35.君の事が好きだ
「勇、者、様……?」
ライ様に抱きしめられて、ぼくは混乱しながら、彼を呼ぶ。
「ノルン。修道院になんて行かないでくれ。俺は……俺は……!!君の事が好きだ!!」
ライ様はぼくを抱きしめたまま、ぼくの耳元でそう叫んだ。
「……え?」
今、なんて言ったの…?
ぼくが呆然としてると、ライ様は言葉を続ける。
「君に側にいてほしいんだ!!いつだって側で笑っていてほしいんだ!!君の泣き顔は見たくない!!俺は初めて会ったその日から、ずっと君の事が好きだから!!」
嬉しい……。
すっごく嬉しいよお……!!
大好きなライ様に好きって言ってもらえた……!!
初めてライ様への恋心を自覚した日から、ずっとずっと、欲しかった言葉……。
でも……。ぼくは……。
「ごめ、んなさい……」
ぼくはライ様にそう答えて謝る。
ぼくはライ様にふさわしい女の子じゃないから。
だから、ぼくはライ様の胸を両手で押して離れようとする。
「ノルン。俺の事がそんなに嫌い?」
ライ様はそう言って、ぼくを離してくれない。
「それ……は……」
そんなわけない。
出会ってからずっと優しくされて、守られて。
今だって、絶体絶命の大ピンチに駆けつけてくれた。
ぼくがちゃんと普通の女の子だったら、めでたしめでたしで済むけど、ぼくはライ様にふさわしくないの……。
「……っ。ぐす……っ……」
涙が溢れ出して止まらない……。
「だって、私、ずっと、勇者様に……嘘をついてて……ぐす、ごめん、なさ、い……。本当の……ぼくは、聖女なんて、呼ばれるような、女の子じゃ、ない……。おてんばで……子供っぽくて……」
ライ様が好きなのはきっと、お淑やかな聖女だもん……。
「……知ってるよ。だって俺はずっと君の事を見てきたんだ。本当の君が自分の事をぼくと呼んでるのも、英雄が大好きなのも、全部知ってる。だから俺は、君に俺の事を好きになってもらいたくて、君だけの勇者になろうと今まで努力してきたんだ」
……うそ。
「だから、そんな事を気にしなくていいんだよ。これからは本当のノルンを見せてほしい」
ライ様はぼくの目を見て、優しく微笑みそう言ってくれた。
でも……。
「うぅ……。ぐすっ、うれしいよお……。でも、だめなんだもん……。ぼく、ライ様にふさわしくないもん……!!」
「どうして?」
「だって、だって……!!ぼく、前世が男の子だったんだもん!!この前頭を打った時に思い出しちゃったんだもん!!前世が男の子のぼくなんて、気持ち悪いよね!!ぼくはやだ!!すっごくやだ!!うわああああああああんっ!!」
なんで前世が男の子なの!?
すっごくいやだ!!
ぼく女の子がいい!!
前世が女の子だったら、こんなに悩まなかったのに!!
ライ様の気持ちに素直に応えられたのに!!
やだやだやだやだやだあ!!
ライ様にずっと隠してた事を暴露し、ぼくは耐えられなくなって号泣した。
嫌われた!!
せっかく好きって言ってくれたライ様に嫌われちゃった!!
「……ばかだな」
「ぐす、どうせぼくはばかだもん……!!」
「違うよ。ノルン。そんな事で悩む必要なんてないんだ」
ライ様は泣きじゃくるぼくを優しく抱きしめる。
「前世の事なんて、どうでもいい。俺は今のノルンが好きなんだ。過去なんてどうでもいい」
「ぐす、ぐすっ……!!だって……!!」
「ノルン。大切なのは今だよ。過ぎ去った過去はどうしようもないんだ。だったら、未来だけを見て生きていくしかない。俺は今の君と共に未来へ歩んでいきたい。君にずっと側にいてほしいんだ」
「ぐす、未来へ……?」
「ああ。俺はこの神剣に誓う。この俺、ラインハルト・レオスは未来永劫、ノルン・フォルシオンを愛する事を誓う。ノルン。君の事を愛してる」
「……ぼくも。ぼくもライ様の事がだいすき!!愛してる!!」
ぼくはライ様に抱きついて、ずっと言えなかった本当の気持ちを叫んだ。
「ありがとう。ノルン。絶対に君を幸せにするよ」
「ぐす、うわああああああんっ!!」
涙が止まらないよお…!!
泣きじゃくるぼくをライ様は優しく抱きしめてくれる。
ぼく、ライ様を好きになってよかった……。
キャラ紹介
レイリィ・セレスティア・ラギアン
種族 人間
年齢 19才 性別 女
攻撃魔法を操る姫騎士
くっ殺せという言葉が良く似合う美女だが、無茶苦茶強いので実行はほぼ不可能(笑)
戦いの神から授かったレイピアは彼女の攻撃魔法の威力を最高位にまで跳ね上げる
ファイナルファンタジーのジョブで例えると赤魔道士に近い戦闘スタイルで、攻撃魔法は中級までしか使えないが、神器の力でその弱点を克服した
4歳になる歳の離れた弟がいるので、ガリアードの元に嫁ぐ事が決まった
ガリアード・ガリアス17世
種族 人間
年齢 22才 性別 男
ガリアス帝国の若き皇帝
戦いの神より授かった戦斧を振るう
レイリィのレイピアとガリアードの戦斧は神剣と女神の杖に続く新しい神器である
剣技に加え、槍術や弓の腕も達人レベル
3つ下の政治に長けた弟がいて、ガリアード不在時は弟が皇帝代理として帝国を守っている
兄弟仲がよく、弟は兄を敬愛している
ガリアス帝国の皇帝は代々戦いの時は必ず前線に赴き兵達を鼓舞してきた為、ガリアードも幼少期より戦闘訓練を受けてきた




