7.前世、思い出しちゃいました…
背中まである白金の長い髪と、宝石のような蒼い瞳。
色素の薄い透き通るような白い肌。
まるで今にも消えてしまいそうな、儚げで可憐な美少女。
まるで神が遣わした天使か、妖精のようだと、ぼくを初めて見る人達は皆、口を揃えたかのようにそう評価してくる。
見た目だけで勝手に、ぼくという人間を判断してほしくないのだけれど、正直知らない人達の評価なんてどうでも良いかな。
亡くなったママがエルフのクォーターだったから、こんな見た目なだけだもん。
……と、階段を歩いてる途中だったよ。
考え事しながら歩いてたら危ない危ない。
ぼくはまだ、おばーちゃんやレイリィおねーちゃんみたいに自分の足元が見えないほど、おっぱいおっきくないけど……。
それでも足元に注意しながら歩かないと危ない。
多少は出てるけど、まだ小さな胸元越しに足元に気を付けながら、階段を歩く。
……ライ様もおっきい方が良いのかなあ。
思わずそんな事を考えていたら、階段を踏み外してしまった。
「あっ」
まずいと思った時にはもう遅い。
ライ様が気付いてこちらに手を伸ばしてくれたけど、間に合わずぼくは後頭部を思いっきり、階段に打ち付けたのだった……。
ゴツっと言う鈍い音と涙が出る位の痛みの中、ぼくは知らないはずの光景を思い出した。
こちらを見つめて笑う黒い髪の夫婦。
色とりどりのヒーローが映し出されている黒い箱。
そして……。
ぼくはぼくの名前を慌てた様子で、呼び続けるライ様の声を聞きながら、意識を失ったのだった……。
☆
「んん……。ここ、ぼくの部屋…?」
意識が戻ったぼくが、ゆっくりとベッドから起き上がり周囲を見渡すと、そこは実家の自室だった。
「そうだ……。たしか、頭を打って……」
ベッドから降りて、ママが生前使っていた鏡台の前に行く。
閉じてる鏡を左右に開いて頭の確認をすると、特に頭の怪我はなさそうだった。
「おばーちゃんが治してくれたのかな……」
そう呟いて頭を擦りながら、鏡を見ると鏡の中の自分と目が合う。
そこで頭を打った時の事を思い出した。
「思い出した……。ぼく、前世で男の子だったんだ……」
頭を打った事で、ぼくは前世を思い出したのだった……。