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聖女の幸せ

 「うふふふふふ……♡」


 ノルンはろくでもない事を考えている表情のまま、防御陣プロテクションふぁんとむで殴り飛ばした竜王グリアモスの元へ歩いていきます。


 「ノ、ノルン。いったい、何をするつもりなんですか?」


 私がこの状況に戸惑いながら尋ねると、ノルンは笑いながら言いました。


 「ぼくねえ、ちょっと前まではお料理するのってめんどくさいから好きじゃなかったんだよねえ。おばーちゃんに仕込まれたから出来るだけで」

 「は?な、なぜ今そんな話を……?」

 「でもね。好きな人が出来て、ぼくが作ったごはんを美味しいって食べてもらえるようになって、料理するの好きになってきたんだよ。他の人はどうか知らないけど、ぼくは好きな人の為にごはんを作れる事に女の子の幸せみたいなのを感じるようになったの」

 「は、はあ……」

 「だーりんが喜んでくれるから、いろんな美味しいごはんを作ってあげたいのよね。でもさあ、中々手に入らない材料とかあるんだよねえ」


 さっきから、いったい何を言ってるんですか……?

 この子が何を言ってるのか、私はさっぱり理解出来ません……。


 「前に邪神討伐の旅してた時にね。だーりんのおばーちゃんに会った事があるの。その時にすっごく美味しい物を食べさせてもらったんだあ。それ、だーりんの大好物なんだって」

 「は、はあ」

 「ぼくって超ラッキーだよね♡もうすぐ疲れて帰ってくるだーりんに大好物を食べさせてあげられるんだもん♡」

 「ま、まさか、ノルン……?」


 嫌な予感がします!!

 ノルンはご機嫌な笑顔で私に言いました。


 「ドラゴンステーキ♡滅多に見つからないドラゴンのお肉が手に入るなんて、今日はツイてるよぉ♡」


 嫌な予感が的中しました!!


 「まさか、竜王グリアモスを狩るつもりなんですか!?」

 「そうだよ?」


 ノルンは何でもないことのように平然とそう答えました。


 「無茶言わないでください!!ノルン一人でどうやってあれを倒すつもりなんですか!?」


 私がそう叫ぶと、ものすごい速さで竜王グリモアスがこちらに飛んできました。


 「おのれ!!よくも小癪な真似をしてくれたな小娘があああっ!!」


 顔面を殴り飛ばされた事で激怒しているグリアモスの口内に、灼熱の炎が溢れ出します。


 「ノルン!!炎のブレスが来ます!!」

 「防御陣プロテクション

 「モガアッ!?」


 私の言葉に被せるようにノルンが防御陣プロテクションを発動させ、グリアモスの口内に防御陣プロテクションの塊が発生しました。

 口の中いっぱいに防御陣プロテクションの塊を詰め込まれたグリアモスは、目を見開き何とか口内の防御陣プロテクションを吐き出そうとします。

 短い手で何とか口内の防御陣プロテクションを取ろうとするその姿は、どこか滑稽です。


 「な、なるほど!!あれなら炎のブレスを封じ込められますね!!ですが竜の鱗を破壊する手段がありませんよ!?」

 「そうだね。多分八つ裂き防御陣プロテクションでも切れないかも。あれけっこう高位の竜みたいだし」

 「じゃあどうするんですか?このままノルドさんが来るまで持ちこたえるのですか?」

 「パパの出番はないよ。防御陣プロテクションまぐなむ!!」

 「んごおふっ!!」


 質量を付与された高速回転する防御陣プロテクション製の拳が振り下ろされ、ズドンッとものすごい音を立てて、グリアモスの頭を地面に叩きつけました。

 一度ならずニ度までも殴られたグリアモスが、土ぼこりの中から殺意を込めた視線を向けながら立ち上がると、こちらに向かってその太いしっぽを鞭のようにしならせ攻撃してきました。


 「防御陣プロテクションはんど」


 巨大な防御陣プロテクションで出来た手がグリアモスのしっぽをがっちりと掴み取ります。


 「すごい……」

 「別にどうってことないよ。竜なんて、ブレスを吐くかしっぽを振る位しか攻撃手段ないじゃない。どんな攻撃が来るのかわかってれば防ぐのなんて簡単だよ。それにぼく、動体視力には自信あるからね」


