16話 新メンバー
「っち…分身か。スタンリー!俺は左に行く。お前は右行け。それが分身なら真ん中行け」
「かしこまりました」
本当にあの男女は面白い。先ほどまで使えなかったはずの魔法を使っている。
やはり転生者か?
しばらく進むと、再び分身で撹乱しようとしている。大通りとさらに路地に続く道だ。頭は切れるようだが、詰めが甘い。路地側は走るには狭すぎる。ましては人を担ぎながら通るなど無理だ。迷いなく大通り方面に行った。
だがそっち系のスキルを覚えていない俺は、分身を一体一体鑑定しないと見分けるのが難しくどちらにしても面倒くさい。
「さっきより速くなってやがるな…快速のスキルレベルが上がったのか」
「クックッ。本当に面白い奴め。だが、快速の上位スキルの[神速]から逃げられるかな?」
もう少しで追いつく。
「狼雷!!」
突然魔法が飛んできた。横に避けたはずだが当たった。追尾型の魔法らしい。厄介だ。
だが大したことない。
手で魔法を防ぐと、俺は神速を発動させて追いかけた。すると再び魔法が飛んでくる。
「狼雷!」
うざったい。しかし2発目となると慣れてくるものでいちいち避ける動作を入れずに、歩みは止めずに手で魔法を防いだ。
俺の腕巻いてある包帯はただのおしゃれではない。
歴とした魔法道具で、魔法限定で1日に一回だけ完全に防ぐことができる。こんなところで両腕分消費するのは勿体無い気もするが、仕事を早く終わらせるためなら構わないだろう。
「無垢なる炎で消し飛ばすか」
魔法を撃とうと詠唱を始めた時突然。
〈拘束!〉
拘束されること自体は一瞬で外せるので問題は無いが、魔法をキャンセルされるのはうざい。
その間に拘束を使った女はすぐに何処かに行ってしまい、肝心の本命もわからなくなってしまった。しかし分身っぽいのをガン無視して進むと、一台の馬車とメインの女が立っていた。
「貴様を通す訳にはいかない」
「いいねぇ。お前獣人の中でもレアな人狼だろ?しかもその上位種と来た。顔を隠してるみたいだが俺には意味がないぞぉ?人狼の上位種となればそこら辺の雑魚よりは楽しめそうだ」
「すまないが遊ぶ暇はない」
「安心しろよ。お前の都合なんて知らねーから」
「そうか。行くぞ!〈雷吐息〉」
俺はあいつの心を折るためわざと喰らって見せた。
あいつは馬鹿だ。わざわざ大したダメージでもないことを教えてやっているのに何度も撃ってくる。うざったいので3発目を躱し剣ではなく拳を突き出した。
女は避けることなく拳を突き出しぶつかった。純粋な武闘士では種族レベルに差があっても押し負けるか。
〈雷吐息〉
押し負けた女の拳は俺の体に当たった。もちろんダメージなどほとんど無い。だが女は頭は回るようで、魔法をゼロ距離でぶっ放すことで距離をとってきた。
〈狼雷!〉
「二つしか使えねーのか?そろそろ飽きてきたぞ!」
〈雷吐息!〉
「馬鹿が!そろそろ行くぞ……あぁ?」
「ふぅ.....君が馬鹿でよかった。麻痺だ。流石に動けまい。確かに君は強いが相手を舐めるのは良くないぞ?全ての雷属性の攻撃魔法には麻痺の危険はあることくらい知っていることだろうに。次は気をつけると良い。さらばだ」
そう言うと、女は走り出した馬車に飛び乗り、走り去ってしまった。
【熟練度が一定に達したため[麻痺耐性]を獲得しました】
アナウンスとともに少し動けるようになり、追っかけようと思ったがあいつらが強くなって俺を楽しませてくれたほうが利益があるとそれ以上の追性を諦めた。
「くくっ。せいぜい強くなれよ.....?」
「すいません。事情を聞き急いできました。これリンゴです。それで奴らは?」
