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今こそ聖戦!!

 「ぎゃああああっ!!拳が!!俺の拳があああっ!!」


 防御陣(プロテクション)の壁を思い切り殴りつけた事で、拳が砕けたクズ騎士が砕けた拳を押さえながら喚き散らす。

 ぼくは喚き散らしているクズ騎士を無視して倒れてる男の子の怪我を治してあげる。


 「中級回復魔法(ミドル・ヒール)


 ぼくの放った中級回復魔法(ミドル・ヒール)の光が一瞬で男の子の怪我を治し、血で汚れていた服も綺麗に浄化させた。


 「うぅ……。あ、あれ?」

 「坊や。逃げなさい」


 見た事もない白金の獣に乗った、自分よりも幼い姿の女の子にそう言われて、男の子は戸惑うが拳が砕けて泣き喚いているクズ騎士の姿を見て、すぐに我に返ると踵を返して走り去っていった。


 「ノ、ノエル……?どうして、ここに?」

 「その獣は……?まさか、幻獣?」


 アスモデール夫人とアスモデール公爵が、突然空から降りてきたぼく達を見て驚愕の表情を浮かべ狼狽える。

 ぼくがアルバの背中の上からじろりと二人の顔を睨みつけると、公爵夫妻は慌てて子供想いの両親の仮面を被って口を開いた。


 「す、すごいわノエル!!まさかその年齢で幻獣様を使役出来るなんて!!」

 「もしかして幻獣様と契約出来たのを見せにお父様とお母様を探しに来てくれたのかい?すごいじゃないかノエル」

 「ーー貴様ら如きが気安くノエルの名を呼ぶな」


 アルバが殺気を込めた言葉を公爵夫妻に向けて言い放つ。

 アスモデール公爵令嬢としてぼくに与えた偽の名前が、たまたまなのか狙ってなのかは知らないけれど、前世のぼくの名前と同じなのがアルバにとっては思う所があったみたい。

 最強の神聖獣に睨まれた二人はまるで蛇に睨まれた蛙そのものだった。


 「かつてはその名前で呼ばれた事もあるけれど、今の私の名はノルン・フォルシオン!!そして私の両親はあなた達のような非道な人ではありません!!」


 ぼくはリライザをアスモデール公爵夫妻に向けてそう言い放つ。


 「く……。まさか洗脳が解けたのか!!」

 「ならもう一度洗脳するまで!!ママが悪い子を良い子にしてあげるわ!!」


 夫人が魔力増幅の杖を取り出してこちらに向けた瞬間だった。


 「が……!?」

 「ひ……!?」


 アルバの両目が光ったその瞬間、一瞬で公爵夫妻の口元と両手両足が突然石化した。

 部分的に石化してもう喋る事も動く事も出来なくなった二人は、今の自分達の状態に困惑して視線をキョロキョロさせる事しか出来ない。


 「屑め。身の程を知れ」

 「これ、アルバがやったの?」

 「そうだ。本来なら一瞬で石化させその身と魂さえも粉々に打ち砕くのだが、わざと部分的に石化させた」

 「アルバライザー。これはかつて神剣と私を内包した聖女の像を作り出した能力ですね」

 「うむ」

 「アルバ。これからこの国を腐らせてる連中を全員捕まえに行くよ」

 「わかった」

 「召喚(サモン)ウィンデネ。ウィンダム」


 水の上級精霊ウィンデネと風の上級精霊ウィンダムを召喚して、彼等の力をぼくは行使する。

 精霊魔法は召喚した精霊達の力を借りる事で術者のイメージする効果を発揮出来るんだ。

 公爵夫妻とクズ騎士を風と水で出来た巨大な玉の牢獄の中に放り込んだ。

 外部と内部からの攻撃を水の力が吸収し、風の力で任意の場所に移動させる牢獄。

 その名も牢獄球(プリズン・ボール)

 ぼくはそれからもアルバに乗ってガルフ国内すべてを回り、アルバが部分的に石化させた悪党達を全員、牢獄球(プリズン・ボール)の中へ放り込んでいった。


    ☆


 悪党達を全員魔法の牢獄にぶち込み、ぼくは国内各地に以前回収した竜のしっぽを配った。

 栄養とか考えたら、お野菜とかお米を食べさせてあげるべきなんだけど、生憎飢えた人達全員に食べさせられる量は異次元ポケットに入ってなかった。

 巨大な竜のしっぽを切って食べさせてあげると、みんな泣きながら喜んでくれた。


 最初はぼくとアルバの見た目でみんなにすごく警戒されたけど、怪我や病気で苦しんでいた人達を全員まとめて回復魔法で治療して、竜のしっぽを目の前で調理して提供したら、みんなぼくを受け入れてくれた。