 ノルンは私にそう答えます。


 「それにね。刃物が通らないなら、こうすればいいんだよ。リライザ」


 ノルンがグリアモスのしっぽを掴んだ防御陣プロテクションはんどを動かします。

 ぐるんぐるんと何度も何度もグリアモスの巨体を振り回します。


 「防御陣石畳プロテクションいしだたみ!!」


 地面に防御陣プロテクションで出来た床が張られ、ノルンはそこ目がけてグリアモスを叩きつけました。


 「ぐほああっ!!」


 ぽーんっとグリアモスの口内に詰められていた防御陣プロテクションの塊が、衝撃で吐き出されどこかに飛んでいきます。


 「お、おのれ……!?」


 防御陣プロテクションはんどが再び、ぐんっとグリアモスを勢いよく振り上げ、また防御陣石畳プロテクションいしだたみに叩きつけました。


 「ぐはあっ!!」


 びたーん!!びたーん!!びたーん!!と何度も何度もグリアモスは防御陣石畳プロテクションいしだだみに叩きつけられています。


 「刃物が通らないなら、質量を込めた攻撃をすればいいだけだよ。鱗が無事でも内臓への衝撃とかは吸収出来ないよね」


 ノルンはそう言って、何度も何度もグリアモスを叩きつけます。

 バキィッと音を立てて、グリアモスの角が折れ空中を舞い、地面に突き刺さりました。


 「竜のツノゲットー♪これでハンコとか作ってプレゼントしたらおじーちゃん喜んでくれるかなあ」


 ノルンは笑いながら、異次元ポケットに新しく作った防御陣プロテクションはんどで角を掴んで放り込みます。


 「お、おのれ……。よくも我の角を……」

 「防御陣プロテクションはんまーぱんち!!」


 グリアモスの頭を防御陣プロテクションはんまーぱんちで殴りつけて黙らせます。


 「防御陣プロテクションピーラー」


 皮むき器の形をした防御陣が作り出され、グリアモスの首の鱗が一周分剥ぎ取られました。


 「ウギャアアっ!!」

 「中々いい鱗だよ、リライザ。これ護符とかの素材に最適だね」


 剥ぎ取った鱗を異次元ポケットにしまいながら、ノルンはそんな事を口にします。


 「こ、殺す……。殺してやる……」


 グリアモスが怨嗟の声を上げますが、ノルンは意に介さず再びグリアモスを防御陣石畳プロテクションいしだたみに叩きつけます。


 「ぐはあああっ!!」


 力の差は圧倒的でした。

 よくよく考えたら、この竜は私を手に入れる前のノエルに封じ込められる程度の相手なんですよね……。

 私を手にし、異界の最高神グラウディオス様のご加護をも持つ、今のノルンに敵うはずがありません。

 更にノルンには切り札としてグレートラインハルトと、邪神さえ封じ込める封印魔法ラ・シールがある訳ですし。

その気になれば闇のオーブを使うという手もあります。


 「下ごしらえはこんなものかなあ。もうかなりお肉柔らかくなったはず」


 前世のトラウマとか因縁等まったく意に介さず、ノルンはそう呟きました。


 「ノ、ノルン……。本気で言ってるんですか?大体、こんなのどうやってお肉にするつもりなんですか?」

 「ん?リライザ知らないの?竜を締めるなんて鶏を締めるのとほぼやり方おんなじだよ。首を落として血抜きをしたら、鱗を全部剥いでね、お腹を切り開いて内臓を取ってあとは部位事に切り取るだけ。血と内臓は毒があるから浄化魔法で無害化してから廃棄しなきゃいけないけどね。

あと、骨は万が一にもアンデッド化しないように全部粉々に砕いてから焼却。角と爪と牙と鱗と心臓にある宝石ドラゴンハートは貴重な素材だから回収。これだけだよ。まあ、全部だーりんのおばーちゃんに教わった事の受け売りだけどね」

 「え、えぐいことを平気な顔で言わないでください……」


 いったい、どこの世界に竜をソロ狩りして、解体して食肉と素材にする聖女がいるんですか……。

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