいたい。ここにいる他の人たちは??? だんだん僕は考えるのがめんどくさくなった。凜が僕のそばにきた。背中に胸の突起を軽く押し付ける。押し付けたまま微妙に動く、突起は固くなっている。僕は身体に熱をもってくる。僕は急に立ち上がって忙しいふりをする。「弱虫」小さなこえで凜がつぶやく。泣きそうな顔をしている。


 人間が乗れる飛行型ゴーレム、結局時間が取れなくって断念してしまった。あれから絶え間ない戦闘行為の連続だった。しかしそれがあればまた違ったかもしれない。僕は80人の部下に何の指示も出さないまま、研究活動を再開した。


 人間を乗せる馬、ペガサスを思い描いて何体ものゴーレムを作ってみた。部下に騎乗させてみた。いけると直感で思った。取りあえず人数分のペガサスを作った。ふっと顔を上げると魔の森が目前まで近ずいてきている。何の指示も出さなかったのに、僕を守るため兵達が戦闘を繰り広げている。凜が鎧姿で僕の横に立っている。


 騎馬の兵が砂の鞭を振るっている。魔獣オーガーの腕に鞭が当たった瞬間ひきちぎれた。「やすりの鞭だ」僕は一瞬で砂魔法であることをさとった。別の騎士が騎馬の上から弓を引き絞った、矢はオーガーの鋼の剣も弾く外皮を抵抗もなく突き破った。「砂魔法の矢」別の騎士が剣でオーガーの頭を唐竹に割った。「これも砂魔法だ」僕が一生懸命ゴーレムに砂魔法を使えるように知恵を巡らせていた。その結果が今出たのか。


 僕は自分自身とアバターゴーレム5体を共有の意識のもとでオーガー2体と戦う。6対2と言えども僕が圧倒的に不利だ。船頭が多ければ船は陸にのぼる。相手は一体に船頭一人だ、それが2体。これで勝てたら僕は天才だ。


 周囲には僕の部下80人が見守っている。


 右のオーガーが僕に飛び掛かってくる。No1のアバターが後ろから蹴りをいれる。僕は突っ込んできたオーガーの右目に肘を置く。No5のアバターがオーガーが右目をかばった瞬間、左目に剣を突き刺す。

 左のオーガーが体を反らせて威嚇の叫びをあげる。No2とNo3のアバターが同時に膝に回し蹴りをいれる、たまらずオーガーは後ろに倒れる。No4のアバターが首の後ろに剣を置く。オーガーは自重で喉まで剣を貫通させる。


 戦いは一瞬で終わった。しかしまだまだ完全ではない。次も6対2でいく。

 戦いの訓練は延々と続ける。何日も何日も納得いくまで。

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