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聖女慕われる

 「聖女ノルン・フォルシオン様はこの世に神々が遣わされた天使!!男爵令嬢如きが気安く話しかけるなど不敬の極みですのよ!!」


 背が高く、肉付きの良い赤い髪の少女が赤い瞳で、リィナさんの顔を睨みながら壁をドンッと右手で叩きました。

 いわゆる壁ドンというものですね。

 ノルンよりも少し背の高い少女に壁ドンされて、リィナさんは両手を胸元に持ってきて涙目になっています。


 「今後は聖女様に気安く」

 「私がどうかしましたか?」


 赤毛の少女の言葉を遮り、2年生の教室に入ったノルンが凛とした言葉で二人に声をかけました。


 「せ、聖女様……」

 「リィちゃんがあなたに何かしまして?」

 「い、いえ……。わたくしはただ、自分の立場を弁えるよう……」

 「あなたのお名前は?」

 「は、はい。アイラ・レイガンと申します」

 「レイガン……。レイガン子爵のご令嬢ですね」

 「は、はい。そうです」

 「アイラさん。私と彼女は友人なのです。ご忠告は感謝しますが、それ以上はもう結構です」


 ノルンがやんわりとそう告げると、アイラと言う少女は涙目になって視線を逸らしぼそっと呟きました。


 「……だって、この子だけずるいですわ」


 この反応を見るにもしかしたら、この子もノルンのファンなのかもしれませんね。


 「アイラさん。ちょっとよろしくて?」

 「は、はい……」


 ノルンがアイラさんの両肩に両手を当てて、神聖魔法を使いました。

 ポウッと暖かい光がアイラさんの両肩を包むように現れ、静かに消えていきます。


 「これで良いです。アイラさん。あなた良くない物が憑いてましたよ」

 「ええっ!?」

 「大丈夫。今、私の神聖魔法で祓いましたから。どうですか?肩が軽くなったでしょう?」

 「は、はい。なんだかすごく軽くなった気がします」

 「邪神が滅んだとはいえ、魔に属する者すべてが滅んだ訳ではありませんからね。悪い心を持っていると付け込まれて取り憑かれてしまうんです」

 「そんな!?わたくし悪い物に取り憑かれて!?」


 アイラさんは泣きそうな顔でノルンを見てきます。


 「もう大丈夫ですよ。それで、どうしてリィちゃんに食ってかかったのか話していただけますか?」

 「わ、私、ずっとずっと聖女様に憧れてて、良く知らない子が、聖女様に……。それが悔しくて……つい……。ごめんなさい……」

 「そうだったんですね。あなたのお気持ちとても嬉しいです」


 ノルンの優しい微笑みにアイラさんは顔を赤らめて視線を逸らしました。


 「アイラさんはリィちゃんの事をどこまで知っているんですか?」

 「シュベール男爵家の令嬢と言う事だけです……」

 「そうですか。ではお互いにお話をしましょう」

 「「……え?」」


 リィナさんとアイラさんの素っ頓狂な声がハモりました。


 「だって、お互いの事を良く知らないからあなた達は衝突してしまったのですよ?なら色々とお話をしてみたら良いと思うんです」

 「お話、ですか……?」

 「お二人は同じクラスですか?」

 「は、はい。そうです、お姉様」

 「それなら尚の事、お話しましょう。お互いの事を良く知ればきっと仲良くなれると思うんです。リィちゃんもアイラさんも良い子だからきっと仲良くなれると私は思うんです」

 「……わかりました。聖女様にそこまで仰っていただけるなら、リィナさんとお話してみます」

 「わ、わたしもアイラ様とお話してみます」


 素直にノルンの提案に応じた二人にノルンは優しい表情で頷くと、言いました。


 「私はこれから用事があるので立ち会えませんが、あなた達がわかりあえると信じています。では私はこれで」

 「……はい!!聖女様ありがとうございました」

 「お姉様ありがとうございました」


 ノルンは二人に優しく微笑み、二年生の教室を後にしました。


 『あの二人仲良くなれるといいね』

