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45.エピローグ sideライ

最終回になります。

 「〜♪」


 ソファーに腰かけた俺の膝の上で、ノルンが体育座りの体勢で鼻歌を歌いながら、スケッチブックにヒーローの絵を描いている。


 「それ、なんて言うヒーローなんだい?」

 「これ?勇者戦隊ブレイブレンジャー!!ぼくが前世で大好きだったヒーローなの!!」


 ノルンは俺の方に振り向き、目をキラキラさせながら教えてくれる。

 色鉛筆で赤、青、黄色、緑、桃色に塗られた5人のヒーローをノルンが誇らしげに見せてくる。


 「ノルンは絵が上手だね」

 「えへへ。それほどでもないよお」


 気を良くしたのか、新しい絵を描き始める。


 あれから俺はノルンの実家から、すぐ近くの土地に一軒家を建てた。

 2階建てで、日本の平均的な一軒家と同じ位の家だ。

 俺は今、ここに住んでいる。

 当然、家政婦とかは雇っていない。

 俺とノルンだけの憩いの我が家に、他人は必要ないからだ。

 手を伸ばせばすぐ、ノルンに触れられる。

 そんな家が欲しくて、わざわざこの家を建てたんだ。


 そして俺は今、ノルンのお父さんの元で働いている。

 一生遊んで暮らせる財産があるとはいえ、流石に勇者が無職は問題があるからだ。


 実は最近知ったのだが、ノルンのお婆さんは、すぐ近くの港町を治める公爵家の公爵夫人だった。

 ノルンのお父さんは5人姉弟の末っ子長男で、聖騎士に憧れ家を飛び出し勘当されてたのだとか。

 ミリシャル神殿は元々お婆さんの生家で、フォルシオン公爵に見初められ嫁いだあとは、お婆さんの弟さんが管理していたそうだ。

 だがお婆さんの弟さんは、12年前に腰と足を患い、神殿監理が難しくなったのだと聞いた。


 子育てを一段落させていたお婆さんは、弟さんのお孫さんが神殿を管理できる神官になるまでの間、代理としてこちらに戻ってきて、その際の書類を提出に来た王宮で、勘当した息子と孫娘のノルンを見つけたのだとか。

 現在はフォルシオン公爵が領地を納めているが、いずれはノルンのお父さんが、その跡を継がなければならないらしい。

 つまりノルンは公爵家の血を引く、由緒正しい血筋なわけだ。


 この話を聞いた時、俺は勇者になって、本当に良かったと思った。

 もし勇者にならなかったら、ノルンと結ばれる事は絶対に無理だった。

 だがノルンは血筋なんて、まったく気にする訳でもなく、毎日朝早く俺の家にやってきては、甲斐甲斐しく俺の弁当を用意し、朝食を作ってくれる。

 俺が帰ってくると、温かい夕飯を用意して待っていてくれる。

 あまりの愛おしさに何度、押し倒しそうになった事か……。


 流石にまだ婚姻前だから全力で理性を保ち、夕飯を一緒に取ってしばらく一緒に過ごしたら、ノルンを神殿まで送っていく毎日だ。

 そんな訳で、今のノルンは俺の通い妻状態だったりする。

 俺がいない昼間は、お婆さんに花嫁修業をさせられてると言って、この前はノルンが刺繍を施したハンカチをもらった。

 早くノルンと結婚したい。


 「ノルン、そんなにそのヒーローが好きだったの?」


 巨大ロボの絵を描いてるノルンにそう尋ねると、ノルンは俺に笑顔で答える。


 「うん!!大好きだったよ!!特にレッドが1番好き!!今思い出すと、だーりんに似てたかも。お芝居だって今ならわかるんだけど、なんて言うか、雰囲気とか、そういうのがね。あ、でもでも、前世のちっちゃい頃の話だからね!!今1番大好きなのはだーりんだから!!」


 俺はそんな彼女に笑いながら、もっと彼女の笑顔が見たくて、今まで誰にもした事のなかった、昔話をする事にした。


 「ノルン。これはちょっとした昔話なんだけどさ。ある所に一人の青年がいたんだ」


 「え?う、うん」


 「その青年は子供の頃から色んな舞台やお芝居に出てたんだけど、あまり売れてなかったんだ。そんなある日、青年はある1つの役を手に入れたんだ」


 俺は膝の上のノルンをそっと、両手で抱きしめ昔話を続ける。


 「青年が手にした役は赤、青、黄色、緑、桃色の5人の戦士達の物語の主役でね、赤い勇者の役だったんだ」

 「なんか、ブレイブレンジャーみたい……」


 「剣と魔法で戦う世界観のお話で、赤い勇者の役を手にした青年はとてもがんばった。そのおかげでその物語は子供達に大人気の作品になったんだ。そして、最終回を終えた後、あまりの人気にちょっとした続編が夏休みに向けて、作られる事になったんだ」

 「そうなんだ。すごいねえ」


 「うん。それで本当に最後の物語と言う事もあって、その話では赤い勇者は普段、戦闘時に必ず被る兜がない状態で、一人だけで最後の敵との戦いを終えた後、最後に仲間達の結婚式を見届け、バイクに乗って去って行くんだ。青年は最後の変身と最後の戦い、そして新たな旅立ちのシーンを演じきって、そのまま関係者達の所へ戻ろうとバイクで走っていたその時、不思議な声を聞いたんだ」


 俺はノルンの目を見つめながら、この昔話の顛末を語る。


 「あなたの運命の少女を助けてって。そして、気がついたら知らない世界で、揺りかごの中で揺られている赤ちゃんに生まれ変わっていた。そしてその赤ちゃんは半魔族の祖母に育てられ、15歳の誕生日の翌日にお嫁さん探しの旅に出されたんだ。そして、旅に出たその先で運命の女の子と出会い、伝説の神剣を手に入れて勇者として、聖女に選ばれた運命の女の子と旅に出た。そのあとは……。わかるよね……?」


 俺はそう言って、昔話を終える。


 「それって、もしかして、だーりんの!!」


 すると俺の膝に座る愛しい少女は、目をキラキラさせながら俺を見つめる。

 俺が頷くと、俺の愛しい彼女が前世で見られなかった、物語の内容を俺に質問してくる。


 俺はそんな彼女が満足するまで、彼女の質問に答えていく。


 ノルンの輝くようなその笑顔に俺は微笑み、このかわいらしい恋人をこれからも笑顔にしたいと、そう思うのだった……。


 ーーノルン。


 誰よりも君の事を愛しているよ。


 おしまい

ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

普段マギレコ等の二次創作しかしてこなかったので、初めての完全オリジナルそこそこ長編が無事に終わって、ほっとしています。


初期構想ではノルンは女性作家が書くような、もっと普通の女の子でした。

しかし、書いてく内にどんどんおかしな方向へ突き進んで行ってしまい、こんな子になっちゃいました。


普通にかわいい女の子が前世を思い出して男言葉になったり、仕草が変化して戸惑ったりとか、そういうのを期待された方は大変申し訳ありませんでした。


書いてる内にノルンと言う子に愛着が湧いてしまい、あのようなオチになってしまいました。


もしもノルン達のおはなしを気に入っていただけたのなら、ポイントや感想等いただけますと、とても嬉しいです。

作者は単純なので大喜びします。


ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱTS娘はもじもじしてからしゅきしゅきモードに入らないとね! 素晴らしい話でした!
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