3話 冒険開始.....?
受付のお姉さんから貰ったスクロールを開くとその瞬間、スクロールの中に書かれている魔法使いの影のような絵と文字が輝き、同時に燃え尽きたように無くなった。
【職業[魔導士 Lv1]を獲得しました】
その瞬間、頭の中に魔法に関する知識が少しだけ記憶された.....気がする。
「もう一枚とかもらえたりしませんか」
無理だと分かっていたが、一様聞いてみた。
「金貨10枚かかりますがよろしいですか?」
「持ち合わせがないのでまた今度」
銅貨だったり金貨だったり、日本で言うところの硬貨だったり紙幣だったりってことなのだろうか??
やはり世の中、金が全てのようだ。
(鑑定。この世界の通貨について教えて)
【解答不可】
(え、じゃあ金貨とは?)
【銀貨30枚分の価値のある硬貨】
(わからねーよ!!)
本当に不便だ。一つ一つ聞かないと答えてくれないっぽいしなぁ。
…面倒くさい
(銅貨とは?)
【流通している中で価値が一番下の硬貨】
ふむふむ。少しずつ分かってきた。
(銀貨とは?)
【銅貨30枚分の価値がある硬貨】
仕組みは鑑定のおかげで少し理解はできた。
銅貨が1番下のお金で、銅貨30枚と同等の価値があるのが銀貨。銅貨900枚または銀貨30枚と同等の価値があるのが金貨.....と。
しかし物価がよくわからないので金貨だの銀貨だの資金としてどのくらい揃える必要があるかもわからん。
だが、世界は残酷。生きていくためにどうしてもお金を稼がないといけない。
そこで掲示板で依頼を受けようと覗いてみた。しかし今のレベルで受けられる依頼が見当たらない。
[分布不明の不死鳥の捕獲。難度A+]
[コトブス山の頂上に生息する祖龍王の討伐。難度SS]
[ハム湖の奥地に生息する多頭蛇の首を持ち帰る。難度B−]
[ケルン大森林に生息する二角獣の角の回収。難度C]
[ブレーメン火山地帯に生息する竜熊の討伐。難度C-]
どの依頼者を見ても絶望的にも思えたが、その中に農業の手伝いというクエストがあった。農家なら危険もないだろう。それに銀貨5枚といい感じの収入だ.....多分。
僕は掲示板からその依頼書を破り取り、すぐに受付のお姉さんのところへ持って行った。
「何するんですか!」
そして怒られた。どうやらその依頼書の下に書かれている番号を受付で言うことで依頼の契約をするのが普通で、破る必要は全くないとか。
説教が終わると逃げ出すように、実際に農業を営む人のところに向かってみた。
「すいません!依頼を受けた者ですが!」
最初の印象が大事だと思い、大きな声で作業をしている人に声をかける。
「おうそうか!いきなりですまねぇが、ここ一体に水を撒いてくれ」
顎髭を伸ばし振りの深い顔をした背の低いおじいさんが、笑顔で手振りをしながら指示をしてきた。声を聞く感じ優しそうな人で安心した。
急いで水を汲みに行こうとすると。
「どこいくんだ!魔法使えねーのか?」
「は、はい」
「チッ」
「…」
どうやら使えない判定をされたらしい。
働かせてもらえないのは困るので
「ま、魔法は使えませんが、なんでもします!お金が無いんです!雇ってください!」
必死に訴えた。
「はぁ・・・。いいか?飯は二食。寝床は向こうにある馬小屋。一日銅貨5枚!」
「え?」
「何してる。とっとと畑に水撒け」
どうやら雇ってくれるらしい。銀貨5枚じゃなくて銅貨5枚なのが気になるところだが、今の状態でモンスターと戦える自信が無いので、今は農業を頑張るしかない。僕は急いで仕事を始めた!
