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聖女と本当の友達

 「……ふう。これで一件落着かな?」


 ノルンがそう呟き振り返ると、信じられない物を見たという表情を浮かべたシルフィアーナ姫達と目が合いました。


 「あ……」


 仲良しの三人に王子に啖呵を切りあまつさえ、挑発して大暴れする素の自分を見られ、ノルンは言葉に詰まります。

 今までずっと、淑女モードで猫を被っていたのに王子達の理不尽さにキレて、暴れてしまいましたからとても気まずいです。


 「う……うわあああああん!!」


 突然、大声で泣き出したノルンにみんなびっくりして固まりました。


 「うわあああああん!!リライザあぁっ!!本当のぼく見られちゃったあああっ!!」

 「ノルン!!落ち着いてください!!みんな見てますよ!!」

 「だってえぇ!!せっかく出来たお友達だったのにいぃっ!!絶対引かれちゃったよおぉぉっ!!」

 「落ちついて!!落ちついてくださいノルン!!」

 「うわああああんっ!!ぼくはお友達が欲しかっただけなのにいぃぃっ!!それだけで学校入ったのにいぃぃっ!!」


 みんなに呆れられ友達をなくしたと思ったのか、ノルンは小さな子供のようにわんわん泣きます。


 「えっ?聖女様ってもしかして、お友達が欲しくてこの学校に……?」

 「えぇ……?いや、そんな、まさか」


 クラスメートの子達がひそひそとそんな会話をします。


 「ほら、ノルン。あなたは聖女様なんですからもう泣かないで」

 「ちがうもん……!!ぼくの名前は聖女様なんかじゃないもん……!!うわああああんっ!!」


 困りました。

 感情が爆発してしまったのか、ノルンがちっとも泣き止んでくれません。


 「……ノルン」


 シルフィアーナ姫がノルンを優しく抱きしめます。


 「ありがとう。ノルン。少し驚きはしたけれど、ノルンは私の生涯の友。親友だ。例え今までの態度が本当のノルンではなかったとしても、それは変わらない。庇ってくれてありがとう。これからもずっと、友でいてほしい」

 「ぐすっ、ぐすっ、ルフィアぁ……」

 「ノルンお姉様!!わたくしもノルンお姉様をお慕いする気持ちは変わりません!!」

 「わたしもです!!ノルンお姉様はわたしの大好きなお姉様です!!」

 「アイちゃん……。リィちゃん……。ぐすっ。こんなぼくでも、お友達でいてくれる?」


 涙目でそう尋ねるノルンに、二人は優しい笑顔で頷きました。


 「ぐす、嬉しいよお……。うわあああんっ!!」

 「ああ、ほら。もう泣くなノルン」

 「そうですわ。お姉様には笑顔が一番お似合いです」

 「そうです。笑ってください。お姉様」

 「ぐすっ……。うんっ」


 ノルンは目尻を指で拭いながら、三人にとても良い笑顔を見せるのでした。


 ーーそれから。


 「ノルンー。妹さん達が来たわよ」

 「はーい」

 「なあに。また中庭でお昼なの?」

 「そうだよ。お外で食べるごはんはおいしいよ」

 「そうなんだ。今度みんなでお弁当を用意して一緒に食べるのもいいかもね」

 「いいね。そのうちクラスみんなでお昼ごはん食べたいね」

 「ノルン。私もうおなかペコペコだ。早く行こう」

 「そうだね。ルフィアがもうお弁当待ち切れないみたいだから、ぼく行くね」

 「ええ。またあとでね」


 すっかり仲良くなったクラスメート達と教室で別れ、ノルンと姫は廊下で待っていたリィナさんとアイラさんと合流していつもの中庭に向かいます。


 あの時、素を見せて泣き出したノルンを見た全員に芽生えた感情はたったひとつ。

 この子かわいい!!

 でした。

 ノルンが同年代のお友達欲しさに学校に来ている事を知った、クラスメートの皆さんは進んでノルンのお友達になってくれました。

 精神年齢が幼いノルンは、今ではクラスのマスコットみたいな扱いです。

 余談になりますが、騒ぎを起こした第二王子は王位継承権剥奪に加え退学処分になり、アイラ嬢は修道院行きになりました。

 取り巻きの配下達は実質、ノルンに殴られただけなので現在停学中です。


 「んー♡やっぱりお姉様のお弁当はいつ頂いても最高ですわ♡」

 「今日もとっても美味しいです。流石お姉様です♡」

 「ああ。毎日こんな美味しい物を食べられる勇者殿は幸せ者だな」

 「えへへ。そんなに褒めても何も出ないよー」


 本当の自分を受け入れてくれた友人達に囲まれ、ノルンは毎日が楽しそうです。

 季節はもう11月の半ば。

 もうすぐ、冬がやってきます。

まだおわりじゃないのです

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