無敵の力
「ヒャッハァー!!見せ場だァァァっ!!」
「ここで大活躍すりゃ俺もメインキャラに昇格だぜえぇぇっ!!」
「行くぜ行くぜ行くぜえええっ!!野郎共付いて来やがれぇぇぇっ!!」
パパの同僚のおじさん達が、やたらハイテンションで人造人間達に襲いかかる。
「もうおじさん達なんて一括りにされて地の文だけで説明されるのはごめんだあぁぁっ!!」
「かっこいい所を見せて今日こそノルンに詳細に描写してもらうんだあぁぁぁっ!!」
「うおおおおおっ!!見ろおぉぉぉっ!!見るんだノルンンンンンンッ!!俺はこんなに強いぞオォォォッ!!」
ーーうわあ……。
逃げ惑うガルフ国民の皆さんだけでなく、ルフィア達もぽかんとした顔でおじさん達の事見てるよ……。
「おまえら!!我等はラギアン王家に仕える聖剣の七騎士だぞ!!もっと聖騎士らしく振る舞え!!」
聖騎士団長であるパパがおじさん達に怒鳴る。
パパ達は次々と襲いかかってくる人造人間達をあっさりと、まるで子供の手をひねるように斬り倒していく。
人造人間達は強固な装甲で身を固め、分厚くて重い斬馬刀を軽々と振り回す一般人にとっては脅威的な相手なのに、パパ達にとっては何の脅威にもならなかった。
斬撃を受け止めようとした斬馬刀ごと真っ二つにしたり、一瞬で首を刎ねられたりと、まるでパパ達の相手にならない。
ーーまあ、当然だよね。
何しろパパを含めて七人全員が高位の聖剣持ちで、英雄と呼ばれる位の聖騎士だもん。
うちのパパは若い頃に邪竜討伐をした英雄だし、他の六人のおじさん達も若い頃にそれぞれが、かなりヤバいレベルのモンスターをソロ討伐してるんだから。
だーりんやレイリィおねーちゃん達、神々に選ばれし者達を除けば間違いなく人類最強クラスだもん。
ちなみにパパが36才でおじさん達も同年代。
もしパパ達がいなかったら、ラギアン王国の防衛も邪神討伐の戦いも、もっと被害が大きかったはず。
「パパー!!おじさん達もがんばってー!!」
とりあえずぼくが声援を送るとみんな、ますます張り切って人造人間狩りに熱が入る。
……そんなに詳細な描写をしてほしいのかしら。
「……でもごめんね?多分この物語を見てくれてる人達はみんな、おじさん達の事、興味ないと思うの」
「ノルン。その扱いはちょっとかわいそうですよ……」
リライザのその一言で思わず口に出してた事に気付いた。
でもホントのことだし、しょうがないよね?
「ノ、ノルン。俺も団長達に加勢してくる」
「え?あ、うん。気をつけてね、だーりん」
「うん。アルバライザー、リライザ、ノルンの事を頼む」
「うむ」
「はい」
だーりんは神剣を手に、目で追いきれない速さで駆け出すと、襲いかかってくる人造人間達をばったばったと薙ぎ払っていく。
流石だーりん。これならすぐに殲滅出来そうだね。
「そう言えばルフィア達はどこかな?」
ぼくが周囲を見渡すと、ルフィア達はレイリィおねーちゃん達と5人で人造人間達と戦っていた。
「ふん!!」
ガリアードさんの神器による一撃が人造人間を真っ二つに断ち切る。
「はああっ!!」
ルフィアの剣が人造人間の頸を一閃すると、ずるっと頭が地面に落ちる。
「中々やるなシルフィアーナ姫!!」
「いえ、私などまだまだです。陛下」
「いや、大したものだ。どんどん行くぞ!!」
「はい!!」
ルフィアもいつの間にかすごく強くなってた。
ガリアードさんも一緒だし、これなら安心かな。
「増幅中級爆炎魔法!!」
ルフィア達から少し離れた場所では、レイリィおねーちゃんが神器で増幅された火炎魔法を放ち、人造人間を包み込む。
「今よ!!」
「はい!!中級氷結魔法!!」
レイリィおねーちゃんに続いて魔導銃で高位魔法並に増幅した氷結魔法をリィちゃんが放つと、人造人間の赤熱化していた装甲が急激に冷やされた事でひび割れていく。
「アイラさん!!」
「ええ!!行きますわよ!!」
アイちゃんの振るった鞭が人造人間の脆くなった装甲を砕いて巻き付く。
次の瞬間、鞭に付与されていた電撃魔法が人造人間の中身を黒焦げにした。
「二人共やるじゃない!!このまま残りも片付けるわよ!!」
「「はい!!」」
レイリィおねーちゃんと連携し、リィちゃんとアイちゃんは人造人間達を次々と葬っていく。
ぼくはみんなが人造人間達を撃破していく中、怪我をしたガルフ国の人達をアルバに乗って回復魔法で癒やして回る。
幸い、死人は誰一人いなかったし、手足を欠損した人達も全員元どうりに治療出来た。
「これで終わりだあぁぁぁっ!!」
パパが振り下ろした聖剣が最後の人造人間を真っ二つにする。
「ふむ。我の出る幕はなかったな」
敵を全滅させたのを確認して、アルバがそう呟いた。
「でもみんなが来てくれたおかげで、怪我人の治療に専念出来たし良かったよ」
「そうだな」
ぼくとアルバがそんな会話をしていると、パパ達がぼく達の方に歩いてくる。
「みんなー!!」
ぼくがアルバの背中から、みんなに手を振っていたその時だった。
突然地響きが鳴り、南の方角にある険しい岩山が崩れだした。
「な、何なの!?」
土埃の中から、巨大な人造人間がその姿を現し、こちらへ向かって跳躍した。
ーーズウゥゥゥゥゥンッ!!
