表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/94

28.どうして……?

回想編おわり。

 「こうして、俺とノルンは勇者と聖女になったんだ」


 俺がノルンとの運命の出会いを語り終えると、ガリアードはどこか困惑した表情で俺に言った。


 「俺の知ってる一般的な聖女の姿と違いすぎる……。伝承やらおとぎ話に出てくる聖女はもっと、こう……」

 「ノルンは優秀な聖女だからな。作り物の聖女なんかと比べて欲しくない」


 俺が奴の言葉を遮ってそう言うと、ガリアードは口元を引きつらせながら、お、おう、と曖昧な返事を俺に返した。


 「でもライの言うとうり、あの子の聖女としての能力は本物よ?ガリアもそれは認めてるでしょ?」


 レイリィのその言葉にガリアードは素直に頷く。


 「……そうだったな。確かにノルンにはかなり助けられた」


 ノルンが聖女として覚醒し、勇者と聖女が揃った事で、すぐにまた悪魔達がどこからともなく現れ、襲いかかってきた事を思い出す。


 ノルンが聖女になった翌日、最初に倒した悪魔とほぼ同格の悪魔が十数匹、ラギアン王国の街中に突如飛来して、無差別に破壊を始めたのだ。

 丁度王宮へ向かう途中だった俺達はすぐに対処に当たった。


 悪魔との初陣で、ノルンは逃げ惑う人々を得意の防御陣プロテクションを使いこなし、誰一人死なせる事なく守り抜いた。

 そして悪魔達を俺がすべて斬り捨てると、ボロボロに傷付いた兵士が悪魔達を倒した俺達の元へ駆け寄ってきた。


 兵士は悪魔達に襲われているガリアス帝国から、ラギアン王国に救援要請に来た帝国兵だった。

 すぐに俺達は王様へ報告し、レイリィを含めた何人かの手練の騎士達と共に、王家の所有する飛空船に乗り、隣国であるガリアス帝国に悪魔討伐に向かったのだった。


 ーーそこで俺達は皇帝であるガリアードと出会い、ラギアン王国とガリアス帝国の支援を受けながら、悪魔達をすべて倒し平和を取り戻す為、世界中を旅する事になる。


 「ノルンのおかげで、傷付いた民も兵達も皆、命が助かったしな。ノルンには感謝してるさ」


 ガリアードのその言葉にノルンが徹夜で、傷付いた人々を回復魔法で助けて回ったのを思い出す。

 誰に頼まれたわけでも、命令されたわけでもない。

 悪魔に襲われ傷付いた人々をノルンは、自分から率先して癒やして回ったんだ。

 両親が死にかけて泣いてる子供に優しく語りかけながら、懸命に治療を施し救おうとするその姿は、誰が何と言おうと本物の聖女だった。


 ノルンは誰かが困っていると必ず手を差し伸べる、心の優しい子なんだ。

 そこに打算も何もない。

 手を伸ばす事で誰かを救えるのなら、ノルンは必ずその小さな手を差し出してきた。

 彼女は人々に手を差し伸べ、皆を笑顔にしてくれる。

 そんな彼女だからこそ、俺は……。


 明日になったら、ノルンに会いに行こう。

 一刻も早く、俺のこの想いを彼女に伝えたい。

 そう心に決めた俺に、一人の男が大声で叫んだ。


 「見つけたぞ勇者ああああっ!!貴様うちの娘に何をしたあああっ!!」


 俺が振り返ると、ノルンの父親が剣を俺に向けて突撃してきた。

 俺が振り下ろされた剣を真剣白刃取りで受け止め、興奮した様子のノルンの父親に尋ねる。


 「ノルンのお父さん!!いきなり何をするんですか!?」

 「貴様にお父さん呼ばわりされる覚えはないわ!!うちの娘を泣かせるとはどういう了見だ!!かわいそうに散々泣きはらして、修道院に行くなんて言い出したんだぞ!!」

 「……えっ!?」


 今、なんて言った?ノルンが修道院に……?


 「フォルシオン卿、落ち着きなさい!!民を守るべき王国の聖騎士が無関係の人々が大勢いる場所で、丸腰の相手に剣を向けるとは何事ですか!!この国の姫として命じます!!今すぐ剣を収めなさい!!」


 レイリィが凛とした態度でそう告げると、ノルンの父親は渋々とレイリィに従う。

 ノルンの父親に殺意の籠もった視線を向けられながら、俺は呆然と呟いた。


 「ノルンが修道院に……行くだって……?なんで、そんな事に……?」


 それはノルンが俺の前からいなくなり、その身を一生、神に捧げて生きていくと言う事だ……。


 「ノルン……。どうして……?」


 俺は愛しい彼女の悲しそうな顔を思い浮かべ、その場に立ち尽くすのだった……。

次回からまたノルン視点に戻ります。


キャラクター紹介

ラインハルト・レオス

種族 人間 (母方の祖母が半魔族。曾祖父が純魔族)

年齢 18歳 性別 男

職業 冒険者>勇者


幼い頃に両親を流行り病で亡くし、祖母に育てられる。

曾祖父が魔族の中でも高名な剣士で、その娘である祖母もかなりの使い手だった。

強く生きていけるよう、祖母に剣技を仕込まれ15歳の誕生日の翌日に嫁探しの旅に出される。

金髪と翠色の目を持つ長身の青年。

天才的な戦闘センスを持ち、戦っている最中でもどんどん成長していく戦いの申し子。

どんな劣勢に陥っても、活路を切り拓いて勝利してきた。


初めて出会ったノルンに一目惚れして以降、素のノルンを見てますます好意を募らせていく。

旅に出てからの一年間、ノルンの理想のヒーローとなるべく、絶えず努力し続け遂に半年前、遅い思春期を迎えたノルンに異性として見てもらえるようになった。


尚劇中でのノルンのライへの好感度を±100で表すと以下の通り。

出会った時 好感度0

知り合い状態 好感度+5

神剣を手に入れた直後 好感度+10

ノルンが聖女覚醒後 好感度-20

ノルン憧れの神剣を手にした事でノルンに嫉妬され一時的にマイナス状態に(笑)

塩対応で勇者様呼びされ続けた冒険初期を乗り越え、現在はノルンの好感度MAX。

苔の一念岩をも通す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