「逃げた。リンゴサンキュー」
髪をたくし上げ、貰ったリンゴを一口齧る。口に広がる酸味と甘味がだるい体に染み渡る。
「ふぅ。スタンリーを呼び戻して帰るぞ」
「はっ!」
またあいつらが楽しませてくれる事を期待しながら俺らは自分の国へと帰った。
エレナさんたちから少し離れた場所で馬車を停めてもらい、俺は彼女の帰りを待った。
「お客さん!あそこの2人が騒ぎ起こしてんですがぁ…あれを乗せるのはちょっとねぇ」
「うるさいですよ。これで満足ですか?」
ポッケに入っていた金貨を一枚馬車の運転手に渡した。
「へいっ!三人揃うまで待機してます!」
金貨は大金だったが、待ってもらうためなら安いものだ。
もしかしたらという心配も杞憂で終わり、エレナさんはあの男を止めて馬車に乗り込んできた。
「遅れてすまない。行こう」
「発車してください!」
「了解ですっ!」
出発してからしばらくして、落ちついつたところでエレナさんが口を開いた。
「2人とも礼を言う。ありがとう」
「いえいえ!お礼ならアスタに言ってよ!私は馬車呼んだだけだし!そう言えば名前言ってなかった。私はココ!あなたは?」
「いやいや。ココのおかげでもある。私はエレナだ」
「顔みたい!」
「フフッ。君たちは似ているのだな」
エレナさんの顔を再び拝むことができて、内心ココによくやった。と言った。
「へぇ〜人狼なんだ!しかも人間っぽい感じ上位種?」
なんか馬鹿っぽいと思ってたけど、2人の会話聞いてるとココが頭良く見えるなぁ。エレナさんって上位種?なんだ。
「上位種になると、熱龍熊みたいにゴツくなるものだと思ってたわ」
「あれこそ特殊でしょ」
「熱龍熊と戦ったことがあるのか?君たちは相当な実力者なのだな。ココの言うとりだ。私は人狼の上位種だ」
「やっぱりそうなんだね!昔に私がいたところにも獣人の上位種の子がいたよぉ!」
「ほぅ.....ぜひ今度会わせて欲しいものだな」
「いいよー!で、エレナはなんで追われているの?」
「この指輪が目当てだろう。とある勇者様からあずかている物なのだが、これはとてつもなく強い力があるらしい。これを狙って私を追う連中も多い」
「大変じゃん!ならさ?ならさ?うちのパーティーに入らない?」
「君は話を聞いていたか?私が入っても迷惑なだけだ」
「大丈夫だよ!私たちも強いもん!仲間がいればエレナも安心できるでしょ?そうだよねアスタ?」
今日のココの言動は素晴らしいすぎる。
同じパーティーに入ってくれれば、毎日エレナさんを拝める。何がなんでも入ってもらうしかない。
「その通りだよな!僕たちもエレナさんがいたら心強いし!」
「だよね!」
「ね?アスタもこう言ってるでしょ?入って!」
「では、こうしよう。君たちの他の仲間にも事情を包み隠さず話して誰か1人でも拒否すれば、私は入らない。だがそれでも全員同意してくれた際には…お世話になるとしようではないか」
「うん良いよ!」
ザックにメロなら承諾すると信じている。
いざとなれば、どんな手段を使ってでも…
緊張が抜けない。
頼むっ!!
「…と言うわけなのだが、君たちは私をパーティーに受け入れてくれるか?」
ウルムに帰って来てすぐ、パーティーで話をしようと思ったが、さすがに疲れているので街に着いてから解散しそれぞれ休んだ。
そして翌日ザックとメロを呼んで、現在エレナさんが事情を話したところだ。
「わたしは構わないですよ?ザックは?」
メロはさすが優しい。簡単に了承してくれた。問題はザックだ…
「エレナだっけ?心して聞いて欲しい」
「あぁ」
まさか、却下する気なのか?
どうしよう麻痺霧でも吹きかけてやろうかな?
