11話 試練再び
【経験値が一定に達したためレベルが10上がりました】
ザックが剣を振り下ろす前にアナウンスが流れた。
そしてザックが剣を振り下ろすと、熱龍熊はバタンッ!と大きな音を立て倒れた。
おそらく立った状態で体力が切れていたのだろう。だが彼の勇気に、真実を伝え水を差すのも気が引ける。
「ザックやったな!お前が倒したんだ!」
僕は生まれて初めて、優しい嘘をついた。
「ザック!かっこいいよ!!」
「すごいですっ!」
俺に続いて2人もザックを褒め称えた。そしてメロの肩を借り、3人でザックのところへ駆け寄っていった。
【スキルレベルの上昇。及び新たなスキルを獲得しました。詳しくは後ほど】
(ありがとう!)
アテナも空気を読んで情報を伝えるのを後回しにしてくれた。
ほんっと優秀。
【一言。燃龍熊を[異空間]に収納することを推奨します】
「なぁ、あの死体を放置するのも問題あるかもだし、僕のスキルで死体を処理しても?」
「そうだなぁ〜!せっかく俺が倒したのに、復活なんかしたらたまったもんじゃない!」
「あら〜?とどめを刺しただけでしょ??4人で倒したんじゃないの??」
ココが鋭い目つきでザックに言い放った。
「そ、そうかもな!」
「私たちの全員で掴んだ勝利です!」
「その通りだぞザック!ココとメロもめっちゃ活躍しただろ!」
「「そうだー!そうだー!」」
片腕を失いながらも明るい雰囲気のココを見て少し安心した。
そして熱龍熊に近づくと、討伐した証として鱗を一枚剥ぎ、収納を開始した。
【収納完了までおよそ60秒………………完了しました】
しっかりと消滅を確認したザックが叫んだ。
「よぉし!帰って祝杯だー!!」
4人は笑いながらブレーメン火山地帯を後にした。
その日はココを冒険者が無償で利用できる病院で治療をしてもらい、とりあえず義手をつけてもらった。僕も骨折をしていたが、魔法で簡単に治してもらえた。
この世界は魔法による発展がめざましい。純粋にすごいものだ。
それからギルド酒場で祝杯をあげた。
ゴブリンの時より3倍近くの金が入り前回のように、使い切ることはなかった。
そして4人で話し合った結果、明日から一ヶ月の間パーティーとしての活動を止めて、それぞれ自由に過ごすこととなった。
知り合いもろくにいないし、最初はザックと個別で簡単なお手伝いクエストをこなしたり、街を1人で練り歩いて探検をしたりしたが、数日程度でスラム街を除いた街も見終わってしまい、強いモンスターも倒せる自信がなかったので、目的もなく1人でエッセン山岳にあるヘルネ洞窟向かった。
洞窟の中は光る水晶が多くありとても明るく、簡単に進むことができた。モンスターっぽいのがちょいちょい襲ってくるけど大したことは無い。
【もうそろそろ、スキルの説明をしてもよろしいですね?】
(あ、忘れてた。戦闘中にも入手したりしてたからそれも含めて詳しく説明お願いします〜)
【はい。まず戦闘中にスキル[硬糸」を入手しました。これは鉄と同等の強化をもつ細い糸を噴射する能力です】
【そしてスキル[加速][苦痛耐性][異空間]のレベルが上昇しました】
【守護神の中にあるスキルもレベルが上がり[鑑定Lv7][探知Lv5]となりました】
【そしてレベルが40となったことで新たにスキル[怠惰]を獲得しました。怠惰の説明をしますか?】
(お願い!)
【スキル[怠惰]とは、アルティメットスキルで、無条件でスキルおよび魔法に経験値を、微量付与し続けます。それにより使用をしなくてもスキルや魔法のレベルを上げることが可能になりました】
さすがアルティメットスキルだわ。
便利だし、とても強い。
嫉妬だけでは気がつかなかったが、嫉妬や怠惰といえば七つの大罪の一つだ。
他にも憤怒、強欲、暴食、色欲、傲慢も存在するのであろうか?
あるなら是非とも獲得したい。
しかし…この洞窟は、きれいな場所ではあるがつまらない。
モンスターは弱いし。時折落ちている鉄鉱石などの鉱物やモンスターの死体を異空間に収納すること以外にすることがない。
一時間ほど歩き回ってが、これと言って面白い事もなく洞窟を出ることにした。
【30メートル先を左です】
出口なんて覚えていなかったが、アテナがカーナビのように出口まで案内してくれた。
(なぁアテナ?欠損した腕なんかを復活させることって可能なの?)
【不可能ではないかと】
(というと?)
