9話 炎の試練①
この二ヶ月間が勝負だ。
もしこの期間にある程度強くなれなければ詰みだろう。しかも強くなるだけではなく、情報収集も同時に行う必要がある。
僕も馬鹿ではない。二ヶ月間本気で鍛えたところで、他の転生者の足元にも及ばないのはわかる。知識を得て、念入りに作戦を練って・・・汚い手を使ってでも勝つ。
7日後ギルドにて.....
「というわけで、飲み過ぎて金がなくなった!なので今日もクエストに向かうぞ」
ザックがそんな事を言い始めた。個々では会ったりしていたがパーティーとして集まったのは一週間ぶり。全員が集まるとなんだか笑みが溢れてしまう。レベルを上げるためにもクエストに行くのは賛成だ。
『おお〜!』
クエストに行く提案にココとメロも同調しているところを見ると、おそらく2人も結構使ってしまったのだろうか?かく言う僕も持続型スキルをオフにできると知り、酔ってみるためにお酒を大量に飲んでみたり、ポーションを買ったりとした結果お金をかなり使っている。
しかしクエストはやはり魔物の減少の影響なのか、高難易度のものが多い。小鬼の討伐などのクエストが張り出されているのは結構レアだ。
4人で審議した結果掲示板の中から、ケルン大森林の少し先にあるブレーメン火山地帯に存在している双頭の巨大な熊、竜熊の討伐を行うことになった。名前の由来は、ドラゴンすら捕食する強さを持っているかららしい。
昨日のクエストのおかげでパーティー全体がランク蒼に昇格したおかげで難易度の高いクエストでも簡単に許可が下りたのだ。
流石に難易度が高いので1日準備をして、翌日に向かった。
「あつーーーーい!」
ココが叫んだ。
ブレーメン火山地帯には簡単にたどり着いたのだが、肝心のドラゴングリズリーがどこにもいない。活火山がいくつもあり気温は常に40℃近くまで上昇し、場所によっては60℃とか超えてくる場所も存在するそう。茶色くゴツゴツとした硬く歩きにくい地面がどこまでも広がり、草木などほぼ存在しない。まさに極限の地だ。
今回討伐目標のドラゴングリズリーも強力なモンスターだが、受付のお姉さんによると溶岩液体や装甲魚などという名のモンスターの方が厄介で注意するべきとのこと。
「おい、アスタぁー本当にドラゴングリズリーっているのかぁ?」
「お前がこのクエスト受注したんだろうがザック!」
「喧嘩しないでくださいよぉ〜より暑くなります!」
暑いしもう疲れた。
【スキル[火耐性Lv1]を獲得しました】
「おっ、少しだけ暑さが和らいできたな」
「ザック〜。メロ〜。アスタが暑さで脳味噌が溶けたみたい〜」
「は?なわけないだろ!火耐性を獲得したんだ。僕が獲得したんだからお前らもそろそろ獲得できるんじゃないか?」
「羨ましい〜。そんな簡単に獲得できるなんてラッキーだよぉ〜」
それは意外だ。魔法もスキルも割と簡単にゲットしてきた。
ココが言った通りならおそらく、スキルを簡単に入手できるのは転生者の特権なのだろうか。それとも知力が高いからだろうか。答えは後者だろう。なぜなら転生者特権は僕には無いのだから。だがアテナに聞いてもよくわからないそう。
道中では特にモンスターとも遭遇することなくダラダラと歩いたが、肝心のターゲットが見当たらない.....暑さから解放されたい一心であたりを見渡していると、
【約90メートル先の洞穴に竜熊らしき存在を発見しました】
ほんとアテナさんが優秀。
「3人とも、多分この先にドラゴングリズリーがいるぞ。注意しろ」
「アスタって、探知も持っているんだ!しかも私がまだ見つけられてないってことは私よりスキルレベルも高いのか…すごいね!!」
「ココも積極的に使っていけば上がるさ!」
ココとそんな話をしていると、アテナが言っていた洞穴についた。流石に中に入って戦うのは狭いし圧倒的に不利なので、メロが魔法でちょっかいをかけて洞穴から出す作戦になった。
少し離れて僕ら3人が武器を構えて、メロが魔法の準備をする。
「行きますよ?」
息を呑みながら全員がコクリと頷く。
3人の同意を確認したメロは魔法陣を展開させる。
〈雷衝撃!〉
メロが魔法を放った瞬間、穴の内部で何かが動くのを感じそして.....
「グラガァァァァァァ!」
洞穴の奥から大きな咆哮が聞こえてきた。
「ひぃぃいい」
メロは内股でトイレを漏らしそうな走り方で慌ててこちら側に戻ってきた。
ズシズシと洞穴の中から大きな足音が聞こえてきた。
【警告。竜熊がもう一体接近しています。おそらく、番いかと思われます】
今の俺たちでは流石に二体はキツすぎるぞ?