「エレナ!パーティーの名前が思いつかないんだ…パーティーメンバーの一員となったんだ!一緒に考えて欲しい!」
「え、えっと?それは私を認めるってことなのかな?」
「当たり前だろ?断る理由なかったし。そんなことより!名前だよ!いつまでも無名ってかっこよくねーじゃん!銅にもなって!」
「ふふっ。そうか…君たちはほんと面白いな。それなら私はここに入るとにするよ。よろしくなメロ、ココ、ザック。そしてアスタ!」
「「「「よろしく!!」」」」
「名前を決めよう!」
「悪いが僕はパスだ。ポーションを作る工房に用がある」
メロは僕の言葉にパッと目を輝かせ、覗き込むように見てきた。
「私もついていっていいですか?」
魔導士というだけあって、ポーションに興味があるのだろうか?断る理由もないので工房にはメロと共に行くことにする。
「なんだよ参加しないのか?なら俺たち3人で考えておくから!何になっても参加してないのが悪い!文句言うなよ!」
「わかってるよ」
なうして酒場を後にして三人と別れた。そしてメロとともに自分でもポーションが作れる観光地としても多少有名な工房に向かった。
「何かポーションでも作るんですか?」
「んー?いや、ココの腕が再生するくらいのポーションができないかなーって」
「アスタって優しいですね!私も協力しますよっ!」
「ありがとう!」
工房に着き事情を話すと、
「そりゃー無理な話だ」
と言われてしまった。
理由を聞くと、ポーションの材料を加工する段階でどうしても劣化してしまうため腕が再生するほど強力な、完全回復ポーションは作成ができないらしい。
ここで僕は一つ名案を思いついた。僕にはここまで一度も活躍してないがアテナの説明では役に立ちそうなスキル[創造]がある。活用しないわけにもいかないだろう。
(アテナ。創造どうやって使うの?)
【本来は必要となる素材を手元に置いてイメージをしながら造るのですが、幸いにも[異空間]のスキルがあるため、そこに材料を収納していれば、あとは頭で作りたい物を思うだけで作成できますよ】
妄想が得意な僕からしたらとっても簡単だ。
「わかりました。なら空瓶をいくつか売ってくれませんか?」
「おうすまねーな。それなら構わねーよ。代わりといっちゃなんだが、安くしとくよ。」
「ありがとうございます!」
ポーションを作るには無駄であろうモリモリの筋肉をしている優しいおっちゃんがいた工房を後にし、空瓶を持ち帰り滞在していた宿屋で作成を開始した。
「手伝うことあります?」
「えっと、ポーションができたら蓋して、どんどん次の空瓶もらえる?」
「わかりました!任せてください!」
「じゃあ行くぞ!」
「うん!」
瓶を握ると早速開始した。
工程を想像しやすいように目を閉じた。
紫陽草と扇草潰して混ぜ合わせて…それを液体にして…
【作成に成功】
アナウンスを聞き目を開けると握っていた空瓶に緑色の液体が溜まっていた。
それを急いでメロに渡して蓋をしてもらった。
(アテナ。鑑定してくれ!)
【上回復ポーション。大怪我でも一瞬で回復することができますが、欠損した部分の回復はできません】
何がいけなかったのだろうか?不満な顔をしている僕を無視し、メロは目を丸くして不思議そうに、興味津々に僕の手元と瓶の中の液体を眺めていた。
「すごい…これがふるぽーしょん??」
「いや、それは上回復ポーションって言って、完全回復じゃない…」
「そうなんですね。でもすごいですよ!握っているだけなのに上回復ポーションを作るなんて!なんの魔法ですか?」
「んー。これは魔法じゃなくてスキルなんだ」
「なんだ....私でもできるかと期待していたのに.....」
頬をプクッと膨らませ俯いてしまった。メロはかなりポーションが好きらしい。今度何かプレゼントでもしようと思い、メロの肩をちょいちょいと軽く叩き、再び助手として手伝ってもらい、空瓶を握ると再び目を閉じた。
二つの薬草を潰して混ぜ合わせて…それを液体にして…
【上回復ポーションです】
【上回復ポーションです】
何度やってもできるのは、上回復ポーションだった。気がつけば20本の上回復ポーションができていた。
(足りない材料があるのか?)