【そこを右です。はい。小回復ポーションの効果を飛躍的に高めることができれば、おそらくは可能です。ちなみに回復系のポーションを作るにはこの山岳に自生する紫陽草、扇草を調合することで作成できます】
なんとしてもココの腕を治すために、アテナの言っていた二種類の薬草を探すことにする。
しかし薬草なんて専門外もいいところだ。
(どこにあるのそれ?)
【二種類とも目の前にあります】
(え?)
見渡すもそこら中に草が生えていて識別できない…
(これか!)
【違います】
(ならこの赤いやつ!)
【違います】
(これ…?)
【はい。ちなみに扇草はその先にある黄色の丸い葉です】
ふむふむ。
一度確認できればこっちのものだ。
あたりを歩き回り、畑で培った技術を駆使して、大量に収穫した。
ひと段落したところで買ってきたパンを背中に装備してある短剣で二つに割り、パンに蜂蜜を塗り、塩漬けされた肉を挟み…サンドイッチの完成だ。
本当はレタスなんかを入れたかったが、この世界にある野菜は、見た目と味が全く違うのだ。例えば見た目はトウモロコシなのだが、食べてみると味が唐辛子だったり…キャベツだと思って食べると、味がゴーヤだったり…
農業をしてい時のおかげでジャガイモもどきやにんじんもどきなんかはわかるのだが…
帰ってから色々買って試そう。
サンドイッチは塩っ辛い肉を蜂蜜が優しく包みとても美味しかった。今度4人でピクニックにでも行きたいものだ。
食事を終えると、ここで特にすることもなかったのでウルム国の隣にあるハノーファーという別の国に行くことにした。
別に行く意味もなかったが、単にヘルネ山岳から一番近いからだ。そこから馬車に乗れば楽に帰れる。
「その人捕まえて!!!」
街の入り口で荷物検査を終えて、街に踏み入れるとすぐにトラブルに遭遇した。
助けて注目を浴びるのも避けたいところではあるが、目の前に走ってきたので、流石に捕まえないのも嫌な奴として注目されそうだ。それなら善人としてのイメージがいいだろう。
刀を抜き、刀の峰で足をはらい、先端で頭を叩いた。
上位小鬼や熱龍熊などと比べれば、こんな盗人など造作でもない。
盗人から黒い袋を取り返すと獣人の女性に手渡した。
「ありがとうございます…!ありがとうございます…!」
「あ、いえ偶然目の前に走って来たからで…大したことではありませんよ」
映画のようなセリフになってしまったが、本当に大したことでは無いと思う。それなのにこの獣人の女性は膝下に崩れ落ち泣きながらお礼を言っている。どうして良いか分からず、オロオロしてしまった。
女性がしばらくして泣き止むと僕の右手を両手で包み込み上目遣いで口を開いた。
「お礼にうちのお店でお茶をご馳走しますっ!」
「あ、いえ…」
「遠慮しないで下さい!」
道端で腕を無理やり引っ張られ、断りきれずに結局お店に行くことになった。
人間に耳が生えた程度以外の獣人なんてありえない。と前世で思っていたが実際に見ると、とても可愛くて全然ありだと思ってしまう。
全身を覆う灰色の毛と三角の耳、そして長い尻尾を見る限り猫の獣人なのだろうか?
「私はニーナと言います。お名前聞いてもよろしいですか?」
「僕はアスタって言います」
「素敵なお名前ですね!アスタ様は、身なりを見る限り冒険者なのですか?」
「呼び捨てでいいですよ?そうですよ。今時珍しいですよね」
「呼び捨てにするなど、とんでもございません!いえ、ご立派だと思います。ちなみにランクは何ですか?」
「銅ですよ」
「すごいですね!!」
「ありがとうございます」
そうその通り。
上位小鬼がいる中規模のゴブリンの巣をたった一つのパーティーで潰したことで注目され、そして銅のランクでも簡単に倒せない竜熊と、その上位種を倒す実力あるパーティーとして2階級昇格した。ウルムの中心街の中で一番強いチームとなりました。
やったね!
そんな感じで会話をしながら歩いていると、
「着きました!こちらです!」
やけに色っぽい看板の色合い。中にいる従業員の露出度の高さ。[愛のまたたび]とか言うふざけた店の名前。
「風俗じゃねーか!!!!」
もっとおしゃれなカフェにでも連れて行ってもらえるものだと思っていた。ニーナさんは、いつかの悪魔の如く微笑む。
「一名様!入りまーす!」
身体中に悪寒が走るが既に背後にも数名の従業員が回り込んでしまい逃げ場道がない.....
僕はまた窮地に立たされた。
読んでいただきありがとうございます!




