42.こんなにも愛されてたんだね
「ガリアードさん、おねーちゃん、苦しいよお……」
ノルンが二人にそう訴えると、ようやく二人はノルンを解放する。
「二人ともいったい、どうしちゃったの?」
ノルンが困惑していると、ガリアードとレイリィは泣き笑いの表情で、ノルンに言った。
「……パパだよ、のぞみ」
「私、ママよ。のぞみ」
「……えっ?」
困惑するノルン。
「のぞみはパパが作るシチューが大好物だったよな……。いつもおいしいって食べてくれたな……」
「それに勇者戦隊ブレイブレンジャーが大好きだったわよね……。おもちゃも着せ替え人形とかぬいぐるみとかじゃなくて、ブレイブレンジャーの物ばかり欲しがって……」
ガリアードとレイリィのその言葉を聞いて、ノルンが信じられないと言う表情で問い返す。
「のぞみのパパとママ、なの……?本当……に?」
二人はノルンの問いに確かに大きく頷く。
「……パパぁ!!ママぁ!!」
ノルンが二人に抱きついて泣き出す。
二人共ノルンを優しく抱きしめ、その背中と頭を優しく撫でる。
「ぼく、ぼく、もう二度と会えないって……!!うわあああああんっ!!」
「今までずっと気付けなくてごめんな!!あの時、守ってやれなくてごめんな……!!」
「ずっと、ずっと会いたかった!!まさかこんなすぐそばにいたなんて!!」
不幸な別れで引き裂かれた、前世の親子の感動の対面だった。
「良かったね、ノルン」
ただ、少し離れた場所から、俺達の様子を黙って見ていたノルンの祖母と、我に返ったノルンの父親の二人は訳がわからないといった様子だったが。
あとでちゃんと説明しないといけないな……。
「ぐす、でも、どうしてパパとママが、ガリアードさんとレイリィおねーちゃんになってたの?」
「その事なんだけどな、のぞみ」
「パパとママはね、この世界の神様にこの世界に転生させてもらったの」
「どういうこと?」
「あの飛行機事故の後、気がついたらパパとママ、それと同じ飛行機に乗っていたのぞみ以外の他の乗客全員、不思議な空間に立ってたんだ」
「そこで神様に会ったの。もしも私達が望むなら、私達の命を、私達の宝物の命を奪った邪神と戦う力を与えて、転生させてくれるって。他の乗客も戦う事を選んだ人達は、私達のように力を与えられて転生したのよ。私達の旅で手助けして戦ってくれた人達がいたでしょ。あの人達がそうなの」
「そう、だったの……」
ノルンの言葉に二人は頷いてから話を続ける。
「……転生したら、のぞみとパパ達にもう血の繋がりはなくなってしまう。けれどパパ達はいつか、この世界に転生してくるのぞみが今度こそ、幸せに生きられる世界が欲しかった」
「今度こそ守り抜いて、あなたが大人になれる世界にしたかった。だから私達は転生して戦う事を選んだの」
「たとえ、もう二度と会えないとしても。それでも、大切な子供の為に戦う」
「それが私達が親として出来る最後の務めだったから」
二人はノルンの目を見つめながら、そう、ノルンに答えた。
「ぐす……。ありがとう……。ぼく、パパとママの子供に生まれて幸せだったよぅ…」
ノルンは涙を流して二人にそう告げる。
三人は奇跡の再会を果たし、いつまでも抱き合いながら涙を流すのだった。
良かったね、ノルン。
君はこんなにも愛されていたんだね…。
「ぐす、ごめんね、パパ、ママ」
「何を謝る事があるんだい、のぞみ」
「そうよ。何も謝る事なんてないわ」
「ううん。言わせて。ごめんね、パパ、ママ。のぞみだった時は男の子だったのに……。ぼく、今世は女の子になっちゃって……」
ノルンのその言葉にガリアードとレイリィは、お互いの顔を見て困ったような顔をする。
まあ、なんて言えばいいのか困惑もするよな。
最初が光の聖女ノエルで、何度目かの転生先が異世界の男の子木ノ原のぞみで、今がノルンだもんな。
「あのう……。お取り込み中、申し訳ありませんが……。主様は前世でも性別は女の子ですよ」
リライザの放ったその一言で、元・木ノ原一家三人が硬直した……。