 『そうですね。ところでノルン。アイラさんには別に何も憑いてなかったと私は判断するのですが』


 私達限定のテレパシーで会話をしながら、ノルンと共に帰路につきます。


 『ああ、あれ?口からでまかせ言っただけだよ』

 『やっぱり……。ではあの神聖魔法は?』

 『ただの自動回復魔法リジェネヒールだよ。あの子ぼくより年下なのに胸すっごくおっきかったもん。今頃肩こりがなくなってスッキリしてるんじゃないかな』

 『聖女が嘘ついたんですか』

 『人聞きが悪いなあ。場を丸く納める為の方便だよ。世の中にはね、ついていい嘘とついちゃ駄目な嘘があるの。ぼくの嘘はついていい嘘。ついちゃ駄目な嘘は純粋な幼子にホントは男の子なんだよなんて言うようなの!!』


 ……まだ根に持ってたんですね。

 これを言うと不機嫌になりそうなので、これは言わずに話を進めます。


 『それであの二人仲良くなれると思いますか?』

 『……さあ?』


 さあってそんな無責任な……。


 『リィちゃんはかわいくていい子だし、多分大丈夫なんじゃない?』

 『もしあの二人が仲良くなれなかったらどうするんです?相性が悪くてどうしてもわかりあえないとかあるかもしれませんよ?』

 『その時はまた適当に言ってお互い関わりにならないようにさせりゃいいよ。人間なんだもん。好き嫌いはどうしようもないよね』


 それでいいんですか。聖女ノルン……。


 『大丈夫でしょうか……』

 『リライザは心配性だなあ。なるよーになるって』

 『……他人事だと思って適当ですね』

 『そんなことないよ?』


 ノルンは楽観的すぎるんです。

 本当に上手く行けばいいのですが…。


 ーー翌日のお昼休み。


 ノルンがいつものように少なめのお弁当を中庭で食べ終わった頃、リィナさんとアイラさんが手を繋いでやってきました。


 「ごきげんよう。ノルンお姉様」

 「ごきげんよう。聖女様」

 「ごきげんよう。リィちゃん、アイラさん。その様子だとお話は上手くいったようですね」

 「はい!!わたし、アイラさんの事をずっとこわい人だって誤解してました!!本当はとっても優しい人なんです!!」

 「わたくしもリィナさんの事を誤解しておりました。本当は誰よりも頑張り屋さんで、すごくかわいらしい方なんですの!!」


 どうやら、上手く行ったようです。


 「ふふ。お二人共仲良くなれたようで嬉しいです」


 ノルンがそう言って微笑むと、二人は顔を見合わせて頷き、両手を組んでノルンに懇願してきました。


 「「ノルンお姉様!!私達のお姉様になってください!!」」


 「え!?えっと……」


 突然のお願いに面食らったノルンが慌ててテレパシーで私に尋ねてきます。


 『ねえリライザ。これ、どーいう展開!?』

 『確か、この新しい学園の元になった学園に上級生が下級生と疑似姉妹の契りを交わして導くとか、そういう制度があったかと。多分それです』

 『……なんかめんどくさそう。断っちゃ駄目だよね。この流れ』

 『そうですね。ここで断ったらあなたはひどい人です』

 『……うう。これ、お友達って言えるのかなあ?』


 「……私などでよろしければ」


  ノルンがそう答えると、二人は花が咲いたような笑顔を見せました。


 「これからよろしくね。リィちゃん。アイちゃん」


 「「はい!!ノルンお姉様!!」」


 なにはともあれ、こうしてノルンは慕ってくれる下級生二人のお姉様になったのでした。


   ☆


 「そう言えばノルン。学校で友達は出来た?」


 ノルンとの夕食を終え、ノルンを膝の上に乗せたラインハルト様が何気なくそう尋ねました。


 「……妹が二人できたよ、だーりん」

 「……はい?」


 ノルンのその返答にラインハルト様はわけがわからないと、首を傾げるのでした…。

アルファポリスの方が点が付く…

これあちら向けなのかも

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