【小回復ポーションも中回復ポーションも上回復ポーションも完全回復ポーションも材料に変わりはありません。効果を左右するのは劣化度です】
劣化度…劣化度.....
「そうか。大事なことを忘れていた!メロ。瓶を今度こそできる気がする」
「頑張ってください!」
瓶を握り目を閉じる。
紫陽草と扇草を劣化しないように潰して混ぜ合わせて…劣化しないように液体にする…
【作成成功】
恐る恐る目を開けると、液体の色が透明になっていた。
(これは?)
【完全回復ポーションです】
「やったぞ!メロ!完成だ!!」
「すごい。この透明な水がふるぽーしょん?なんですね!おめでとうございます!」
その後、念のため5本だけ完全回復ポーションを作った。まさかこんな簡単に、作成できるなんて創造恐るべし…だけど、しっかりと創造しないと、別の物ができてしまうらしい?回復系のポーションは性能が上がると透明度が変わるようだ。
小回復は赤で、中回復は濃い青で、上回復薄い緑になり、完全回復で透明となる。
なかなか面白い。メロには、ザック達が心配なので先に帰ってもらった。
上回復は正直いらなかったので、買い取りもやってると書かれたポスターが貼ってある先程のポーション工房に売ることにした。
「昼ぶりだな!」
「あんちゃん。また来たのか?今度はどうした?」
「これ売りたいんだけど…」
袋に詰めた上回復ポーションを出すと工房のおじさんの目の色が変わった。
「こ、これをどこで?」
「僕が作ったんですけど?完全回復ポーションできたからこれいらないんですよ。買ってくれませんか?」
「まじかよ…作り方教えてくれ!」
「ごめんなさい。それは言えないです」
そんなことを言えば、色々と厄介なことに巻き込まれかねない。
「仕方ねーか.....って!その腰のポーションは完全回復ポーションじゃねぇのか!?」
「はい.....?今5本ありますよ?」
「それ一本と上回復ポーション全て売ってくれ!それと聖金貨一枚と金貨15枚を払う!」
「聖金貨ってなんですか?」
「知らないのか?この世界で一番価値の高い硬貨でこれ一枚で立派な家が三軒は建つ代物だ!どうだ?」
え?金貨以上の硬貨あんの??
【失礼します。聖金貨とは金貨150枚分に相当するこの世界で流通する硬貨の中で一番価値のある硬貨です】
そうなのか・・・って!
「いやいや!多いですよ!」
「ポーション職人の俺が完全回復ポーションを作るためにどれだけ苦労してると思うのか!!それを分析して流通できるほど作ればそんなの端金だ!受けとれ!」
「わかりました…」
いきなりお金持ちになった気分だ。
やったね!
一時的ではあるがお金持ちになり気分も上がりスキップしながらの帰り道。
近道として裏路地にはいるとそこは悪臭が漂っていた。悪臭の原因を探しているとそこには人間の死体が三つ転がっていた。
前の自分ならこんなグロテスクな死体を見たら錯乱していただろう。
しかし今の自分はこの死体を前に顔色一つ変えることはなかった。仮にも悪魔なのだ。その影響なのかもしれない。
その死体に近づくと手を触れ三つとも収納した。素材が増えてラッキーくらいの感情だった。
その感情は危ないと思いつつもこれからする事を考えると、その感情を黙認するしかないのだ。
【警告します。こちらに殺気を持つ個体が10名ほど近づいてきます】
(あぁ。気がついてるよ。てかなんでアテナも殺気を感知できるんだ?)
【勝手に[殺気感知]を合成しました。合成しても[探知]や[殺気感知]の能力はあなたも使用できますのでご安心を】
(そうなんだ。別にそういう系のスキルなら勝手に合成して構わないから)
【ありがとうございます】
「おいおい〜お嬢ちゃん?こんなところで1人で何してるのかなぁ?」
お嬢ちゃんと言われるのはムカつく。
【逃げますか?】
(いいや?こいつらは実験台になってもらう。危害を加えてこなければ見逃すが、そうでない場合は…)
皆殺しだ。
読んでいただきありがとうございます!
次もよろしくお願いします!




