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聖女は友達を作れる気がしない

 「久しいな聖女殿。壮健そうで何よりだ」

 「……お久しぶりです。シルフィアーナ様」

 「ああ、良い良い。せっかく久しぶりに会えたのだ。堅苦しい挨拶は止めにしよう」

 「は、はい……」


 そう言って魔族の姫君は鈴を転がすように笑いました。

 長い艷やかな青みがかった黒髪にややつり目のこの美しい少女はかつて、ノルンとラインハルト様達が冒険の旅で立ち寄った魔族の国レガウス王国のお姫様です。

 この時は飛空戦艦を建造する為に必要な巨大魔石を手に入れる為、ノルン達はかなり苦労しました。


 「その制服を着ていると言う事は、聖女殿もこの学校に通うのか?」

 「はい。平和な世界で同年代の皆さんと一緒に色々と学びたいと思いまして」

 「そうか。私の場合は両親からの薦めで留学してきたのだが。聖女殿は勉強熱心なのだな」

 「いえ……。そのような大層な物では…」

 「ふふ。相変わらず謙虚だな。これから同じ学び舎で学ぶ事だしな。よろしく頼むぞ」

 「はい」

 「ではな」


 そんな会話を交わして、魔族の姫君は去って行きました。


 『……いきなり知り合いに会うなんて思わなかったよ』

 『ですがノルン。これはお友達を作るチャンスなのでは?』

 『シルフィアーナ姫と?無茶言わないでよ、リライザ』

 『彼女が苦手なんですか?』

 『いや、苦手とかそういう以前にぼく、姫の事良く知らないもん』

 『なら、これから知っていけばいいじゃないですか』

 『無理無理無理。仮にもお姫様にお友達になってくださいなんて、言えないよお……』


 テレパシーでそんな会話をしながら、ノルンは貼り出されたクラス割を確認します。


 「中等部の3ーA……」


 ノルンは自分の名前を見つけて、眉をひそめました。


 「どうかしたんですか?」

 「クラスメートになる子達の名前がみんなどこかで聞いたような……。いや、まさかね……」


 ノルンはそう呟き、教室へと向かいます。

 校舎の三階にある目的地に辿り着くと、ノルンは小さく深呼吸してから扉を開きました。

 教室の中には17人の女子生徒達がいます。

 皆、気品のある美しい女の子ばかりです。

 女子生徒達がノルンに気付いて視線をこちらに向けます。


 ーーパタン。


 ノルンは無言で教室のドアを締めました。


 『ノルン。どうしてドアを締めるんですか?中に入らないんですか?』

 『…リライザ。このクラスおかしいよ』

 『おかしいって何がです?』

 『ぜったいおかしいよ!!だってあの子達、みんな公爵令嬢とか王女様とかばっかりだもん!!高位貴族と王族しかいないクラスとかおかしいよ!!』


 左手に装着している私に向かって、ノルンは話が違うと憤慨します。


 『何もおかしい事はありませんよ。クラス分けは入学テストの成績で決めると通達があったじゃないですか。王族の姫君や高位貴族のご令嬢なら、それ相応の教育を受けているでしょうし、Aクラスでも当然かと』

 『えええええっ!?そんなの聞いてないよお!!』


 『自分に都合の悪い事や興味のない事をすぐ忘れてしまうの改めないとだめですよ。ノルン。学校内の施設案内とか行事とかそういうのばかり見て、楽しい妄想ばかりしてるから大事な事を忘れてしまうんです』

 『むーっ!!』

 『私に八つ当たりされても困ります。彼女達と仲良くなればいいじゃないですか』

 『ぼくは本音で笑い合ったり語り合える友達が欲しいのー!!』

 『そうなれるように仲良くなればいいじゃないですか』

 『そんなの無理だよおー!!こっちもあっちもずっと淑女モードであらあらうふふとかそんなのやだー!!息が詰まっちゃうー!!』


 ーーガチャ。


 「……聖女殿?どうかしたのか?」


 そんなやりとりをテレパシーでしていると、教室の中からシルフィアーナ姫が出てきてノルンに声をかけてくれました。


 「い、いえ、このクラスで合っていたのか、ちょっと不安になりまして……」

 「なるほど。聖女殿はこのクラスで合っているぞ。先程全員の名前を覚えてきたからな」

 「そ、そうでしたか。安心しました」

 「うむ。これも何かの縁だ。これからよろしく頼むぞ」

 「はい。こちらこそよろしくお願い致します」


 気さくに笑いかけてくれる姫にノルンは内心引きつりながらも、にこりと淑女らしい微笑みで返します。


 『……リライザ。ぼくもうお家に帰りたい』

 『まだ初日ですよ?いきなり登校拒否はちょっと早すぎでは?』

 『うわーん!!お友達作れる気がしないー!!入学テスト手を抜けば良かったー!!』


 こんな調子で果たして、ノルンはお友達を作る事が出来るのでしょうか……?

次回、ぼっち聖女。

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