ガルフ国の郊外に着地して、巨大人造人間がこちらに向かって歩き出す。
「フハハハハハハハハハッ!!これこそが我が研究の集大成よ!!巨神騎兵の力思い知るがいい!!」
でっかくなっただけの人造人間の中から、ジェイガンの得意気な声が国中に鳴り響く。
国民の皆さんは巨神騎兵の姿に恐れ慄きパニックに陥っていた。
「皆さん!!落ち着いて下さい!!こちらには勇者ラインハルト様と神聖獣アルバライザーが付いています!!」
風の上級精霊ウィンダムの力で声を国中に響かせる。
ぼくの声が届いて、少しだけみんな落ち着いたみたい。
今度はぼく達がみんなを守るよ!!
「行くよアルバライザー!!リライザ!!」
「うむ!!」
「イエス、マスター!!」
さっき手に入れた土のオーブをリライザにセットしてアルバの背中の上に立ち上がり、土のオーブに魔力とぼくのイメージを送り込む。
「超獣装甲!!アルバライザー!!」
土のオーブから放たれた光が、アルバの立っている地面を盛り上げ土の塔を作り出す。
土の塔の上で、土の塔から放たれた無数の光が、アルバの全身に全方向からまとわりついていき、やがて光が弾けた。
全身をメカニカルな装甲で固めたアルバライザーの勇姿が現れる。
「……ああ。ノルンの趣味か。次はこうすればいいのだな」
ぼくの意図を理解したアルバライザーがその肉体を巨大化させる。
次の瞬間、ぼくの体は光に包まれ、アルバの体内に取り込まれた。
「ここ、アルバの中?」
「うむ。今いるのは我の眉間の辺りだ」
光り輝く球体の中から尋ねるとそう返事が帰ってきた。
「よし。では行くぞ」
「待って!!まだ終わってないから」
「……は?」
アルバの言葉を遮りぼくは叫んだ。
「神聖変形!!」
「ぬおおっ!?わ、我の体が勝手に……!!」
四つんばいの体勢から後ろ足で直立体勢になると、足首が割れてカカトになり爪先が出てくる。
続けてしっぽが腰の装甲の内部に折り畳まれ、前足の爪が後ろ側に倒れて五本指の手首が現れる。
「ぬおおおおっ!?」
アルバの獅子の頭が胸部へと移動し、人の顔を模した頭が生えてくる。
「なんか生えたあぁぁぁぁぁっ!?今なんか生えたぞノルンンンンンっ!!」
「変形完了!!完成!!シンセイジュウオー!!」
光の上級精霊シャインの目を通して、今のアルバライザーの姿を本人とリライザにも見せてあげる。
「な、な、な、なんだこれはあぁぁ!?」
「し、シンセイジュウオーって、この姿グレートラインハルトそっくりそのままじゃないですか!!」
「ツッコむ所はそこじゃなかろうがぁぁぁっ!!」
ーーそう。
そのとおり!!
ビーストモードへの変形が出来なかったグレートラインハルトは言うなれば獅子の顔が付いてるだけの未完成品だった。
だがしかしっ!!
アルバを核にした今回のロボは言わば完成品なんだよ!!
「わ、我はロボなんかじゃないぞ……」
流石に予想外だったのか、アルバが困惑してる声でぼくに言う。
「見た目がかっこよければ中身がどうであれ戦隊ロボなの!!行くよ!!シンセイジュウオー!!」
「我の名はアルバライザー……」
「もう!!ノリが悪いなあ!!この形態の時はアルバはシンセイジュウオーなの!!」
「う、うむ……。わかった……」
「よおーし!!それじゃまずはあいつに飛び蹴りをかますよ!!」
ぼくがそう言った次の瞬間だった。
シンセイジュウオーは突然バランスを崩し、土の塔の上から背後へと転げ落ちていく。
「な、何!?何なのお!?」
ごろごろと転がって、背後にあった王城に激突してようやく止まった。
シンセイジュウオーが転がって激突したせいで、王城はほぼ全壊していた。
「ねえ!!いったいどうしたの!?」
「……我は二足歩行出来ぬ」
「……え?」
「この世に生を受けてからずっと四足歩行しかした事がないのだ!!いきなり二足歩行なんて出来ん!!」
「ええええええっ!!」
ちょっと待って!!
もしかして大ピンチなんじゃないの!?
まともに歩けないんじゃお話にならないよぉ!!
お待たせしました。
ちょっとだけ仕事が楽になってきたので、できるだけ更新していきたいです……。




