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ごめんね、だーりん

 「やったあ♡土のオーブゲットぉ♡これ、欲しかったんだよねぇ。これもぼくの日頃の行いが良いからだね♡」


 以前リライザとの何気ない会話の中で、土のオーブの持つ特性を聞いてから、ずっとずっと欲しかったんだよねぇ。


 「そ、そうですね……」

 「……そ、そうか。よかったな、ノルン」


 ぼくが喜んでると、リライザとアルバは他に何か言いたそうな様子で、ぼくにそう言ってきた。


 「……なあに?二人共、ぼくに何か言いたい事でもありそうだけど?」

 「い、いえ、別に何も……」

 「気の所為だ。気にするな」

 「……そう?まあいいけどね」


 土のオーブを異次元ポケットに収納すると、先程殴り飛ばしたジェイガンがよろよろとこちらに向かってきた。


 「き、貴様……。聖女の癖に人が話してる所に不意打ちするとは……」

 「あれ?まだ動けるの?いかにもな青白い顔した引きこもりらしいのにタフだねえ」

 「こ、このクソガキが!!土のオーブを返せ!!」

 「はあ?何言ってるの?土のオーブは元々は光の聖女ノエルの物だよ?だったらぼくの物でしょー?」

 「なんだその理屈は!!……いや、待て。まさか、貴様は光の聖女の生まれ変わりなのか?」

 「あら。あんな馬鹿王子と手を組むような三下の癖に勘だけは鋭いのね?」


 ジェイガンを挑発してやると、意外な事に落ち着いた様子で返してきた。


 「なるほどなるほど……。光の聖女の転生者と言う事であれば、その力も納得が行くと言う物。我が研究の実験相手に相応しい!!」


 ジェイガンはそう言うと、低くて聞き取りにくい声で何かを呟きはじめた。


 「気をつけろノルン。奴は何らかの術式を発動したようだ」


 アルバがぼくにそう警告した次の瞬間、ぼく達を取り囲むように黒い稲妻が迸る。


 「何なの!?」

 「見るが良い!!これが我が研究成果よ!」


 ジェイガンの得意気な声と共に、全身を鋼鉄の鎧で包んだ異形の騎士が9人、いや、9体現れた。

 人と言うにはやけに手足がひょろ長くて、頭が人の頭を2つ繋げた位、縦に細長かった。

 どう見ても中身は人間じゃない。

 9体共に分厚くて重そうな斬馬刀を軽々と片手で持ってる。


 「これぞ、我が秘術によって生み出した最強の人造人間!!土のオーブの力で施した超合金装甲によって、どんな武器も魔法も跳ね返す無敵の戦士達よ!!」

 「……かっこわるい」

 「……何?」

 「何そのクソダサなデザイン。いかにもなやられ役その物じゃないの。顔と性格だけでなくセンスの欠片もないとか、あなたホントに終わってるね」


 得意気にしてるジェイガンに思わずそう言ってしまった。

 どうせ作るなら、もっとかっこいいデザインにすれば良いものを。

 悪役ってなんで、こんなクソダサデザインにするんだろうね。


 「こ、こ、こ、このクソガキがああ!!ちょっとばかりかわいい顔してるからって調子に乗りやがって!!」


 顔を真っ赤にしたジェイガンが、クソダサ人造人間を起動させ、ぼくに向かって攻撃してきた。

 斬馬刀を両手で振り上げながら跳躍した人造人間が、ぼくを肉塊にしようと襲いかかってくる。


 「防御陣(プロテクション)ぱんち!!」


 ーーガキイィィィン!!


 防御陣(プロテクション)ぱんちで迎撃する物の、金属のぶつかり合う音を立て、人造人間の装甲に防御陣(プロテクション)ぱんちが弾かれてしまった。


 「えっ!?やばっ!?」


 相手の想像よりもずっと速い動きに防御陣(プロテクション)を展開する暇がない!!

