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聖女の想い

 「氷結魔法ブリザード!!」


 リィちゃんが魔導銃(まどうガン)から放った魔法がぼくの作り出したゴーレムを氷漬けにして動きを止めた。


 「姫様!!今ですわ!!」

 「はあああっ!!」


 アイちゃんの言葉に続きルフィアが光刃剣こうじんけんと名付けたぼくお手製の剣を振るい、ゴーレムを頭から真っ二つに斬り裂いた。


 「……まさかここまで行けるとは思わなかった。シルフィアーナ姫の才能は末恐ろしいな」

 「ルフィアはずっと努力してたもん。これくらいやれるってぼくは信じてたよ」

 「姫だけではありませんよ。リィナさんとアイラさんのレベルアップも目を見張る物があります。現在、シルフィアーナ姫がレベル24、アイラさんがレベル25、リィナさんがレベル23です」


 ケイトおねーちゃんとリライザと一緒にぼくは戦闘訓練を終えた三人を見る。

 元々才能があったのか、三人の成長速度は目を見張る物があった。

 ルフィア達は今の戦闘がどうだったか感想が聞きたくてこちらを見てくる。

 ケイトさんが満足そうに頷き、ぼくも手を叩いてにっこりと微笑む。

 すると三人はすごく嬉しそうな笑顔を見せてくれた。


 「……っ」


 不意にルフィア達の姿が夢の中に出てきた三人の姿と重なって見えた。

 魔族の証であるツノがない、人間の剣士シルフィ。

 今みたいな赤い髪じゃなくて、艷やかな栗毛のアイル。

 金髪じゃなくて、ぼくと同じ白金プラチナブロンドの髪のリィン。

 いつだって戦いが終われば、心配してるぼくを安心させようと、あの子達はあんな顔をしてた……。


 「……ルン。ノルン。どうかしましたか?」


 リライザのその言葉にぼくの意識が現実に引き戻された。


 「……ううん。なんでもないよ。三人共すっごい早さで強くなってくから感慨深くて」


 ぼくのその言葉にルフィア達はすごく嬉しそうな顔をする。


 「このまま行けばノルンとパーティーが組めるレベルまで行けるだろうか」

 「わたくし絶対、お姉様と肩を並べられるようになりますわ!!」

 「わ、わたしもがんばります!!」

 「その意気だよ。三人共。努力は必ず己の糧になるからね。今後も努力を怠るんじゃないよ」

 「「「はい!!」」」


 ケイトおねーちゃんに言われた言葉にとても良い返事を返し、先程の戦闘について意見を出し合うルフィア達をぼくは、黙って見守るのだった。


  ーーその日の夜。


 ぼくはまた、ノエルの夢を見た。

 廃墟と化した神殿で、傷ついて倒れたシルフィ達に泣きながら、回復魔法をかけ続けるノエル。

 まだリライザを手に入れてない未熟な聖女の力では、三人を助ける事が出来ない。

 地面が三人の流す血でどんどん赤く染まっていく……。


 「どうして!?どうして傷が塞がらないの!!」


 ずっと回復魔法ヒールをかけているのに、血が止まらない。

 魔力切れを起こして、もう回復魔法ヒールが発動しない…。


 「もういい……。もういいんだ……。ノエル……」

 「シルフィ……!!」

 「わたくし達は……ここまでのよう……ですわ……。神様……。どうか、お姉様にご武運を……」

 「アイル……!!」

 「お姉ちゃん……。世界を……みんなを守って……」

 「リィン……!!やだ……!!やだやだやだ!!みんな死んじゃやだ!!ぼくを一人にしないで!!お願いだから、死なないで!!」

 「一人じゃ、ありませんわ……」

 「この身が朽ちても、わたし達はずっと、一緒だよ……」

 「そうだ。私達はずっと一緒だ。ノエル……。ずっと見守っているぞ……」

 「シルフィ!!アイル!!リィン!!」

 「勇者と共に……。この世界に平和を……。そして、いつか……。平和な世界に生まれ変われたなら……」

 「その時も……」

 「また……お友達……に……」


 ぼくを守って戦い抜いた三人は、最後にそう言い残して息を引き取った……。


 「いやああああああっ!!シルフィ!!アイル!!リィン!!やだやだやだやだああああっ!!目を開けてえぇぇっ!!返事をしてよおぉぉぉぉっ!!」


 かけがえのない三人の友達を失い、ぼくは三人の亡骸に縋りついて子供のように泣きじゃくるのだった……。


 「……いやああああああっ!!」

 「……ノルン!?大丈夫ですか!?」

 「はあ、はあ……。ゆ、夢……?」


 夜中に飛び起きたぼくを心配するリライザに生返事を返しながら、ぼくは思った。

 もしかしたら、この夢は本当にノエルの記憶なのかもしれない。

 ルフィア達がシルフィ達の転生者なのかまではわからないけど、顔立ちも性格もすごく似てるから、今になってこんな夢を見たのかもしれない……。

 リライザを手に入れる前の出来事だから、おそらくリライザに聞いても真相はわからない……。


 「ノルン。もし何か悩みがあるのなら、一人で抱え込まずに私に相談してください」

 「……うん。ありがとう。リライザ。実はね……」


 ぼくはリライザにノエルの夢の事をすべて話した。


 「そうでしたか……。もしかしたら、ノルンが推測したとうり、シルフィアーナ姫達はノエルのご友人達の転生者なのかもしれませんね。彼女達と親しくなった事で、ノエルの記憶が蘇ったのかもしれません」

 「そんな事ってあるの?」

 「人の持つ想いの力と言うものは計り知れない物ですからね。ノエルのその時の想いが、今になって蘇ったのだとしても不思議ではありませんよ」

 「そう……なのかな……」

 「いずれにせよ、真相がわからない以上、そう結論付けるしかありません。ですが平和を取り戻したこの世界で、ノルンは生まれた場所も種族の違いもある彼女達とお友達になれた。それはきっと奇跡のような物です」

 「……そうだね。ルフィア達と出会えて友達になれた。これって運命なのかもね」


 ノエルは友達と悲しいお別れをしたけれど……。

 今度はそうならないようにしたい…。

 みんな一緒に大人になって、しわくちゃのおばーちゃんになっても……。

 ずっと、ずっと、友達でいたい。

 ぼくは三人の笑顔を思い浮かべながらそう、思うのだった。

 いつの間にか、真っ黒だった空が白み始めていた……。

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