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無限しっぽ

 私の言葉にノルンは至って真面目な顔で返しました。


 「えぐくないよ。命をいただくってそういう事なの」

 「えぇ……?だって、竜ですよ……」

 「それがどーかしたの?牛さんや豚さんと変わんないよ?」

 「ですがあれ、人の言葉喋ってますよ?」

 「いやだなあ。リライザ。あれはただの鳴き声だよ。人の言葉に良く似てるだけの鳴き声」

 「えぇぇ……」


 グリアモスが何とか防御陣プロテクションはんどから逃れようともがくのをまた防御陣石畳プロテクションいしだたみに叩きつけてノルンはそう言いました。


 ぶちぃっ!!


 「ぎゃあああああああっ!!」


 グリアモスのしっぽが千切れ、そのまま転がっていきます。


 ノルンは千切れたしっぽの断面を防御陣プロテクションで作ったナイフで薄く削ぎ、防御陣プロテクション製の串に刺すといつの間にか私に装着した火のオーブで炎を出して焼きました。

 絶妙な火加減でサッと焼いたグリアモスの肉をノルンはぱくっと口に入れます。


 「ああああっ!?何してるんですか!!ぺっしてください!!ぺっ!!」


 そんな物を食べてお腹を壊したらどうするんですか!!

 ですがノルンは私の言葉など意に介さず、もぐもぐと咀嚼してごくんと飲み込みました。


 「……美味し〜い♡これこれ♡絶対だーりんが喜ぶよ♡」


 ほっぺたに手を当てて心底美味しそうな笑顔で、ノルンはそう言い放ちました…。


 「……死ねええええっ!!」


 しっぽを失ったグリアモスが灼熱の炎をこちらに向けて吐き出します。


 「防御陣プロテクション


 しかし、あっさりとノルンに防がれます。


 「防御陣プロテクションまぐなむ!!」

 「グボアアアッ!!」


 高速回転する防御陣プロテクションの拳がグリアモスに直撃して沈黙させました。


 「あっ。ぼくいい事思いついちゃった♪」


 ノルンは防御陣プロテクションはんどでグリアモスを地面に押さえつけて固定します。


 「局所最高位回復魔法ピンポイント・エクス・ヒール


 グリアモスの千切れたしっぽが一瞬で再生しました。


 「ノルン。いったい、どういうつもりなんですか?」

 「……ふん。今更そのような事をしても決して許さぬ!!必ず殺す!!」


 あ。まだ、生きてたんですね。

 ノルンは私とグリアモスの言葉を無視して、新しい防御陣プロテクションの手を作り出します。


 ぶちぃっ!!


 「ぎゃあああああっ!!」


 再生したばかりのグリアモスのしっぽが防御陣プロテクションはんどで引きちぎられました。


 「局所最高位魔法ピンポイント・エクス・ヒール


 またグリモアスのしっぽが再生します。

 ぶちいっ!!


 「ぎぃえええっ!!」


 また、しっぽが引きちぎられました。

 ノルンは引きちぎったしっぽを異次元ポケットに放り込みながら言います。


 「次にまたドラゴンが出てくるのいつになるかわかんないし、こうやって何度も再生させたらお肉取り放題だよね♡」

 「えええ……」


 この時、私はノルンを初めてこわいと思いました……。


 ぶちぃっ!!


 「局所最高位魔法ピンポイント・エクス・ヒール!!」


 ぶちぃっ!!


 「ぎぃやあああっ!!」

 「局所最高位魔法ピンポイント・エクス・ヒール!!」


 ぶちぃっ!!


 「ぎえええええっ!!」


 異次元ポケットの中に入れておけば、時の止まる異次元空間の効果で、いつまでも新鮮なお肉が食べられます。

 ノルンとラインハルト様の二人で、1日300グラム消費したとしても100年位持つほどの量のしっぽを回収しました。

 何度も何度もしっぽを再生させられては、無理矢理引き抜かれて流石にグリアモスも泣いてます。


 「もうそろそろいいかな」


 数え切れない位しっぽを引き抜き、最後の再生をさせたところでノルンがそう言いました。


 「それじゃそろそろ締めておわりにしようっと」


 ノルンがそう言ったその時でした。


 「があああああっ!!」


 火事場の馬鹿力と言う物でしょうか。

 何度もしっぽを引き抜かれる痛みで脂汗をだらだらと流していたグリアモスが、最後の気力で自身を押さえつけている防御陣プロテクションはんどからぬるりと脱出しました。


 「あっ」


 すっかり油断していたノルンと私の真上にグリアモスが飛びあがったかと思ったら、脱出するのに力を使い果たしたのかそのまま落ちてきました。

 このままだと踏み潰されてしまいます!!

 絶対絶命です!!

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