 ぼくが焦った次の瞬間、アルバがさっと背後に飛び退き、人造人間の攻撃が床を破壊した。


 「危なかったぁ……。アルバ、ありがとう」

 「まさか、ノルンの防御陣(プロテクション)ぱんちがまったく効かないとは……。こうなれば闇のオーブを使わないといけないかもしれませんね」

 「えぇ〜!?あれだけは使いたくないよぉ……」


 破戒なら絶対倒せるけど、あれを使うのはやだ……。

 リライザの助言を拒否するとアルバがぼく達に告げた。


 「我がいる以上、必要ない。ノルン。リライザを落とさないようしっかり持ちながら、振り落とされぬよう我にしっかり掴まれ」

 「う、うん」


 リライザをぎゅっと握りしめながらアルバの体毛を握りしめた次の瞬間、アルバの体は宙に飛んでいた。

 先程攻撃してきた人造人間の頭が、アルバの振るった右前足の爪によって、一瞬で壁に思いきり叩きつけたリンゴのように粉々に砕け散った。

 人造人間の頭を粉々に砕きアルバが着地すると、頭を失った人造人間が首側から一瞬で石化していき、直後に跡形もなく粉微塵に砕け散って粉塵と化した。


 「うわあ……すっごーい……」


 たった一撃であんな硬い相手をまるでトマトを潰すかのように……。


 「アルバライザー!!新手が来ます!!」


 ぼくがアルバの力に驚いてると、リライザがぼくの手の中からアルバに叫ぶ。

 4体の人造人間がこちらに迫ってくる。

 2体は先程の人造人間と同じように両手で斬馬刀を振りかぶりながら、飛びかかってくる。

 もう2体は両手で斬馬刀を構えながら、アルバを串刺しにしようと突進してくる。


 「くだらん」


 アルバの両目が光った次の瞬間、人造人間達は手にした武器ごと石化し、粉々に砕け散り粉塵と化した。


 「強い……。アルバ強いね!!」


 ぼくが歓喜の声を上げると、アルバはガオオオンっと咆哮をあげた。


 「大した事ないね。もう諦めて降参したら?」


 アルバに跨りリライザを突き出しながら、ジェイガンに降伏するよう告げると、ジェイガンは口元を歪めながら言った。


 「まだだ!!いつそれで我が研究の成果が終わりだと言った!!」

 「それはどういう意味?」


 ぼくが聞き返したその時、王城の外から複数の悲鳴が聞こえてきた。


 「何!?シャイン!!」


 光の上級精霊シャインに外の様子を伺わせると、アルバが倒したのと同型の人造人間達がみんなを襲っていた。

 農具や鉄の武器ではまったく歯が立たず、逃げ惑う事しか出来ない人々の姿をシャインの目を通じて見た。

 まだ死人は出てないようだけど、時間の問題だった。


 「アルバ!!外のみんなが危ない!!」

 「ふははははは!!外の人造人間達の数は100体!!虫けら共が何人死ぬかな!?はははははは!!」


 アルバの力なら、人造人間を全部倒すのは容易い事のはず!!

 すぐに助けに行かないと!!


 「アルバお願い!!みんなを助けに行かないと!!」


 ぼくがそう叫んだその時だった。

 アルバは一言呟いた。


 「ーー来る」

 「……えっ?」


 ーーズガアアアアアンッ!!


 轟音と共に王城の天井をぶち抜いて、一人の男性がぼく達の前に降り立った。

 瓦礫の埃が舞う中、ゆっくりと立ち上がる聖騎士の鎧を身に着けたその人は……。


 「……だーりん!!」


 ぼくがずっと会いたかった、勇者ラインハルト・レオス様その人だった。

 思わずアルバの背中から飛び下りて、リライザを腕輪モードにしてだーりんに駆け寄ると、そのまま飛びつく。

 だーりんは驚いた顔をしつつも、ぼくを受け止めてくれた。


 「……え?ノルン?」

 「そうだよ!!だーりん会いたかった!!」


 だーりんの首に両手を回しながら頷く。

 残り4体の人造人間が武器を振り上げながら、だーりんに襲いかかってくる。


 「だーりん!!」


 ぼくを左手で抱き上げながら、右手で神剣を一閃させた次の瞬間、人造人間達は真っ二つにされて粉塵と化した。


 「迎えに来るのが遅くなってごめん」


 だーりんは抱き上げたぼくの顔を見つめてそう謝ってくれる。


 「だーりん……。ぼくだってわかるの?」

 「例え、どんな姿だろうと俺がノルンの事見間違えるはずないだろ?」


 そう言ってだーりんは微笑んでくれる。


 「ぐす……。だーりん会いたかったよぉぉっ!!」

 「俺も会いたかった。君がさらわれてからずっと、生きた心地がしなかった。生きててくれて良かったよ」

 「うわあああん!!だーりん〜!!」

 「よしよし」


 だーりんに抱きついてわんわん泣いてると、だーりんは優しくぼくの背中をぽんぽんしてくれた。


 「ところでこの状況は?」


 だーりんがもっともな質問をしてくると、だーりんが空けた天井の穴から見知った顔ぶれが次々と下りてきた。


 「ノルンー!!無事かああっ!!」

 

 飛空戦艦から垂らされたロープに掴まって鎧を着たパパが降りてくる。


 「パパ!!」

 「「ノルンー!!」

 「レイリィおねーちゃん!!ガリアードさん!!」


 続いて前世の両親が神器の力で飛んできた。


 「「お姉様ぁぁぁっ!!」」

 「ノルンー!!」

 「リィちゃん!!アイちゃん!!ルフィア!!」


 他にも聖騎士団のおじさん達も次々と降りてきた。


 「みんな!!」


 みんなが迎えに来てくれた!!

