6.凱旋!!淑女教育受けてて良かった!!
ハッピーエンド直前。
大好きな勇者様となんだか良い雰囲気になってから約1時間後、ぼく達を乗せた飛空戦艦が、ラギアン王国へと到着した。
ラギアン王国をぐるっと取り囲む強固な外壁の外側に、人間族、エルフ族、ドワーフ族、魔族。この世界に生きる種族の叡智を込め作られた希望の船がその役目を終えて降り立つ。
ラギアン王国に住む人々が、勇者様とその仲間であるぼく達を暖かく出迎えてくれる。
みんなの歓声の中、おねーちゃんとガリアードさんが先に戦艦から降りて整列する兵士の皆が作る道の中を歩いていく。
「俺達も行こう」
「……はい!」
ライ様に手を引かれながら、彼の後を歩く。
おばーちゃんに淑女教育されてて、良かった……。
淑女たるもの、殿方の一歩後ろを歩くという、少し前までのぼくには理解できなかった淑女の嗜みのおかげで、こうしてぼくの大好きな勇者様をよりかっこよく引き立てられるんだもん。
……えっ?
ぼくの心の声と態度が違う?
ふっふーん。
おばーちゃんの厳しい淑女教育のおかげで、聖女らしい言葉遣いと態度を取るなんてお茶の子さいさいなの。
ぼくがホントは自分の事をぼくと言ってて、英雄趣味のおてんば娘だって知ってるのは、身内では幼なじみのレイリィおねーちゃんとおばーちゃんとパパ。
身内以外では、ぼくが物心付く前にママが病気で亡くなって、聖騎士になる為に家を飛び出し勘当されてたパパが、幼い僕を背負って仕事してた時から、ぼくの事を知っててかわいがってくれてる、パパの同僚や部下のおじさん騎士達と女騎士のおねーちゃん達だけ。
わりとアットホームな職場で、パパは王国一の聖騎士で住み込みだったから子連れでも許されてた。
レイリィおねーちゃんは赤ちゃんのぼくを初めて見たその日から、ホントの妹のようにかわいがってくれてるんだよ。
そんなこんなで屈強な騎士達と女騎士達に囲まれて育ったからか、非番で遊んでくれるおじさん騎士達におもちゃの剣を振り回して飛び蹴りするような、そんなおてんば娘に育ったぼく。
勘当した息子が相談もなく結婚して作った孫娘のそんな姿を見たおばーちゃんが、神殿管理の書類提出に来たお城の中庭で、好き放題暴れまわる孫娘の将来を憂いてパパを家に呼び戻し、孫娘の淑女教育を始めたのは当然のことだった……。
以来、ホントのぼくを知らない相手からは、儚げで可憐な聖女で通ってる。
ノルンは年齢の割に子供っぽい子です。
性的な知識とかも疎いです。
この世界は人間、エルフ、ドワーフ、魔族がそれぞれ折り合いを付けながら暮らしています。
異種婚も珍しくなく、ハーフやクォーターも珍しくありません。
ノルン達が戦っていたのは邪神と邪神の生み出した悪魔と呼ばれる、魔族とはまた違う種族です。
魔族は人間に近い姿形をしてますが、悪魔は人の姿をしてません。