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必殺!!ゲートパンチ!!

 「なんだなんだ?いったいどうしたってんだ?」

 「聖女様が呼び出したあの巨人、なんか足元ふらついてなかったか?」


 周囲の状況を逐次確認するため、召喚しておいたウィンダムとシャインを通じて、ガルフ国民達のひそひそ話す声が聞こえてきた。


 「せっかくかっこよく登場したのにぃ〜!!アルバ!!何とか立ち上がってよぉ!!」

 「無茶を言うなノルン!!元の形態に我を変形させろ!!そうすればどうにでもなる!!」


 せっかくかっこよく登場したのに!!

 みんなの戸惑う視線が痛すぎるよ!!

 もうこうなったら!!


 「ジェイガン!!まさかこの距離から不可視の攻撃をしてくるなんて!!少々貴方の事を見くびっていました!!」


 ぼくはウィンダムの力を通して大気を震わせ拡声した言葉を言い放つ。


 「……は?」


 見に覚えのない事を言われて、ジェイガンが巨神騎兵の中から呆気に取られた声を出すけど、そんなの関係ないよ!!


 「まだ戦闘態勢の整っていないシンセイジュウオーへいきなり不意打ちする卑怯千万な振る舞い!!女神ミリシャルの名において断じて許しません!!」

 「え?え?何言ってるの、おまえ?」


 唐突な断罪劇に戸惑うジェイガン。


 「ノルン……。仮にも聖女が冤罪をかぶせるのはどうかと……」

 「リライザ。正義を行使する為には多少の犠牲はやむを得ないんだよ」

 「はあ……」


 それにジェイガンは散々悪事を働いたんだから、今更これくらい追加しても問題なし!!


 「……なあ。あいつ、今なんかしたか?俺には何かしたようには見えなかったんだが」

 「俺もそう思う……。むしろ、ノルンの巨人が勝手に倒れ込んだように見えたが……」


 聖騎士団のおじさん達がそんな会話をするのが聞こえてくる。

 そこ!!余計な事を言っちゃだめ!!

 余計な事を言わないようぼくはおじさん達に念を送る。

 残念ながらそんな能力はぼくにはないけどね。


 ーーカン。ガンガンガン……!!


 「この卑怯者ー!!」

 「恥を知れ恥をー!!」


 ぼくが余計な事を言わないようおじさん達に念を送ってると、ガルフ国の皆さんが口々にジェイガンを罵倒しながら、道端の石や瓦礫の破片を拾って次々と投げつけ始めた。

 みんな竜のお肉を食べてレベルアップしてるからか、中々の威力と飛距離の投石だった。


 「なっ!?こ、この虫けら共がああっ!!」


 投石に激怒したジェイガンが巨神騎兵の歩みを進ませると、竜のお肉を食べてレベルアップしていた国民の皆さんは、すごい素早さで蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 今がチャ~ンス!! 


 「だーりん!!だーりん!!今すぐこっちに来て!!」


 ウィンダムの力で大気を震わせ、こっそりとだーりんの耳元へ声を送る。


 「……え?わ、わかった!!」


 かっこよく登場したシンセイジュウオーが、いきなり足場から転げ落ちたのを見て、ルフィア達と一緒にぽかんとした表情を浮かべていただーりんがぼくの呼びかけで我に返ると、シンセイジュウオーの足元に大急ぎで走ってきてくれた。


 「だーりん!!アルバが二足歩行出来ないって言うの!!だから何かかっこいい決め台詞を言って!!だーりんをアルバの中に入れてグレートラインハルトみたいにアルバを操縦出来るようにするから!!」

 「アルバライザーを俺が?」


 ーーそう。

 アルバライザーの今の肉体はぼくの魔力で出来ている。


 ーーそれ即ち、ぼくのイメージどうりにアルバライザーの肉体を瞬間改造出来るって事!!