 すっごく嬉しい!!


 「役者は揃ったようだ。全員に我が見てきた事を見せてやろう」


 アルバがそう言って、リライザに状況を教えた時と同じ事をする。

 全員のおでこが光った瞬間、みんなは今何が起きているのか、ぼくがどんな目にあってきたのかを理解した。


 「若返りの薬……?それで小さかった頃のノルンと同じ姿なのね」


 幼い頃のぼくを知るレイリィおねーちゃんがそう呟いた。


 「ともかく、ノルンが無事で良かった。アルバライザー。これまでノルンを守ってくれてありがとう」

 「気にするな。我が友よ」


 だーりんのお礼にアルバはそう答えた。


 「だーりん」

 「なんだい?ノルン」

 「ごめんね……。ぼく、こんな姿にされちゃって……」

 「ノルンのせいじゃない。気にしなくていいんだよ」


 ぼくが謝るとだーりんは優しい顔でそう言ってくれた。

 でも……。


 「だって、元はと言えばぼくがわがまま言ったのが原因だもん……」

 「いや、ノルンに寂しい思いをさせた俺が悪かったんだ。もう二度とそんな思いはさせないから。だから、これからも俺の側にいてほしい」


 そう言って、だーりんはおでこをぼくのおでこに触れさせる。


 「……だーりん!!ぼくの方こそごめんなさい!!だーりんはお仕事で忙しかったのに!!ぼくわがままだった!!」

 「いいんだ。好きな子にわがままのひとつやふたつ言われるのも男の甲斐性さ」

 「……ふえぇぇぇんっ!!だーりーん!!」


 だーりんの優しい言葉にぼくはだーりんの首元に抱きついて、わんわん泣きじゃくる。


 「ごめんなさい。だーりんごめんなさい……」

 「俺は怒ってないから。だからもう泣きやんで」

 「だってえ……。ぼくのわがままのせいで、だーりんだけじゃなくて、みんなにも迷惑かけて……」

 「みんなノルンの事を心配こそすれ、怒ったりしてないから」

 「ぐす……うん……」


 みんなの方を見ると、みんな優しい顔でぼく達を見てた。

 あとでみんなにも謝らなきゃ……。


 「ぐす……ごめんね、だーりん。せっかくだーりん好みの大きさに育ってたのに……」

 「うん?」

 「こんなぺったんこになっちゃって」

 「えぇと、何の事?」

 「だって、だって、だーりんはおっきな胸が好きなんでしょ?旅の時とか、ルフィア達を紹介した時とか、胸のおっきな女の子に会ったらちらちら胸見てたし……」

 「な!?な、なに言ってるんだか」

 「最近はちらちらぼくの胸とかおしりとか見てたし、おっきいのが好きなんでしょ?なのにこんな……」

 「い、いやいやいや、ノルンさん。それは誤解」

 「ノルン。そのくらいにしてあげてください。それに今はそんなこと言ってる場合ではありませんよ」


 リライザがぼくとだーりんの会話を遮りそう告げる。

 そうだよ。今はそれどころじゃなかった。

 慌てて周囲を見回すと、いつの間にかジェイガンは姿を消していて、みんなは何故か白い目でだーりんの事を見ていた。


 「そうだったよ!!外にいる人達が大ピンチなの!!みんな力を貸して!!」


 アルバの力で状況を把握していたみんなは頷くと武器を手に外へと飛び出す。


 「だーりん。ぼくはアルバの背中からみんなを助けるね」

 「わかった。とりあえず外のを全滅させよう」

 「うん!!全部終わったら、離れてた間の分いっぱいお話しようね」

 「ああ。話したい事が沢山あるんだ」

 「うん!!」


 神剣を手にしただーりんと聖杖モードにしたリライザを手にアルバの背に乗ったぼく。

 みんながいて、だーりんも来てくれた今、もう何人たりともぼくらは止められないよ!!

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