5.みんなで勝ち取った世界
恋する乙女モード全開。
ーーライ様に抱っこされて数分後、ぼく達は浮遊城塞の入口へと辿り着いた。
「ライ!!ノルン!!早く飛び降りろ!!」
崩れ落ちる浮遊城塞から、少し離れた位置に移動した飛空戦艦の甲板から、ガリアードさんが叫ぶ。
レイリィおねーちゃんや飛空戦艦に乗ってる兵士のみんなが、心配そうな顔でこちらを見てる。
「あ……」
ライ様の腕の中で、ぼくは眼下の光景を見て、思わずおなかの辺りがきゅっとした。
飛空戦艦の甲板までの高さは15メートルくらいだけど、地表までは500メートル以上ある……。
もし間違って地表に落ちたら絶対助からないよ……。
それにぼく高所恐怖症なの……。
人間の身体能力で何とかなる高さの場所なら大丈夫なんだけど、落ちたら死んじゃう高さはどうしてもだめ……。
これだけはどうしても、冒険の旅で克服出来なかった。
ぼくが飛び降りるのをこわがっていると、ライ様はぼくに優しく言ってくれた。
「大丈夫だよ、ノルン。君には俺がついてる。こわかったら目を閉じてるといい」
こんな時でもライ様は優しい。
飛空戦艦はすごく大きいから、普通に飛び降りればまず大丈夫なのに。
ぼくはライ様にはい、と答えて両目をぎゅっと閉じた。
次の瞬間、ふわっと浮遊感を感じた数秒後、トンッと音を立てて浮遊感が消えた。
目を開き視線を周囲に配ると、優しい表情でぼくを見つめてるライ様と目があった。
お姫様抱っこしてるぼくに衝撃が来ないよう、甲板に着地してくれたんだ……。
「勇者様、ありがとうございました」
ぼくがお礼を言うとライ様はにっこりと微笑んで、ぼくを優しく甲板の上に下ろしてくれた。
甲板の上に自分の両足で立ってから、勇者様になにか言おうとすると、船首の方でレイリィおねーちゃんが興奮した口調で叫んだ。
「うわあ……!!みんな見て!!すごくきれいな光景よ!!」
ぼくが視線を向けると、レイリィおねーちゃんの隣に立っていたガリアードさんが、さり気なくおねーちゃんを抱き寄せていた。
あれ?二人共、いつの間にそんな仲になってたんだろ……?
炎のような赤い髪をして屈強な肉体を持った、まるで炎の獅子のような若き皇帝。
亜麻色の長い髪とグラマラスなボディをした、凛々しくて綺麗なお姫様。
そんな二人を見てぼくはとてもお似合いだと思ったよ。
おねーちゃん達から他に視線を向けると、手の空いてる兵士のみんなも船首の方で騒いでた。
みんなが見てるのが、いったいどんな光景なのかぼくも気にはなるけど、高い所から下を見るのがこわいから、船首に近付く気にはならない。
飛空戦艦に乗る時、ぼくいつも甲板の真ん中付近か、船内の窓がない部屋にしか行かなかった位だもん。
「俺達も行ってみよう」
ライ様が優しくそう言ってくれたけど、船首に行くのやっぱりこわい……。
ぼくが戸惑っていると、ライ様は優しく言ってくれた。
「大丈夫。俺がついてるから」
「……はい」
こわいけど、ライ様が一緒なら……。
恐る恐るライ様と一緒に船首に向かう。
「わあ……!!」
船首でライ様と一緒に見た光景は長かった夜が明け、光り輝く朝日が登り始めるとても綺麗な光景だった。
「綺麗……」
邪神の復活で暗黒の闇に包まれていたこの世界を、光り輝く朝日が照らすこの綺麗な光景に思わず、見惚れてしまう。
「そうだね……。この美しい世界を、君と俺達みんなで守り抜いたんだ」
あっ……。
ライ様はそう優しく言って、ぼくの肩を抱き寄せた。
もしかして、ライ様もぼくの事……す、好き、なのかな……?
もしかして、ぼく達、りょ、両想い?
ライ様に肩を抱かれながら、ぼくは頬を染めてそう思っちゃうのでした……。
キャラ紹介
ノルン・フォルシオン
種族 人間 (母方の曾祖父がエルフ)
年齢 邪神討伐から二日後に15歳 性別 女
職業 神官見習い>聖女
特技 防御魔法 回復魔法 家事全般
父方の祖母に厳しい淑女教育を受けて育った為、基本誰にでも一歩引いた淑女として接する
家事が得意で料理やお菓子作りが上手いが、本人は食べる方が好きで、作るのはめんどくさいから好きではない
勇者パーティーの料理担当
少食
淑女モードではボロが出ないように口数が少ない
白金色の背中まである長い髪に宝石のような蒼い瞳、透き通るような白い肌の少女
背はそんなに高くない
成長期のため、出るべき所は出ている物のそこまで大きくない
エルフの血が流れてるからか、今にも消えてしまいそうな、儚げで可憐な印象の容姿を持った超絶美少女
その可憐な容姿とは裏腹に、中身は勧善懲悪の英雄譚やかっこいい騎士や女騎士に憧れる、英雄オタクのおてんば娘でぼくっ娘
好きな事以外はめんどくさがる
あまりにも見た目がかわいいので人目を引くため、一人でいると人攫いによく攫われそうになる