 ロマリアやグリアモール邸で働いていた良識のある人達が、ぼくが勇者ラインハルトと共に世界を救った聖女である事を話して回ってくれたのも上手く事を運ばせてくれた。


 「皆さん。慌てないでもまだまだ沢山ありますから」


 火の上級精霊フレイアの力と火のオーブで竜のしっぽの串焼き肉を焼いてみんなに配っていると、身なりの良い男性がぼくの元にやってきた。


 「聖女ノルン様。この度は我がガルフ帝国の民を救っていただき心から感謝します」

 「あなた様は?」

 「私はこの国の王の弟でリヒャルトと申します。この度は第一王子の愚行により聖女様に多大なご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません」


 聞けば、第一王子リードヴィッヒは腕の立つ旅の魔術師を自身の陣営に引き入れ、父親である王を傀儡にして好き放題しているのだとか。

 典型的なよくあるお話だった。

 リヒャルト様はずっと代々鎖国政策をしてきた王家とこの国の未来を憂いてずっと良識のある貴族達と何とかしようとしていたそうだ。


 「我等の力が及ばず、民達にこのような辛い生活を強いてしまい、本当に情けない限りです……」

 「……リヒャルト様は本当に国民の皆さんの事を考えてくださっているのですね」


 先程から周囲の様子を見る限り、みんなリヒャルト様の事を信頼しているようだった。

 誰一人、彼に対して敵意の目を向けていない。

 これなら、身の程知らずのロリコン馬鹿王子達を排除すればこの国も平和になりそう。


 「安心して下さい。私が女神ミリシャルの名において、罪なき人々を苦しめる悪人達に天誅を下します」


 ぼくはそう言って、リヒャルト様に微笑む。


 「天誅、ですか?」

 「ええ。皆さん。夜が明けたらこの国を取り戻しましょう。これは聖戦です!!」


 ぼくはそう言って、リライザを天に向けて突き上げる。

 ぼくの言葉にみんな一瞬ポカンとした表情を浮かべたけど、すぐに意味を理解して賛同の声を上げてくれた。


 「おおっ!!聖女様の言うとうりだ!!」

 「この国を取り戻すんだ!!」

 「俺達には聖女様と幻獣様がついていてくださる!!」

 「武器を取れ!!みんなで平和を取り戻すんだ!!」

 「おおーっ!!」


 平和を望むみんなの声が国中に鳴り響く。

 この日、虐げられてきた人々の心が今、ひとつになった。


    ☆


 ーー翌日。

 日が昇るのと同時にこの国を取り戻す為の戦いの火蓋が切って落とされた。

 農具や武器を手にしたみんなを引き連れ、ぼくはアルバの背に乗りガルフ城へと向かう。

 大きな鋼鉄製の城門とそれを守護する兵士達が目に入る。

 兵士達はこちらを見て大声で叫ぶ。


 「クーデターだ!!すぐにリードヴィッヒ殿下にご報告を!!」


 兵士の1人が大慌てで城門越しに中の兵士に伝令を伝える。


 「聖女殿。まずはあの強固な城門を突破しなければなりません。今こそ、幻獣様のお力を」


 ぼくたちに同行しているリヒャルト様の言葉をぼくは、アルバの背中からニコリと微笑んで遮る。


 「大丈夫です。あの位私が破りますから」


 ぼくは特大の防御陣(プロテクション)ぱんちを頭上に展開して高速回転させ、城門目掛けて発射した。


 「防御陣(プロテクション)ふぁんとむ!!」


 鋼鉄の城門が防御陣(プロテクション)ふぁんとむで粉々に粉砕され、衝撃で外と中の兵士達が吹っ飛ぶ。

 ぼくは即座に新しい特大の防御陣(プロテクション)はんどを左右一対作り出すと、悪党達を閉じ込めている牢獄球(プリズン・ボール)を掴む。

 このためにわざわざ、ウィンダムの力でぷかぷか浮かせてここまで持ってきたんだから。


 「これが国民みんなと私の怒り!!宣戦布告です!!」


 左右の防御陣(プロテクション)はんどが牢獄球(プリズン・ボール)を大きく振りかぶって……。

 ロリコン馬鹿王子がいるであろう王の間目掛けて全力投球した!!


 ブオンッ!!

 ーーズガアアアアアアアン!!


 ざっと数えても百人以上を閉じ込めた牢獄球(プリズン・ボール)が見事お城の外壁をぶち破り、目標に届いたのを光の上級精霊シャインの目を通して確認した。


 「うふふ♡我ながらナイスピッチングでしたね♡」


 隣のリヒャルト様にそう言って微笑むと、リヒャルト様は何故か表情を引きつらせながら頷いた。


 牢獄球(プリズン・ボール)の直撃を免れたリードヴィッヒが、腰を抜かしてへたり込みながら、牢獄球(プリズン・ボール)の中で目を回してる悪党達を見て恐怖に引きつった顔をしているのをシャインの目を通して見た。


 「うふふふ♡た~っぷりお返ししてあ・げ・る♡」


 隣のリヒャルト様に聞こえないように、ぼくはこっそりとそうつぶやくのだった。

黒幕をボコるとこまでいけませんでした……。

早めに続きを投下したいと思ってます。

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