 「だーりん早く!!」

 「ええっ?いきなりそんな事言われても……」

 「早く〜!!融合合体でもフュージョンでもなんでもいいから〜!!」

 「わ、わかったよ。ノルン。……ゆ、融合合身っ!!」


 だーりんの融合合身と言うかけ声だけ、みんなに聞こえるようウィンダムの力で拡声拡散してから、アルバにだーりんを収納するよう促す。


 「アルバ!!」

 「う、うむ!!」


 アルバの両目が光るとだーりんの体が光の玉に包まれ、ぼくが今いる空間内に転送されてきた。

 ぼくはすかさず神剣を差し込む台座をだーりんの目の前に魔力で作り出す。


 「だーりん、その台座に神剣を差して」

 「え?こう?」


 だーりんが神剣を台座に差し込んだ事で、だーりんとアルバがリンクした。


 「これでだーりんの思いどうりに変形したアルバの体が動かせるハズだよ」

 「マジで?……おお、俺が考えたとうりに立ち上がった!!」


 台座に刺した神剣を握るだーりんの意志に従い、雄々しく立ち上がるシンセイジュウオーの勇姿にみんなの歓声が上がる。


 「むう……。結局ラインハルトが動かすのなら、我はいらないのではないか?」

 「そんなことないもん!!だーりんがいて、アルバがいて、リライザがいる!!これがぼく達の最強の姿なんだよ!!誰一人欠けても駄目なの!!」


 不機嫌そうなアルバにそう言い切ると、アルバはフッと笑って応えてくれた。


 「ーーそうか。ああ、そう言えば千年前の戦いもこうだったな」

 「懐かしいですね。流石にあの時のアルバライザーは神剣の姿で今みたいにロボットの姿にされたりしませんでしたが」

 「ふっ……。リライザよ。ノルンはまだ幼い。ノルンがこうしたいと言うのなら、年長者として付き合ってやろうではないか」

 「まったく……。仕方ありませんね」

 「むうー!!ぼく子供じゃないもん!!」


 今は小さな頃の姿だけど。

 これでも立派なレディーなんだから!!

 ぼくがむくれてるとだーりんが叫ぶ。


 「ノルン!!敵が向かってくる!!」


 だーりんの声で外に視線を向けると、巨神騎兵が斬馬刀を振りかざして突撃してきた。


 「死ねえええええええっ!!」


 目の前に迫った巨神騎兵が巨大な斬馬刀を振り下ろす。

 シンセイジュウオーは最小限の動きで斬馬刀を躱すと、回し蹴りを巨神騎兵に放った。

 先程までのぎこちない動きとは完全な別物だった。

 シンセイジュウオーの一撃は巨神騎兵の装甲を粉々に粉砕して、その巨体を軽々と吹き飛ばしガルフ国を取り囲む険しい岩山の中腹へと叩きつけた。


 「ぐはあああああっ!?おのれ!!おのれおのれおのれおのれえぇぇぇぇぇっ!!」


 ジェイガンの怒りに呼応するかのように、砕け散った装甲の下にある醜い素体がぼこぼこと嫌な音を立ててますます異形の姿へと変化した。

 巨神騎兵の胸部に埋め込まれた砲口のような部位から、怪光線が放たれる。


 「最高位防御陣エクス・プロテクション!!」


 ぼくが発動させた最高位防御陣エクス・プロテクションがシンセイジュウオーの前に光り輝く壁となり出現し、巨神騎兵の怪光線を寸分違わず跳ね返した。

 自分自身の怪光線の直撃を喰らい、巨神騎兵の全身が焼け爛れ装甲が溶け落ちる。


 「ぐはああああああっ!!」


 自らの攻撃で焼かれてジェイガンの悲鳴が周囲に木霊した。


 「トドメだ」


 アルバの言葉と共に、シンセイジュウオーの目の前に別の場所へと繋がる亜空間ゲートが開く。


 「必殺!!ゲートパンチ!!」


 だーりんの叫びと共にシンセイジュウオーの右拳が亜空間ゲート内部に叩き込まれた。

 次の瞬間、亜空間ゲートを通して巨神騎兵の目の前に現れたシンセイジュウオーの右拳が、巨神騎兵の腹部へと突き刺さる。


 「な、なんだ……と……!?」


 ジェイガンの狼狽える声が大きく鳴り響く。

 ガルフ国内中心部にいるシンセイジュウオーから放たれた、相手との距離を無視した渾身の一撃が巨神騎兵を貫いたのだ。


 ーーこれぞ、必殺のゲートパンチ!!


 どれだけ離れた場所にいようと、絶対に相手をぶん殴る必殺のパンチだよ!!

 シンセイジュウオーの拳が巨神騎兵から引き抜かれると、拳の突き刺さった腹部から巨神騎兵の全身が、あっという間に石化していき全身が間もなく石化した瞬間、木っ端微塵に爆散し跡形もなく消滅した。


 「ば、馬鹿な……。我が全身全霊の研究の成果が……。何の成果も得られずに……」


 シンセイジュウオーに逃げられないようにしっかりと全身を握られながら、巨神騎兵の中から引きずり出されたジェイガンはがっくりとそう言って項垂れるのだった。


 「アルバ、勝利の雄叫び上げて!!」

 「わかった」


 ーーガオオオオオオンっ!!


 シンセイジュウオーの胸部にあるアルバの顔が勝利の雄叫びをガルフ国内に轟かせる。


 ーーわあああああっ!!


 国民の皆さんが勝利の歓声を上げた。


 やったね!!

 あ、大勝利〜ぃっ!!

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