聖女はクラスのマスコット
「ごちそうさまでした♡」✕19
皆さんお腹いっぱいすき焼きを食べてとても満足そうです。
ノルンは少食なのでお茶碗一杯分のごはんとすき焼きで切り上げましたが、皆さん初めてのすき焼きがとても美味しかったのか、少ない人でもお茶碗二杯、多い人でお茶碗四杯分おかわりしていました。
「お粗末様でした」
異次元ポケットに空の食器と鍋を放り込みながら、ノルンは笑顔で皆さんにそう返しました。
「すっごく美味しかったです。ノルン、良ければレシピを教えてください」
エルフの国のお姫様がノルンに感想を伝えつつレシピをおねだりします。
「いいよー」
「あっ。ずるい。ワタシにも教えて!!国の家族にも食べさせたいから!!」
「私もレシピ欲しい!!」
「私も!!」
「じゃあ、あとでメモに書いて渡すね」
すっかり仲良くなったご令嬢達は皆、砕けた口調でノルンと会話するようになりました。
「ノルンはこんな美味しい物を毎日勇者様に作ってあげてるんだよね?」
よその大陸から来た公爵令嬢がノルンにそう尋ねます。
「うん。流石に毎回違う料理を作るけどね」
「いいなあ、勇者様。でもさ、勇者様は料理人とか雇わないの?毎日ノルンが朝昼晩と勇者様のお食事作ってるんでしょ?毎日作るのって大変じゃない?」
「だーりんのごはん作るのは全然苦にならないよ。昔のぼくだったらごはんを毎日作るのめんどくさがったけど。今は好きな人が喜んで食べてくれるから。それにだーりんはぼくとの憩いの我が家に他人が出入りするの嫌なんだって」
ノルンのその言葉に別の公爵令嬢が喰い付きました。
「ほほう……。それはつまりノルンとの二人きりの時間を邪魔されたくないからと。愛されてますねー」
「う、うん。そうなるのかな」
「私も婚約者いるけどさ、ノルンみたいに毎日会ったり出来ないから羨ましい」
「いいよねー。もしかしたら、このクラスでノルンが一番経験豊富なのかもしれないね」
別の公爵令嬢がそんな事を言い出します。
「……経験豊富?」
ノルンが意味がよくわからないと言った表情でキョトンとします。
「またまたあ。前に凱旋パレードの時、勇者様の頬にキスしてたじゃない」
「あ、あれは女の子達がキャーキャー言ってたから、だーりんはぼくのだもんって、それで……」
「へぇ……。そうなんだあ……。それで、どこまで行ってるの?」
「え……?少し前にガリアス王国に遊びに行ったよ」
「いや、そうじゃなくて……」
「……んん?」
彼女が聞きたい意味がわからないらしく、ノルンはかわいらしくこてん、と首を傾げます。
「ノルン。彼女はノルンがもう勇者殿とキスとかしたのかそういうのを知りたいんだと思うぞ」
シルフィアーナ姫がド直球の助け船を出しました。
「え、あ、いや、そうだけど……。もっとオブラートに包んでください……」
「む……。すまない……」
「……」
二人がそんなやりとりをしてノルンを見ると、ノルンは顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
「だ、だーりんとキ、キスとか……。そんなの……まだ、だもん……」
ノルンは茹でダコのように真っ赤になりながら、呟きます。
「それに……。はじめてのキスは……。一生の思い出になるようなムードで……。だーりんからしてほしいし……」
(か、かわいい……!!)✕20
ノルンが呟いた恋する女の子らしい願望に私を含め、この場にいる全員がそう思いました。
「ああ!!もう!!私の親友はかわいいな!!」
シルフィアーナ姫がノルンを思わず抱きしめて叫びます。
「あっ!!姫様ずるいです!!」
「わたくしもお姉様抱っこしたいですわ!!」
「あらあら……。ノルンを抱っこするのは少しおあずけのようですね」
エルフのお姫様がそう言って笑うと、他のクラスメートもおかしそうに笑います。
同じ年の子達に比べてやや背が低く、精神年齢も幼いノルンは本性がばれた今、このクラスで一番小柄なせいもあり何かとよく皆さんに抱っこされてます。
「むー!!ぼくはぬいぐるみじゃないよお!!」
ノルンがそう言ってむくれると、シルフィアーナ姫がよしよしと頭を撫でます。
そんな光景を見て、皆がまた笑いました。
ノルンも本気で怒っているわけではないので、すぐ笑顔になります。
みんな仲良しで微笑ましいひと時でした。
あと何回になるかわかりませんが、引き続き終わりまでお付き合いいただけますと嬉しいです。