この農業を営むこの人はなんと、この道50年の大ベテランの人間ではなく小人という種族らしい。身長は120cm程度だろうか?その背の低さにも種族を聞いてドワーフは小さいイメージだし納得が行った。
名前はラーフさんと言い、僕はおやじの愛称で呼んでいる。
農家の仕事は思いのほか大変だ。
毎日朝4時に起きて、三本角のムッキムキの牛の小屋掃除と乳搾りをする。
そして自分より大きな鶏の餌やりをして卵を回収する。餌は穀物類ではなく、血の滴る新鮮なお肉。鶏の分際でまさかの肉食なのだ。わざわざ餌やりと卵の回収だけのために、鉄の鎧を身に纏ってバレないように慎重にやる必要がある。たまにバレて、僕が食べられそうになることもしばしばあった。
面白いことに、デカいくせに卵のサイズは前世の世界と変わらない一般的な大きさだった。だが一羽なのに20個ほどと卵の数が多い。
それが終わると、おやじの手作りの朝ごはんを食べる。おやじの手料理は薄味の野菜を中心としたもので、どれも絶品だ。
ちなみにおやじが作る中で、僕のお気に入りはフワトロのオムレツと、野菜ゴロゴロの優しいスープの二つ。
朝ごはんを食べ終えると、後はひたすら畑の雑草を抜き水を撒いたり、残っている豚っぽいモンスターや馬小屋の掃除など作業をする。
休みの指定はなく疲れたら庭の芝の上でぼんやりと勝手に休憩をしている。休んでると「働け」とおやじは言うが、働いてる時は水を持ってきてくれたり「疲れてねぇか?」とか聞いてきたりもする。まさにツンデレだ。
いつも全て終える頃には日が暮れていた。
仕事が終わると、近くの川で汗を流し、夜飯を食べて眠る。前世では考えられないような健康的な生活だ。
お風呂が恋しいが、どうやらこ綺麗で暖かいお湯に毎日入ること自体、富裕層の人にしかできない贅沢らしい。
そんな生活が3日ほど経った時、いつものように作業をしていると.....
【経験値が一定に達したため、レベルが上がりました】
突然の鑑定のアナウンスに驚いたが、やっぱりゲームのようにレベルという概念があるのか。しかし、農業でレベルが上がると思わなかった。
レベルが上がったりすることは嬉しいのだが、鑑定というスキル名のかせに勝手にアナウンスされることに疑問を抱いたが、便利であることに変わりはないので気にしないことにする。
レベルが上がると知ってからは、今まで以上に仕事を頑張り、気がつけばそんな生活を半年も続けていた。
転生時は頸が少し隠す程度しかなかった髪の毛は、肩まで伸び、ひょろひょろだった足や腕もまぁそれなりに筋肉がつき逞しくなった。
(今のステータスとスキルは?)
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アスカワタイガ Lv15
[悪魔種][魔導士Lv1]
体力 400
魔力 312
知力 960
攻撃 ???
防御 ???
魔法攻撃 ???
魔法防御???
属性耐性 ???
素早さ ???
スキル[鑑定Lv2][創造Lv1]
[苦痛耐性Lv4][思考加速Lv2]
魔法無し
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不明が多いのは相変わらずだが、体力や魔力や知力なんかを知れるのは喜ばしい。
レベルもかなり上がったことだしスキルも新たに2つ獲得できた。
スキルにもレベルがあったので上がるのでは?と思っていたら案の定上がった。
苦痛耐性がLv4にもなった理由としては、働き始めて一ヶ月経った時に、芝刈りをしている最中に、使っていた鎌を誤ってお腹にぶっ刺してしまったからだ。
血を吹き出しながらギャーギャー叫んでいた。体力が9くらいまで無くなっていたときには、本気で死を覚悟したがおやじがなんとか助けてくれた。
まぁそのあと数時間にも及ぶ説教と硬い拳から繰り出される拳骨を貰ったが.....
今となってはスキルのレベルが初めて上がったり、おやじに看病してもらったりと、良い思い出だ。
いつものように作業をしていると突然、空に亀裂が入りいつか見た光る遺跡が姿を現した。そしてその亀裂から何か飛び出してきた。
「うわぁ〜!!!!!たすけてぇぇぇ!!!!」
「来んなよ」
つい心の本音が声に出てしまった。
亀裂からでてきたソレは、一番会いたくないあの馬鹿悪魔だった。
読んでいただきありがとうございます!
次の話も読んでいただけると幸いです。