慌てて俺は3人に叫んだ。
「まずい!お前らもう一体後ろからくるぞ!」
「は!?マジかよ…」
その言葉のザックを含め3人とも動揺していた。もちろん僕も動揺している。
しかしさすがリーダー。ザックは動揺していても的確に指示を出した。
「よし、俺とメロで洞穴の奴を殺る!メロとアスタで後ろからくる奴を殺ってくれ!」
「メロ!俺たちに防御系の強化魔法を!」
「わかりました。〈鉄壁の体〉」
【鉄壁の体により一時的に防御、魔法防御の上昇を確認】
そして二体のドラゴングリズリーは姿を現した。
赤い毛皮に筋骨隆々の立派な体躯。大きさは二本足で立てば4mほどはあるだろう。鋭い爪、血の匂いを微かに感じる牙。そして頭は確かに二つあった。
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竜熊Lv48 [火属性]
[竜種]
体力 1982
魔力 981
知力 389
攻撃 2441
防御 3412
魔法攻撃 999
魔法防御 267
属性耐性 750
素早さ 481
スキル[火無効Lv1][厚い毛皮Lv4]
[斬撃Lv3][激昂Lv1][威圧Lv7]
[悪食Lv9][竜鱗Lv3][毒牙Lv1]
[弱肉強食Lv5]
魔法解析不可
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竜熊Lv34 [火属性]
[竜種]
体力1532
魔力712
知力391
攻撃2076
防御2681
魔法攻撃1400
魔法防御190
属性耐性632
素早さ539
スキル[火無効Lv1][厚い毛皮Lv2]
[斬撃Lv5][威圧Lv7][悪食Lv2]
[硬糸Lv3][腐食の鎌Lv1]
魔法[炎吐息Lv3][火球Lv2]
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「やばいな・・・」
ザックの言葉に僕たちは息を呑んだ。
それは圧倒的な強者だった。
洞穴で寝ていた竜熊はもう一体よりレベルが低く、普通に勝てるだろう。
しかしそれは4人で戦う事でだが…
現状は劣勢だ。
正直レベル40前後の2人が戦えるレベルではないだろう。
だが、ザックとココはとても良いコンビネーションで翻弄している。
こちらも負けてられない。
だが、まだ彼女らと関わって日が浅すぎる。
とりあえず今はメロのことを少しでも知ろう。
(メロのステータスは?)
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メロ Lv26 [雷属性]
[妖精種][人間種][魔導士Lv4]
体力 450
魔力 900
知力 500
攻撃 90
防御 310
魔法攻撃 843
魔法防御 691
素早さ 517
スキル[雷耐性Lv1][麻痺耐性Lv2]
[魔法強化Lv2][光強化Lv3]
[魔法高速詠唱Lv1][肉体脆弱Lv4]
魔法[火球Lv3][雷撃Lv2]
[麻痺霧Lv1][爆発Lv4][鉄壁の体Lv5]
[小回復Lv3][身体能力向上Lv1]
[魔法盾Lv2]
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スキルを得るのが難しいことなら、魔法もこれだけ覚えているのは、多分すごい才能を持っているということなのだろうか?
どれをみても沢山の活用法がありそうな、素晴らしい魔法ばかりだ。
【警告。炎吐息の発動を確認。体力を7割削られてしまうので必ず避けてください】
(げっ、まじかよ)
アテナのおかげで、攻撃を予測することでギリギリ躱すことができたが、もう一つの頭の口から飛んできた火球は躱せずに直撃してしまった。
馬鹿そうな顔しているくせに器用すぎる。
もし今のが火吐息ならもっとやばかった。
体力を確認すると3割ほど削られていた。
火球も連続で喰らうと、簡単に殺されてしまう。
〈小回復!〉
体が一瞬緑色の光に包まれると、それと同時に体力が回復するのを肌で感じた。
メロは続けて、
〈火球!〉
ドラゴングリズリーの左頭に直撃した。
しかし全く効く様子はない。
当たり前だ。スキル[火無効]どう見ても火を無効化しそうだ。
「メロ!多分こいつに火属性の魔法は効かない!」
「そうなんですね!ならっ・・・!!」
メロが次の魔法の詠唱を始めたがドラゴングリズリーはそれより先に標的をメロに変え、メロに突進していった。
メロがまともに攻撃を喰らえば一撃で死ぬ可能性が高い。俺は足で地面を思いっきり蹴り、メロの元へと大急ぎで走った。
だがドラゴングリズリーの爪は既にメロの目の前にある。
「メロッ!!」
読んでいただきありがとうございます!
よければ後編もどうぞ!




