15話 逃走劇
エレナさんを狙ったであろう弓兵と、もう1人黒いローブと黒剣を持った日本人っぽい顔立ちの少年が俺たちを追いかけてきている。
相手は間違いなく転生者だ。まず間違いなく勝てない。
だからこそ逃げるしかない。
「君では無理だアスタ!私を捨てて逃げろ!」
「うるさいですよ!いいですか?うちの故郷では、女性は男が死んでも守らないといけないものなんです!!!」
「君の故郷は、面白い風習があるのだな。しかし、君が命をかけてまで守るようなことはしてないだろう!」
「ほんと黙って守られてて下さい!たしかに!そんな義理はないかもしれないです!けど、あなたに一目惚れしたんです!だから守らせて下さい」
「っく!私なんかより良いメスなんて他にいるかでもいるだろう!差別対象である獣人の私なんか好きになるものではない!」
もういい知らない。自分の魅力をわかってなさすぎだ。無視してやる!
(アテナ!追いつかれそうなんだけど、なんとかならない?)
【かしこまりました。今からナビゲートするので指示通りに全て動いて下さい】
(わかった!)
【スキル[快速]を発動して下さい】
(おっけー!)
一度だけ使ったことはあるが、快速は一気に速くなるから酔う。
しかしそんなことで嫌がる暇などない。
「快速っ!!」
【後ろに手をかざして火球を撃ち、二つ目の路地で右に曲がって下さい】
〈火球!〉
当たるわけもなく簡単に躱されてしまったが恐らく当たらない前提で撃てと言っているのだろう。
ハノーファーが入り組んでいる街で良かった。一直線なら、もう捕まってもおかしくなかっただろう。
【その先に三つの曲がり角があるので、左に行ってください。直線と右側に分身を放って下さい】
「〈分身〉発動!」
【言わなくても発動できますよ。ですが好調です。次の角で大通りに戻り直前にまた分身を放って下さい】
(はいはい。ごめんなさいね!)
再びデコイを放ち大通りに急いで走った。
【独断で追ってきている2名の者を鑑定しましたが、ほとんどが不明でした。しかし両者とも[探知]を持っている事は判明したので、ある程度突き放さなければ逃げる事は不可能です。快速を連発して下さい】
言われた通りに快速を連発したが、別に使った分だけ速さが増すわけでもない。
逆にオンオフを繰り返すので、使い続けるより遅くなっている。恐らくスキルレベルアップを狙っているのだろう。
【熟練度が一定に達した[快速]のレベルが上がりました】
スキルレベルが上がり、さっきよりも速く走れるようになったのを感じる。
【ここをまっすぐ行ってください】
【警告。一名が追いついてきます】
快速のレベルが上がりさっきよりも速く動いてるはずなのに…いくらなんでも速すぎる。
(どうすればいい?)
【戦闘で勝つ事は不可能です。現在様々な案を作成中です…全力で逃げてください】
「君程度ではすぐに追いつかれてしまうと思っていたが、やるな!私も少しくらいは何かせねばな」
さっきまで黙って担がれていたエレナさんが突然口を開いた。
そして手を追っ手へとかざし魔法を放った。
〈狼雷!〉
青白い光線が激しい音と共に地面を抉りながら真っ直ぐと飛ぶ。そして追ってきている者に直撃した。その威力といい、速度といいえげつなかった。少年は攻撃をくらい一度は止まりはした。が跪くこともなくまたすぐに走り始めた。
「まじかよ!あれくらって動くの!?」
「やはりか…あれはかなり強いぞ。追いつかれたら二人とも簡単に殺されるだろう。いいのだぞ?私を捨てても」
「諦めてくれたと思ったとに、またそれですか?黙っててください!」
「ふふっ。私を庇った時点で、君も殺す対象だろうな。アレを相手取った所で私も殺されるだろう。わかった。私は大人しく君に命運を託すとでもしよう」
【エレナにもう一度魔法を撃ってもらってください。そしてその隙に、数回分身を放ってください】
「エレナさん!もう一度あれ撃てますか?」
「黙ってて欲しいのではなかったか?まぁいい。できるが仕留める事はできないぞ?」
「僕の質問だけに答えてください!お願いします!」
「了解した。〈狼雷〉」
エレナさんが撃った瞬間にデコイを6回ほど放った。先ほどより怯む時間が短く、すぐに動き始めた。しかしデコイの量が多くさすがに戸惑っているようだ。
止まったと思ったら、相手は手を空にかざした。
【警告。Sランク魔法がきます。このままでは全滅です。残された手は彼女を置いて逃げることのみです】
えすらんく?よく分からないがやばそうだ。
だがエレナさんを見捨てるという選択肢が無い以上、離れる以外にできることがなかった。
「アスタ!あの魔法はやばいぞ!君はよくやった!もういい!」
「はぁ!!〈拘束!〉」
【敵の魔法がキャンセルされました】
「アスタ!こんなところで何やってんの?」
天真爛漫で元気な高声。
そんな知り合いは1人しかいない。
「ココ!」
「そ・れ・に!担いでる人は誰〜?誘拐でもしてるの?」
「はじめましてだな。誘拐されているわけではない。彼に助けてもらっている」
「そうだぞ!人聞き悪いこと言うな!」
「ならいいんだけど!じゃあ、あっちの黒いおにーさんは敵だねっ!てか分身なんて覚えてるんだ!いいね!6人もいると気持ち悪いけど…とりあえず私が先に行って馬車を捕まえとくからすぐにきて!」
「わかった!」
前を見ることなく手を振りながら走るココの速度は凄まじく、あっという間に姿が見えなくなった。
「君の仲間か?彼女とても頼もしいな」
「ほんとですよ。片腕を失ったばかりなのにあれだけ頼りになるんですから!」
僕もここが走って行った方向へと一心不乱に走り続けていると、
「こっち!!!」
馬車を捕まえたココ手を振り僕たちをが 呼んでいた。
「アスタ。おろしてくれ」
「今更っ!」
「大丈夫だ君たちにここまでしてもらっておいて、助けてもらわないなんて薄情な真似はしない。だが、あの敵がもう来ている。出発する前に追いつかれては共倒れだ!それとも君が一目惚れしたと女の力が信用できないのか?」
「ずるいですね…わかりました」
エレナさんを下ろすとココと馬車に乗り少し移動するように馬車の運転手に告げた。
「あの人は?来ないの?」
「大丈夫だ。すぐ乗ってくる」
そう。エレナさんなら必ず。
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